第12話 ミッションとは
「そしてついでにミッションの説明もしよう。ミッション、これはソロで活動している冒険者ではなく、ギルド組合に正式に登録されているギルドに、ギルド組合が指名してくる突発的なイベントのようなものだね。全体的にクエストより難易度が高いものが多いし、ギルドのランクによって任せられるミッションの難易度も上がる。もちろん、その分報酬も高くなるけど……Sランクギルドにもなると結構危険なミッションを発令されるからそこは気をつけないといけないところだ」
場合によってはミッションを放棄することもある、とカルロは付け足した。
シエラも元のギルドで何回かミッションに参加したことがあったが、その大半はSランク魔獣の討伐だった。
大変なのは討伐対象のSランク魔獣の他にも周囲にAランク魔獣がほいほいと闊歩していたことだ。
低ランクの冒険者ならそもそも討伐対象の魔獣に近づく前に周囲の魔獣にやられてしまうのがオチだ。
「まぁ、このギルドはまだ発足したてでランクもD。なんらかのミッションが来ることはないだろうけど」
「そうなんですか?」
「ああ、ミッションっていうのは全体的に難易度が高いものが多いと言っただろう? だからギルド組合がミッションを発令するのは基本的にAランク以上のギルドなんだ」
「へぇ、そうなんですか」
たしかに危ないミッションをランクが低い冒険者がやれば危険な目に遭うということはやるまえから目に見えている。
シエラは初めて入ったギルドがすでにSランクだったのでミッションについてはあまり考えたことがなかったが、ミッションを受けているギルドというだけで随分とすごいことだったのだなと改めて思った。
「じゃあ、とりあえずこのクエストを受注しておこう」
「はい」
カルロ先生によるクエスト・ミッションについての解説を受けてシエラたちはクエストの張り紙を受付嬢に渡す。それに受付嬢が判子を押した。これでクエストの受注は完了だ。あとはイデカイノシシを討伐して角を回収してそれをギルド組合に提出するだけ。
「行こうか!」
「はい!」
カルロと顔を合わせて頷き合うとギルド組合を出て街の外へと向かう。
何十年も暮らしてきた街を出るのは少し寂しくもあるが、それ以上にこれから出会うであろう景色や冒険にシエラは心を躍らせて街を出た。
「このクエストのイデカイノシシはオレが行きたい町に向かう道中にある森に巣を作っているみたいだから、倒したら昼食にしようか」
「イデカイノシシフルコースですね!」
「ああ!」
カルロも楽しみでしかたがないという顔をしている。
ギルドでは見れなかった顔だ。これからの冒険に心を躍らせているのはシエラだけではないようだ。少し浮き足立ってしまう。
ハビスカからカルロの目的の町までは自然豊かな道を通ることになる。イデカイノシシは基本的に森に巣を作るが、その森はまだまだ先だそうだ。
シエラたちは人の通りが少ない道中を雑談しながら進んでいた。時折馬車が近くを通るが、シエラたちのように歩いて移動している人はまったくいない。
「オレたちも馬車を使ったほうがよかったかな?」
「いえ、歩いてじゃないと見れない景色もあると思うので、いいんじゃないでしょうか?」
「それもそうだね。虫の声、風の音。歩いて移動しているからこそこの自然豊かな音をゆっくりと堪能できる。本当に……いいな」
カルロは目を細めて気持ちよさそうに風に髪をたなびかせていた。
ギルドに所属していながらも比較的自由に行動できていたシエラとは違い、ずっと仕事に追われていたカルロにとっては久しぶりの感覚なのだろう。
自分の恩人が楽しそうなのを見てシエラは口元を綻ばせた。
平和で、静かで、冒険とは戦うだけじゃない。こうして仲間と和気藹々と話をしながら歩くのも良いものだ。
「そろそろお腹すきましたね」
今日は朝食を食べていない。歩いて移動しているのもあって少し空腹感が目立ってきた。シエラがぼそりとつぶやくと、
「ふっふっふ、シエラ、これを見たまえ」
そう言ってカルロは手持ちから二つの紙に包まれたなにかを取り出した。
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