第9話 女医さんと、君の過去


※サッカーの試合中のテレビの音声


あ、サッカーやってるよー!


どっちが勝つかな!!




あ!! そこ!! いけっゴール!!


ゴ――ル!!


やったあ、これで逆転じゃん


あの選手さすがだよね



いつもココ!ってところでちゃんとキメてくれるもんね



……(微笑)これ見てたら高校の時思い出しちゃう



君がいたチームが県大会出場がかかった試合に出た時、

いつも熱心に練習してた君の姿見てたから、君も出るのかなーと思って

こっそり見に行った事があるんだ。


そしたら君はベンチ温めてて。


けど、誰よりも大きな声出して必死に応援したり、

マネージャーさんと一緒に、チームの子達にドリンク配ったりしてて


結局チームは負けちゃって、

君まで顔真っ赤にして泣いててさ


試合には出てなくても一生懸命君もチームのみんなと

戦ってたんだなーって思って


そーゆーところもやっぱりいいなー、好きだなーって思って見てた



え? あの時は私がチームキャプテンの応援に来てると思ってた?


違う違う。



ああ、でもそんな噂もされたりしてたね。

懐かしいな。



そうそう、その後キャプテンに告白されたりしたんだけどね、


私はその時、告白してくれるのが君だったらよかったのにって


密かに思ってたんだよ(笑)



まあ、実際は君の方がその後マネージャーさんに告白されて付き合い始めるんだけどね


その後は、こないだ言った通り


悲しかったなー



あ!! 悲しかったと言えば!!


病院の診察室で君に会う前に、一回君と会ってるんだ。



二年前くらいかな、ショッピングセンターに行ったら

小さな子どもを連れてる君を見かけてね


手をつないでたし、君の子どもなのかなーって思って、

やっぱり結婚しちゃってたんだなーなんて残念に思いながら見てたら、

どうやら全然知らない迷子の子だったみたいで。


お店の中で迷子になってた子をインフォメーションまで連れて行ってあげてたんだよね

それで、その子のお母さんが現れるまで、泣いてるその子に話しかけて

和ませてあげながら一緒に待ってた。


あれ、君だよね?


あの時は君だっていう確証もなくて、似てるなーって思いながら見てるしか出来なかったんだけど、家に帰ってからダメ元でもいいから声かければよかったって後悔したんだ。


だから、高校の時と卒業してからで二回、君にアプローチしなかったことを後悔してるからね、三回目の、君が診察に来てくれた時にはもう、絶対話しかけなきゃって思って


そんなわけだったんだけど……ちょっと、必死過ぎたかな


昨日なんて、一緒にお酒飲んだら距離が縮まるかなーなんて思ったんだけど

醜態さらしちゃっただけだし……


罪滅ぼしも兼ねて、何かしたいな


あ、そうだ! 私がいっぱい甘えちゃった分、

今度は君に甘えてもらう……とか、どうかな

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