第11話 クエストとは
目が覚めると顔を洗い、支度を済ませて部屋を出る。受付でカルロと合流すると宿のチックアウトを済ませて宿を出た。
「じゃあ、今日でこの街ともさよならだね」
「そうですね」
カルロの言葉に頷く。
シエラが生まれてからずっとお世話になったハビスカともここでお別れだ。この街もなかなかいい街だったが、きっとこの世にはもっと心躍るような光景の街やおいしいものがあるだろう。
一箇所に留まるのも悪いことではないが、やはり冒険者としてはいろんな世界を見ていきたいものだ。
「次に行く場所はどこにしましょう?」
「冒険に出る前にちょっと行っておきたい場所があるんだ。この街からも近いから一日もあれば寄れるだろう。よかったらそこにいきたいんだけど、どうかな?」
旅をする。それは決まっていることだが、具体的にどこに行くかを決めていなかったことに気がついたシエラはカルロに尋ねた。するとカルロにはいきたい場所があるようだ。
シエラにはとくにここ、といった行きたい場所があるわけではないのでもちろん快諾する。
「わかりました。ではその町に行きましょう!」
気合を入れて街の出入り口に向かって歩き始めるシエラをカルロが呼び止めた。
「ちょっとそのまえに……」
「はい?」
街の出入り口とは違う方向に進むカルロのあとを追うと、なぜかギルド組合ハビスカ支部についた。
「なぜまたギルド組合に?」
シエラが不思議そうに首を傾げると、カルロは口を開いた。
「どうせなら街を出るまえにまたクエストを受けておこうと思ってね」
「えっ?」
シエラとカルロはこのあとハビスカの街を出るのだ。なのにまたクエストを受けてしまってもいいのだろうか。
シエラの口から疑問の声が漏れる。
「クエストを受けたら報告のためにまたこの街に戻ってこないといけないのでは?」
「それは大丈夫だよ。クエストはギルド組合が出しているものだ。だからクエスト達成の報告は、クエストを受けた支部と別の支部でもいいんだよ」
「あっ、そっか。そうでしたね」
カルロの説明を受けてシエラは思い出したように頷いた。
シエラが個人でクエストを受けていたのは3年前だ。その後ギルドに所属してからはギルドとしてクエストを受けていたのでシエラはクエスト受注の作業を久しくしていなかった。なので忘れてしまっていたが、たしかに冒険者になったときにそういった説明を受けた気がする。
「でも、どのクエストを受けるんですか?」
「これにしようと思っているんだけど」
そう言ってカルロがクエスト募集板から取った紙に書かれていたのは推奨ランクBのイデカイノシシの討伐だった。
「またですか?」
「だって、おいしかったからね」
カルロは口角を上げた。
なるほど、カルロはイデカイノシシを討伐して食材にするついでにクエストをこなして微々たる報酬と業績を残しておこうという考えらしい。
本来なら討伐がメインで魔獣を食材にするのがサブだと思うのだが、やはりそこはSランク冒険者。余裕がすごい。
「わかりました! 今度はいろんな調味料を用意しておきます!」
カルロの意図に気がついたシエラは元気よく頷いた。
前回のイデカイノシシは塩で味付けして焼いただけなのにおいしかった。今度は油を用意してフライにしてみたりするのも悪くはないだろう。
「シエラはこの街から出たことがないんだっけ?」
「はい。この街で育って、街の外に出たのはクエストのときだけで、クエストが終わったらすぐに街に戻ってきていましたから……他の街は少し立ち寄ったことがあるってくらいなんですよ」
カルロの唐突な問いにシエラは頷く。
「そうか。じゃあ、ある意味ちゃんと冒険するのはこれが初めてってことだね」
「はい、そうなりますね!」
「オレの方がまだ街の外に詳しいからオレが案内できるところは案内するよ。ところでさっきのやりとりの感じだとクエストのことを少し忘れているところがあるみたいだし、少しおさらいしておこうか」
「はい! お願いします!」
カルロの提案に元気よく頷く。
忘れているところがあるのは本当のことなので、なにかやらかしてしまわないようにシエラはカルロの講義を聞くことにした。
「まずクエストというのは冒険者だけでも受けられるし、ギルドでや一時的なパーティーを組んでも受けられる魔獣退治や薬草探しなどが主の、ギルドが斡旋している単発的な冒険者向けの仕事のようなものだよ。難易度は最低ランクのDから最高難易度はS。まぁ、Sランクのクエストなど滅多にないけどね。大体はBランクやAランクのクエストが多い」
ふむふむとシエラは頷く。
目の前にあるクエスト募集板にあるクエストの内容やランクはカルロの言った通り最低ランクDの比較的安全な薬草収穫がいくつかとBランクの魔獣退治が多いようだ。現状この募集板にはSランククエストの募集はひとつもない。
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