第2話「散歩」

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“”内は裏人格(もう片割れ)の思考です


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実はBrite/Reliteは「情報屋」である。

その業務内容故に暇になることの多い職業で

時には1、2月間仕事がないなんてこともある。

その時は、家でゲーム(この時代はゲームも進化していて、

五感で体験できるゲームだってある。)をしたり、

外をぶらぶら歩いたりすることが大抵だ。

今回そんな職業のBrite/Reliteの休日のお話。

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「ふんふふんふふ〜」


少し楽しげに街を歩く。鼻歌を歌いながらぬ賑やかな街の中を歩くその足取りは軽い。

最近は仕事が入ってきておらず、面倒な事務仕事も粗方終わっているので、

行ってしまえばやることがないのである。だから


「これどう?」


“この’LOVE’って文字さえなければよかったのに…”


などとショッピングモールや商店街でウィンドウショッピングをしていた。

実際に買うものではないが、見ているだけでも楽しいものなのである。

(大抵のものがネットで買えるこの時代にこんな言葉は使うべきでは

ないのかもしれない)


ひとしきりウィンドウショッピングを楽しんだ後、

Briteはストリート街に足を向けた。

ここは中央周辺の商業区とは違う生活感溢れた

活気を感じる。なんだかんだ言って、

BriteもReliteもこのストリート街の方が

少し砕けた空感気が肌に合うのである。

そんなストリート街の一角をふらふらと歩いている時、

が一瞬視界の隅に映った。

少し怪しいと思いつつも気付いてない風を装って歩を進める。


(あれ誰だろ)


“ロクな奴じゃないことは確かね”


十中八九自分達を殺すタイミングを虎視眈々と狙っているのだろう、

気を抜かないように気を張って歩き続ける。

時々気づかれないようにみてみるが黒い影は2つ見えた。

時々こちらをを覗きながら付いてきているようだ。


(じゃあこっちから呼んでみようか?)


“それもいいわね“


今まで通っていた人通りのある道から外れ、少しストリート街から離れた裏路地へ向かう。

強襲するのにはうってつけな行き止まりに足を踏み入れ、足を止める。

頭を掻いて道に迷った“ふり”をして、あれここはどこと頭を掻く。

少し携帯端末を取り出し地図を見ようとすると、

予想通り近くにいた2つの気配が動き出した。

周りは少し暗く、影を捉えることができないが、

隠そうともしない殺気から察するに、

一人は正面から少し音を立てながら、もう一人は左後方から音を消して接近してくるようだ。

一人目に注意を惹きつけておいて、もう一人がその後ろから

喉を掻っ切る典型的な暗殺の手法だろう。


(やっぱり来たね)


“まあさっさと捌きなさい”


何故自分たちが狙われているという話だが、

この現代、世界では「情報」が非常に重要となっている。

権力者のスキャンダル、国家間の秘密取引、はたまた

色々な物の市場価格の変動など…

「情報」の持つ影響力は計り知れない。

それ故にそれを提供する「情報屋」の需要が上がり、

対応して報酬も高くなる。しかし、同じく情報の秘匿の必要性も上昇し、

数十年前とは比べ物にならないほど警備やサイバーセキュリティも

強化されている。また情報漏洩罪という罪も履行され、

数年間の懲役又は相当額の罰金という実刑をともなうものとなった。

故に情報屋というのは、極めてリスクの高い職業であり、生半可な経験や技術では

足がつくため、知らぬ間に良くて逮捕、大抵は捕獲され尋問、拷問で

姉妹には殺されてしまう、又は一生太陽を見ることはなくなる。

「情報屋」というのはそれほど危険な商業であり、

「情報屋」として生き抜いてきたBrite/Reliteやその他ベテラン情報屋は

それだけでもかなりの手練であるということを示している。


“私達が「情報屋」だってことはしっかり秘匿してるはずなんだけど”


(分からないね。ただしこちらの命を狙っていることには変わりはないね)


“動きが少し早いわ。注意して”


(分かったよ)


とりあえず状況を把握する。前と左後方からそれぞれ接近。

どちらも黒く長いローブにフードを深く被っているように見える。

得物はAE(アフェリク-エレクトロニクス)製の長剣と拳銃だろう。

長剣を持つ方に向かって前に小さく一歩、続いて跳ねるように二歩目、そして大きく3歩目、飛び出した。

まさか飛び込んで距離を詰めてくるとは思わなかったのか、

動揺で少し体幹が崩れ、少しの隙ができる。

その隙を見逃さずRe:Liteリライトを連射すると見せかけ注意を前に向けさせながら大きく上に飛ぶ。

そのまま頭上を通り越す。月の光に照らされて見えたその顔にはありありと同様の色が浮かんでいた。

その額に狂いなく照準を合わせ、そのまま放たれた一発の鎮圧用の弾丸は、

寸分なくその額に吸い込まれ、その意識を刈り取った。


(まずは一人)


“これだと貴方だけ格好よく終わってしまうわね?”


Reliteから言外の圧を感じた。要するに自分も表に出たいということだろう。それを察して、


(しょうがないなぁ、変わるよ)


その時、二人のと言葉が重なる。



——“(Change)”——



目の色が深緑から流血のようなワインレッドに、

鈍い銀髪はゆっくりと伸び、髪がまるで自我を持つように動き、その外見を変える。


「行くわよ、無駄な抵抗はしないことね」


空中で人格交代を果たしたReliteは月の光を背に空を跳ぶ。

いそのまま一回転し着地。そのまま


「月夜葉隠、血哥けっか


その言葉を口にした瞬間、赤く、暗く、そして美しい曲線が、夜を駆けた。


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「私の出番少なくなかった?」


人気のない道で一人少女は呟く。


“いやしょうがないよ「血哥けっか」は一撃必殺系の技巧だからね”


「だからそれも考えて出番配分を考えてって言ってるの!」


どうやらたった一撃で終わってしまったことが気に食わないようだ。


“はいは—いわかりました次から気をつけまーす”


「もぉーッ!」


まるで反省していない返答に少女の悲痛な叫びが夜空に響く。しかし何も変わることはないのだ。

少し歩いた少女は急に足を止め、少し遠く、建物の影を一瞥した。

しかし人気のない地域に人のいるはずもなく、その視線の先には何も無い。

また視線を戻し、また歩みを進たのだった。


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その頃、近くの道には男がただ一人歩いていた。

その目には子供がおもちゃを見つけたような爛々とした光が宿っている。

これから起ころうとすることをと楽しみにするような。


「_______」


男は足を止め、何かを呟く。しかし何か思い出したのか、歩を進め出した。

月の光は、まだ人気のない建物たちを不気味に照らしていた。


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「Re:Lite」

“Brite”特製武器vol.0

名前の由来はかた法の人格のRelite。

Briteが最初に作った武器。

Relite本人からは名前を変更しろと迫られている

改良しつつも使っている愛銃。

威力、弾速などの調整が可能であるが、

全てマニュアルであるため、使用できるのは実質Briteのみとなっている。



ストリート街


中心区にある商業区とは違う、少し大きい区画。

1日に1回は犯罪が起きると言われるほど治安が悪いが、

それもまた、ストリート街をストリート街たらしめている一因なのではないのだろうか

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