第11話 タタルカン 新潟2歳ステークス
そしてタタルカンの重賞初挑戦、新潟2歳ステークスの日が来た。一番人気は岡田弘明のラディウス、1.2倍2番人気は三島義典のダンスアライ、2.5倍。タタルカンは6番人気に落ち着いた。
タタルカンはパドックで少しうるさい所を見せたが、元々、この馬は気性が荒い。俺はこのレースラディウスより前の位置で競馬をしようと思っていた。切れ味勝負ではラディウスに勝てないからだ。つまりスタートが全てと言っていい。遅くとも第3コーナーまでにはラディウスの前に出ておきたい。
返し馬が終わり、輪乗りの最中ラディウスの歩きを見る。汗もかいてないし状態は良さそうだ。逆にここでラディウスに勝てるようならタタルカンにもクラシック制覇の夢が見えてくる。
輪乗りが終わり、ゲートに次々と馬が誘導されていく。タタルカンは外目の10番ゲートに渋々おさまった。
「タタルカン、スタートはちゃんと出てくれよ?」
俺は祈る気持ちでタタルカンに声をかけ、たてがみを撫でる。ファンファーレが鳴り、スターターがスタート台に上がる。係員が離れ、ゲートが開く。
タタルカンは出遅れることもなくいいスタートを切った。俺は様子を見ながらタタルカンを走らせてラディウスを探す。ラディウスは二番手に付けていた。
「早すぎじゃないのか? ラディウスは」
俺はひとりごちた。
岡田のラディウスを中心にレースは進む。こんなことなら岡田の忠告通りに逃げれば良かったと後悔したが、道中5番手の外目で俺はレースを進め、第3コーナーからロングスパートをかけた。
タタルカンの血統はステイヤーが集まっている。1600メートルでは短すぎるくらいだ。タタルカンは徐々に位置取りを上げ、第4コーナーでラディウスに並んだ。ラディウスはまだ馬なりで涼しい顔だ。
「だから逃げろと言ったろう? アキト」
岡田はこちらを見てそう言った。
最後の直線、俺は鞭を一発入れてタタルカンを追う。対してラディウスの岡田は鞭も入れずに少し追うだけでトップに立つ。あと半馬身が遠い。ラディウスは残り200から鞭を入れ、俺も2発目の鞭を入れて懸命にタタルカンを追うが突き放される。
「これがクラシック級の馬か!」
馬の地力が全然違う。最終的な着差は1馬身半だが、能力的にはそれ以上の差を俺は感じて2着でゴールした。
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