第25話 ゴブリン討伐2
外に逃げ出したゴブリンの大半を始末した私は、退屈になったので巣に戻ってみる。
かなりの量のゴブリンが逃げ出したはずだけど、それでもまだ確実100以上の気配がある。
「しかも、この巣の主力とリーダーは健在と……奇襲でも仕掛けようかな?」
ゴブリンの巣に初めて接近した時から、他とは一線を画す実力を持ったゴブリンの気配があることは知っていたし、リーダーの存在にも気付いていた。
そして、その時から数が変わっていない辺り…コッチが苦戦してるか、ゴブリンが非戦闘員を逃がす時間を稼ごうと奮闘しているんだろうね。
後者の場合、私のせいで無駄になったわけど。
まあ、少なくともコッチが苦戦してることに変わりはない。
私も手伝いに行こうか。
こっそり裏から近付いて、ゴブリンの一団の後にやって来ると高速で術式を構築する。
使うのはおばさんと一緒に開発した私だけの魔法。
おばさんが作ったあの魔法を元に作り上げた魔法を…食らわせる!
「ふぅ〜…『
魔力と術を槍に込め、地面に弧を描くように穂先を擦りながら槍を振る。
すると、穂先が通った後の地面が淡く光り―――
「グキャッ!?」
「ナ、ナン―――」
「ギャアアア!!」
大量の棘が地面から現れ、十数のゴブリンを串刺しにする。
串刺しになった場所は個体によって違うものの、中にはいくつもの岩の棘が突き刺さっている奴も居る。
流石にアイツは助からないだろうね。
「な、何だありゃ…?」
「あのガキが魔法を使ったのか…?」
「嘘だろ……なんであんなのが青級なんだよ…」
私の魔法を見た冒険者達は、目を丸くしてこっちを見ている。
本来、戦場でそんな事をするの危険極まりないんだけど…この状況ではそうでもない。
なにせ、ゴブリン達の注目が全て私に集まっている。
多少ボーっとしていても、すぐには襲われたりしないはず。
そんな事より、今は自分の身を案じたほうが良いね…
「ア、アノオンナヲコロセ!!」
この巣のリーダーと思われる、比較的ガタイの良いゴブリンが私を指差す。
最初こそ混乱していたものの、徐々に意味を理解したゴブリン達が次々と襲い掛かってくる。
「くっ!?小癪な…!」
3体のゴブリンが剣や棍棒を振りかぶるが、私は後ろに引いてそれを回避する。
そして、速射出来る魔法を瞬間的に構築し、一体ずつ確実に仕留める。
「『
「グギャッ――!!」
自分の顔と同じくらいの大きさの岩が高速で飛んでくるんだ。
そのダメージは、速射の魔法にしては高い方だと思う。
「『
「グエッ――!?」
「『
「ギヤッ――!!」
後ろに飛びながら『大石礫』を撃つ。
その繰り返しだけで、3体のゴブリンを倒してしまった。
しかも、当たりどころが悪かったのか、3体とも死んでる。
……引き撃ち戦法って割りと強い?
「ナニヲシテル!ハヤクコロセ!!」
リーダーのゴブリンが他のゴブリンを私の方へ差し向けてきた。
その数――14体。
流石にこの数の戦闘員のゴブリンを相手するのは厳しい。
1体1体は弱くとも、多勢に無勢。
……ただ、そんなに沢山私の方に戦力を削いでいいのかな?
「チェイリャァァァァアアアアア!!!」
「――!?」
大男が私に気を取られていたリーダーゴブリンに、その大剣を振り下ろす。
大人の男の身長ほどある大剣は、強大な質量を持った凶器。
そんなモノをあの筋骨隆々な大男が振り下ろせば……その威力は計り知れない。
リーダーゴブリンはなんとか大剣を避ける。
空を切った大剣は地面を叩き、地震を思わせるような激震を起こした。
大剣が叩き付けられた地面周辺は、地面が激しく割れ、陥没している。
急に足場が不安定になり、リーダーゴブリンは体勢を崩した。
その隙を、私は見逃さない。
「『見えざる手』」
「ナニッ!?」
リーダーゴブリンに『見えざる手』を使い、負荷をかけて動きを鈍らせる。
突然体が重くなり、動きが鈍くなったリーダーゴブリンはすぐ隣に大男が居ることも忘れて腕を振ったりして驚いている。
「どこ見てんだ!デカ頭!!!」
……それ、アンタが言う?
明らかそっちのほうが頭が大きい気が…
「ッ!?クソッ、マニアワ―――」
「ふんっ!!!」
大男は先程見せた雷のような斬撃をリーダーゴブリンへ振り下ろす。
その一撃は不安定な足場と『見えざる手』によって動きが鈍っていたリーダーゴブリンの肩に直撃する。
そのまま大剣はその体をバターを切るように切り裂き、リーダーゴブリンの体を真っ二つにした。
「ドーズガヤラレタ!?」
「バカナ!?二、ニゲロ!!」
「ウワァアアア!!」
リーダーゴブリンを失った戦闘員のゴブリン達は戦々恐々とし、散り散りに逃げ始めた。
頭を失えばあっという間に崩れてしまうのは、人間もゴブリンも同じらしい。
当然、一匹たりとも逃がすつもりはなく、渡しは逃げ惑うゴブリンの殲滅に取り掛かった。
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