第27話 怒涛の依頼達成
「はい。これがポーション用の薬草で、こっちが肉用の血抜き済みウサギ。そして、ゴブリンの残党を倒したって証明」
「は、はぁ…?」
「早く依頼達成にしてよ!次の依頼を受けたいんだから!」
「か、かしこまりました!」
私は怒鳴って受付嬢を急かすと、掲示板を見つめる。
掲示板はここから離れているから、どんな内容かはあまり読めないけど、大きく書かれているものなら読める。
良さそうなものがないか見ていると、受付嬢が戻ってきた。
「えー、3つ分の依頼を達成していますね。報酬は――「そんなのいちいち言わなくて良いから!」――は、はい!」
受付嬢から報酬を奪うように受け取ると、すぐに掲示板に走って依頼書を回収、また戻ってくる。
「次はこれをお願い!」
「また緑級……かしこまりました。ゲールさんに感謝してくださいね?」
「分かってるよ!じゃあ、行ってきます!」
私はすぐに走り出し、次なる依頼の達成に向う。
今回受けた依頼は、畑を荒らす害獣として悪名高い魔物、『一つ目大角鹿』を狩りに行く。
コイツはその名の通り、一つ目の角が大きな鹿で、草食のクセして凶暴という厄介な性格をしている。
魔物であるため、一般人では倒すことが難しく、ノノー村でもお父さん達が来るまでは、大きな音を立てて追い払う事しか出来なかったらしい。
今回の依頼は、ノノー村と似たような方法でコイツを追い払っていたけれど、最近は慣れてしまい、どうしようもなくなった為に、ギルドに依頼することになったとか。
小さな農村の依頼ということもあって、依頼料は安い。
だから、誰も依頼を受けないせいで、塩漬けになっていた依頼だ。
こういうのを率先して受け、達成すると評価が付きやすいらしい。
だから、評価を狙って大して報酬が美味しくもない依頼を受けたのだ。
「ちょっと遠そうだけど、私なら行けるはず」
魔力を使って走り続けること数時間、かなり疲れたけれど、目当ての村には到着した。
日が傾き始めた頃、私は本当に私が依頼を達成できるのかと不審がり、引き留めようとする村長を振り切って、鹿狩りに出かけた。
お父さんに教わった、『鹿が現れやすい場所』を重点的に探し、森の中を探し回り、ついに見つけた。
「コイツは耳が良いから、どうせ私には気付いてるはず。なら、魔法で攻撃して、敵と認識させる」
私は『大石礫』で攻撃する。
「キャインッ!?」
見事に背中に命中し、『一つ目大角鹿』は私の事を睨みつけた。
そして、すぐにその角を私に向けて突進してくる。
「コイツの弱点は、突進しか脳がない事。
そして、突進を躱されると無防備になる事。なら、これはどう?」
「キャイッ!?」
突進をヒラリと躱し、横に回ると槍を突き出す。
私のやりは見事に首を貫き、大きな穴を開けた。
首に穴を開けられた『一つ目大角鹿』は、倒れこんでのたうち回る。
私は、脚や角で払われないように、少し距離を取って奴が力尽きるのを待つ。
そして、数分すると急に元気がなくなり、荒い息をしながら動かなくなった。
「さようなら。次はもう、人の畑の野菜を食べないことね」
そう言って、目を勢いよく貫くと、頭蓋骨が割れる感覚があった。
『一つ目大角鹿』の体が大きく痙攣し、しばらく震えた後、静かに動かなくなった。
私は、『一つ目大角鹿』よ死体を空間収納に入れると、村の近くまで走る。
もうすぐ夕方だなぁと思いながら、村の近くに来ると死体を空間収納から取り出し、足を掴んで引きずる。
「おい!帰ってきたぞ!?」
「すげぇ…本当にあの鹿を殺りゃがった…」
「信じられねぇ…こんなガキが…」
村人は私が引きずってきた死体を見て、口々に驚きの声を上げている。
私は、あまりの事に呆然としていた村長を、揺さぶって正気に戻し、完了札と角を貰って街に戻った。
「えっ!?もう倒したんですか!?」
夕暮れ、ギルドに戻っきた私は、完了札と角を受付嬢に渡してまた驚かれた。
不満そうな表情をして、圧を掛けると、気を取り直して精算をしてくれた。
報酬を受け取って、次の依頼を受けに行こうかと思ったけれど、もう夕方だ。
あと少しでギルドは閉まってしまうし、外に出たところで門も閉まっているので、帰ってこれない。
街の中で出来る依頼をしようにも、生憎今は夜も出来る依頼はない。
仕方なく今日は諦めて、大人しく宿に帰ることにした。
翌朝、朝一番でギルドにやって来ると、掲示板に貼られた依頼書を眺め、良さそうなモノを持って受付に行く。
「もう行くんですか?朝早くから、偉いですね」
「下らない世間話に付き合ってる余裕はない。早く済ませて」
「はいはい。頑張って下さいね〜」
受付嬢に見送られながら、私は街の外へ走る。
誰もやりたがらない依頼だから、きっとそれなりに評価が付くはず。
さっさと終わらせて、次の依頼もする。
そうすれば、すぐに私は緑級になれて、その後黄級に……
「ふふっ、私のプランは完璧!何としてでも、黄級になってやるんだ!」
街から離れ、森に到着した私は、槍を空間収納から取り出して、いつでも戦える状態で走り回った。
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