第38話 凱旋門賞

 年を超えてアイノクラウディアは本格化し、大阪杯、天皇賞を制覇した。大阪杯では嵯峨のダンスパフォーマーを下し、天皇賞春ではホウオウショウマを抑えて勝った。




 シークレットエデンは無事、ヴィクトリアマイルを迎え、マイケル・ベルモント騎乗のロンリィバタフライ、エリザベス女王杯二着の滝川のタケナカフブキ、京都金杯と東京新聞杯を勝った嵯峨のフォーリナー、京都牝馬Sを勝った岸信親のファインダンス、エリザベス女王杯5着、阪神牝馬ステークス勝ちのベルストーリーが名を連ねた。




 注視すべき馬はロンリィバタフライだろう。この馬と去年のエリザベス女王杯を戦っていたとして、勝った可能性は半々だろうが、若干長距離血統のシークレットエデンよりここではロンリィバタフライに軍配が上がる。




 結果、一着ロンリィバタフライ、二着フォーリナー、三着シークレットエデン、四着ベルストーリー、五着ファインダンスで決着した。




 宝塚記念も制覇したアイノクラウディアは、春古馬三冠を制して凱旋門賞へのプランが持ち上がる。日本馬では他に嵯峨のダンスパフォーマーが意欲を見せているが、アイノクラウディアが海外に行くならダンスパフォーマーは秋古馬三冠を狙うだろう。


 アイノクラウディアは関係者の話し合いで正式に凱旋門賞挑戦が決まり、鞍上も俺で行くことになった。


 凱旋門賞当日。イギリスダービー馬サンレイ、アイルランドダービー馬ギャッラルホルン、フランスダービー馬ラピュセル、ドイツダービー馬ナスホルンが名を連ね、アイノクラウディアを包囲する。


 レースは終始ナスホルンが逃げ、次にラピュセル、アイノクラウディアの外にギャッラルホルン、その後ろにサンレイがつけてアイノクラウディアを封じる。俺は我慢の競馬に徹して、最終コーナーで鞭を入れた。だがやはり馬場が重いし斤量鳴きしている。クラウディアはいつものパワーを発揮できずに三着を確保するのがやっとだった。


「さすがに凱旋門はきついか……」


 レース後、小河原調教師が俺にこぼす。


「馬場が重すぎましたね。パワー負けです」


「だがまあ掲示板圏内だ。よくやった」


 準備期間も十分でなかったことも影響したのだろう。アイノクラウディアの次走は有馬記念になった。

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