第17話 競馬界のドン

 オールカマー当日。レイズアライブは太目残しの+6キロ、486キロ。枠は内目の五枠13番人気。オールカマーには他に岡田の天皇賞馬トウエイライトニン1番人気、三島誠の葦毛の去年のダービー馬ウリエルが二番人気だ。レイズアライブは俺に乗り替わったことも加味して大きく人気を落とした。


 レースが始まり、俺は9番手まで馬を抑え、流れに乗せる。特に癖のない馬で乗りやすかった。ウリエルはスタートダッシュに失敗し、7番手。トウエイライトニンは後ろからの競馬だ。俺はウリエルは伸びないとみて、岡田のトウエイライトニンを見て競馬を進める。第4コーナー、指示通りなら追い出す頃合いだがこちらは教科書通りの競馬で負けているのだ。追い出しは少し待って直線、内が開くのを待って仕掛けた。


「どけ、内を開けろ!」


 観客の歓声が上がる中、俺は声を上げる。三島のウリエルがわずかに内を開け、俺はそこに突っ込んだ。


ウリエルと合わせる形になり、レイズアライブはG1馬の本領を発揮する。二頭馬体を合わせて直線残り100、大外からトウエイライトニンが突っ込んで着てレースは終わった。


 一着から三着まで写真判定で、俺はドキドキしながら掲示板をみていた。


 斤量室に戻ると、レースの結果が書きだされている。一着5枠、レイズアライブだ。俺はこの結果に満足し、勝利者インタビューを受けた。


「レイズアライブの吉沢ジョッキーです」


「どうも」


「馬場の悪い内からの直線となりましたが、決めていたんですか?」


「いいえ。結果最内になりましたが、外に出す余裕も余力もないし、馬場は渋っていても地力はあるG1馬ですから」


「吉沢ジョッキーもこれで30勝、G1に乗れますがどうです?」


「乗せてくださる関係者の期待に応えるだけです」


「次走は天皇賞となってますが、吉沢騎手は?」


「僕はオールカマーだけの代理騎乗ですから、次はマイケル騎手が乗ると思いますが、応援よろしくお願いします」


「吉沢騎手でした」


 ヒーローインタビューを終え、俺は萩原先生の所に向かう。


「どうでした?」


「ここは負けてもよかったんだけどね。本番でマークされるから。まあ勝ったから。ありがとうアキト」


「マイケルがこかしたらマイルCS乗せてくださいよ」


「考えてはおく。お前が追えるのがわかっただけでも価値はある。レイズアライブは今年で終わりだけど、別の馬も頼むよ、アキト」


 そう言って俺たちは口取り式に向かう。馬主の松平輝幸が笑顔で出迎える。


「君が吉沢アキトか。話は成克から聞いている。わたしが松平輝幸だ。今後もうちの馬でぜひ勝ってほしい」


「ありがとうございます。成克さんには大変お世話になりました。よろしくお願いします」


 松平グループ総帥のオーラの前で俺は少し萎縮してしまった。

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