第26話 ジュダースクライ ラストラン
有馬記念当日。出走メンバーは岸のキングオブキングス、神野の乗る今年の菊花賞馬、レイジングブラスト、岡田のトウエイライトニン、ヨシノリのアルゼンチン杯馬フィーバーワン、嵯峨のウインブライアント、滝川のJC3着馬エターナルレイブ、三島のキューティレイン、俵のエレガンスクイーン。
キングオブキングスは単勝1.1倍の支持率。次いで初対戦となる神野のレイジングブラスト、滝川のエターナルレイブ。ジュダースクライは14番人気。
ジュダースクライとキングオブキングスはこれが引退レースだ。俺は人気を背負っていない分、気軽だったしジュダースクライの調子は上々だった。
「先生、作戦は?」
「最後だし、掲示板には入れたい。前目で競馬できるか?」
「どうでしょうね。内目の枠だし、先行しますか?」
「ゲートの出しだいだな。前に出られるなら前で。キングオブキングスより前で競馬しろ」
「結局そこが問題ですね」
「滝川のエターナルレイブの脚色も見て競馬しろ」
「はい」
今回は内枠を引いたことで、先行策を取ることになった。
馬場入場から輪乗りへ。俺はジュダースクライの一挙種一動を注意しながら観察し、滝川のエターナルレイブの馬体と挙動をチェックした。俺はジャパンカップの記憶がないからだ。菊花賞2着馬で、スタミナはありそうだから先行してくるかもしれない。
スターターがスタート台に上り、ファンファーレが鳴る。競馬の祭典が幕を開ける。大きな歓声を受け、馬にも緊張感のようなものが伝わってくる。ジュダースクライはゲート入りを渋ったが、なんとか入ってくれた。あとはスタートだ。
ゲートが開き、ややばらついたスタートでジュダースクライは素直にゲートを出てくれた。かかるような馬ではないので、先団外目の4番手につける。キングオブキングスとトウエイライトニンは定位置の後方から。滝川はジュダースの真後ろに付け、神野は2番手にレイジングブラストを入れた。
当面、出方を注意しなければならないのは神野のレイジングブラストだ。滝川もそう考えての位置取りだろう。
3コーナー回って4コーナーへ。神野のレイジングブラストが先頭に代わる頃合いで、俺は馬を更に外に出した。滝川のエターナルレイブと併せ馬にならないようにだ。
直線向くと、エターナルレイブは鞭を入れて三番手に付ける。後ろを見たが、キングオブキングスが大外から突っ込んでくる。直線残り200,キングオブキングスが視界に入った段階で俺は仕掛けた。先頭は依然としてレイジングブラストだが、エターナルレイブも食い下がる。俺はキングオブキングスに先着するべく鞭を打ち、懸命に追うが、キングオブキングスは圧倒的なスピードでトップに立つ。エターナルレイブとレイジングブラストを捕らえた段階でゴールを迎えた。
レース後、俺は最上ひかりさんと成克さんに出迎えられ、二人は労を労ってくれた。
「惜しかったけど、これも競馬ね」
「よく2着に入れてくれた。これで一安心だよ」
「はい。ジュダースクライの子供にも乗せてください」
「わかったわ。ありがとう、アキト君」
そう言ってひかりさんは握手を求めてきた。俺は握手をし返し、この雪辱をジュダースクライの子で果たそうと誓った。
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