第7話 祝勝会 天才神野五郎
その週末の日曜日、全レースが終了してからアキトは神野五郎主催の祝勝会に出た。
無論アキトはまだ未成年なので酒は飲めない。
その席にはアイノフラワーの馬主で愛野興産社長、愛野猛も出席した。
他に主だったメンバーは『神野会』の会長、神野のライバルの一人、三島誠の甥、三島義典、斎藤厩舎の調教助手、松沢仁、関西から駆け付けたアキトの同期、滝川英雄、アキトの同期でアルゼンチン大使賞受賞者の牧野しおり、アキトの同期で三島誠の次男、三島大樹が参加した。
ヨシノリによる面白くもなんともない祝辞が続く中、ゴローはアキトの隣に座り、アキトらに競馬界のしきたりを教えていた。
「神野さん、神野さんはなんで騎手になったの?」
アキトはそう質問する。
「ゴローでいいよ、アキト。僕かい? 僕はどうしても追い抜きたい漢がいたからかな? 彼が居なければ馬には乗ってないし、ここまでは来れなかった」
「ライバルか……。俺も岡田や滝川に同じような思いを抱く時がくるのかな?」
「そうなればいいね。騎乗を見たけどアキトは筋がいい。むやみに鞭を打たないし馬と折り合える腕がある。新人賞を楽しみにしてるよ。アキト。関西のジョッキーに負けるわけにはいかない。滝川君にはわるいけど、僕らはアキトを全力で応援させてもらうよ?」
滝川がそれに答えて言う。
「お手馬を回すということですか? 僕だってアキトに負けるわけにはいかない。小河原先生の顔に泥を塗ることになるし、僕をバックアップしてくれるオーナーもいる。負けないぞ? アキト」
「お、おう。お互いにな」
滝川英雄は馬上の魔術師と呼ばれた滝川巧を父に持つ。その縁故で滝川の元にはかなりいい馬が集まっていた。
無論、アキトも岡田のコネを使えばそれなりの馬は集まる。だが、アキトが岡田弘明の子だと言うことは公にされていないことだったし、それを知るのは競馬サークルでも斎藤厩舎と懇意にしている関係者と、神野五郎くらいのものだった。
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