第25話 両手に花束を

 その翌日、厩舎関係者とゴローちゃん、ヨシノリを交えて祝勝会を開いた。その席には成克さんとなぜかひかりさん、ついでに神野優佳も来ていた。


 そこまではわかる。更に加えて原雪乃も来ていた。


「雪乃、お前関西住みだろ? なんでいるんだ?」


「美浦にマンション買ったから」


「ほーん」


 マンションってそんなポテチ買ったから、みたいな軽いノリで買うもんじゃないだろ。


「原のばあちゃんが何と言ってるか知らんけど、俺はそんなつもりはないからな」


「そう? でもいいの」


「アキト君、その娘、だれ?」


 興味を持たなくてもいいのに優佳は紹介されたがっている。


「いや、俺の従姉。名前は原雪乃。年は?」


「20歳」


「だそうな。この女は神野さんの娘で神野優佳。なんか芸能人らしい」


「なんか、って何?」


 こわいこわいよ優佳たん。


「興味ない。でもよろしく」


「矛盾しちゃってるから雪乃!」


「変な女……」


「そう思うだろ? 俺もそう思う。かなりの地雷原だと」


 俺は両者の板挟みに合い、オレンジジュースを煽った。早く酒が飲みたい。


「両手に花だねアキト君」


 成克さんが俺を茶化す。


「もてるのね、ひょっとして女たらし? 知り合いに一人いるのよね」


 ひかりさんまで俺を茶化す。


「違う違う、マジで違いますよ?」


「まあ女性関係でトラブルにならないでよね。乗せ辛くなるわ。有馬にはジュダースクライに乗ってくれるんでしょ?」


「いいんですか? ジャパンカップは――」


「事故は事故。いいに決まってるじゃないの」


「女神だ……」


「結果は出してよね」


「まあなんとか掲示板には」


 俺がそう言うと成克さんは言った。


「馬主によっても違うけど、勝ち負けの話を実力通りの評価で言うか、それとも大風呂敷を広げるかは相手を選ぶんだよ? 僕らには正直な力関係で言っていい。キングオブキングスは多分サンダーマウンテンの最高傑作だからね」


「わかりましたと言うか、大風呂敷を広げられるほど乗れないですから、俺」


 俺はそう言って、有馬にもチャンスがあることを喜んでひかりさんに感謝した。

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