第24話 ゴブリン討伐1
「予定よりも速いが、今晩にゴブリンの巣に攻撃を行う。奴等も夜になれば眠る。奇襲をかけ、一気に叩き潰すぞ!」
『おぉー!!』
ゲールさんが派遣した調査隊が帰還し、ゴブリンの巣の位置を特定した私達は、予定を前倒しにしてゴブリンの巣の破壊作戦が決行される事になった。
冒険者は各自装備を整え、万全を期して鬱蒼とした森の中を進む。
足元に注意し、周囲を警戒しながらゴブリンの巣周辺に到達すると―――
「ぬううううんッ!!!!」
私と一触即発の状態まで進んだあの大男が雄叫びを上げながらその大剣を使って、ゴブリンの巣の防壁を粉砕した。
ゴブリンの“巣”と言えば少し語弊がある。
正確には『集落』或いは『村』と表現すべきで、竪穴式住居と呼ばれる原始的な家が複数存在し、井戸もあれば見張り櫓もある。
何なら巣の周辺は木の防壁で覆われていて、私が生まれ育ったノノー村よりも防御意識は高い。
そもそも、ゴブリンというのは人間よりも少し劣る程度の知能を持つ亜人の一種で、言ってしまえば獣人やエルフ、ドワーフ等と何ら変わらない。
ただ、亜人を含むすべての『人類』においてダントツの繁殖力を持ち、非力ながらも頭数を活かして他の人類と渡り合える存在だ。
故に、ほぼすべての宗教でゴブリンは人非ざる魔物として扱われている。
そんな理由もあって、ゴブリンのコロニーは『集落』や『村』ではなく“巣”と表現されるのだ。
「ナ、ナンダ!?」
「ニンゲン!ニンゲンガオソッテキタ!」
「オンナコドモヲニガセ!!チリヂリニダ!!」
まあ、こうやって人間と同じ言語を話し、人間と同じように非力な女子供を逃がそうとする辺り、やはりゴブリンは間違いなく亜人の一種だ。
それなのに魔物扱いされるのは、宗教が深く関わっているからだろう。
「イケ!イケ!イケ!奇襲の効果が薄れる前に少しでも数を減らせ!!」
後ろからゲールさんの指示が聞こえる。
他の冒険者は好機と見てすぐに巣に雪崩込んでるし…私も行きますか?
魔力を足に集中させ、巣の防壁を飛び越える。
魔力を使えばこんな事も可能なのだ。
防壁を飛び越えた先で、私は子供を抱えて逃げようとする雌ゴブリンを見つけた。
雌ゴブリンは私を見るなり急いで逃げ出したが、逃がしはしない。
「ギャッ!?」
あっという間に追い付き、雌ゴブリンの背中を深々と切り裂く。
雌ゴブリンは倒れ、泣き叫ぶ我が子を体の下に隠しながらうずくまる。
子供を守ろうとしているんだろう。
「許してくれとは言わない。恨むなら、好きなだけ恨め」
「マ、マッテ――――」
私は雌ゴブリンに止めを刺し、その亡骸を蹴飛ばして下にいた赤ん坊のゴブリンも殺す。
親を失った赤子のゴブリンがこの過酷な環境で生き残れるとは思えないけど、万が一の事もある。
ここで見逃したせいで、多くの人が犠牲になったら元も子もない。
可能性の芽は、全て摘み取ってしまう必要があるんだよ。
そうすることで、自分の明るい未来を守れるんだから。
「11…12……13…14、15、16…17、18……19…20!」
目に付くゴブリン全てに、無慈悲な一撃を食らわせる。
老若男女関係ない。
弱者も強者も構わず殺す。
それが今回のゴブリンの巣攻撃計画の概要だ。
「……逃げてるのが4つ」
探知で巣の外に逃げているゴブリンを見つけた私は、すぐに防壁を飛び越えてその気配の下へ向う。
そして、子供の手を引いて逃げようとするゴブリンの前に立ち塞がると、槍を構える。
ゴブリンはすぐに方向転換して逃げようとするが、もう遅い。
逃げ遅れた小さいのの首を一突きし、頚椎を破壊する。
それを見て動揺した雌ゴブリンの首を一瞬にして切り落とす。
母親を目の前で殺され、呆然とする子ゴブリンの脳天に穂先を振り下ろす。
そして、最後に一人で逃げようとしていた雌ゴブリンに魔法を使う。
「『見えざる手』」
「ナ、ナニコレ!?」
全力で発動した『見えざる手』によって、雌ゴブリンはその場に倒れ込む。
なんとか逃げようと這いずっているが、そんなもので私から逃げられるはずがない。
歩いて追い付くと、首に穂先を突き刺した後、横に振って首を掻っ切った。
これでこの雌ゴブリンは死ぬだろう。
さて、巣に戻って他のを探すか。
首から血を流す雌ゴブリンを一瞥すると、巣の方へ走る。
その最中にまた巣から逃げ出しているゴブリンの気配を感じ取り、先回りすることにした。
真っ暗な森の中を駆け抜け、逃げようとしているゴブリンの眼の前に現れる。
どうやら、こっちには護衛が付いているようで、武装したゴブリンが女子供を守っていた。
「クソッ!キズカレテイタカ!!」
武装したゴブリンは、冒険者から奪ったと思われる剣を構え、私と相対する。
緊迫した空気が流れ、ゴブリンが冷や汗を流している。
私はこの程度のゴブリン相手に負けるとは夢にも思っていないので、全くもって余裕だ。
なにせ、さっきから『オーラの流れを見る魔眼』でゴブリンの魔力の流れを見ているが、とても意識して使っているとは思えない。
自然な流れ方をしている。
魔力の使えないゴブリンなんて、ガキ同然。
私も子供だけど、魔力が使えるし身体能力も他の子供と比べて高い。
そんな私が、このゴブリンに負けるはずがない。
「オオオオオ!!」
「フッ、分かりやすい動きね」
意を決したのか私の雄叫びを上げ、斬り掛かってくるゴブリン。
しかし、恐怖で体が強張っている上に、しっかりとした判断力が損なわれているのか、動きが分かりやすい。
容易く剣を躱し、柄の部分でゴブリンの首を殴りつける。
「グガッ!?」
思いっきり喉を殴られたゴブリンは、喉を抑えながらのたうち回っている。
しかし、すぐに痛みを気合で我慢すると、手放してしまった剣を拾い、脂汗を掻きながら私の動きを警戒する。
警戒を見せるゴブリンに対し、私は真っ直ぐ手を伸ばして魔力を操る。
そして――
「『
「ッ!?」
人の頭よりも大きな石が、私の手の前に現れ、ゴブリンの顔目掛けて射出される。
石は高速でゴブリンの頭に激突すると、ゴキン!という鈍い音を立てた。
人の頭よりも大きな石が高速でぶつかる。
その威力は相当なものだ。
この一撃でゴブリンはダウンしてしまい、血を流して倒れている。
ただ、死んだ訳では無いから、しっかりとトドメを刺す必要がある。
心臓を一突きすると、戦利品として剣を回収し、このゴブリンが守っていたゴブリンを殲滅した。
どうせ他にも逃げ出したゴブリンは居るだろうし、そいつ等を探しに行きますか。
逃げ出したゴブリンを倒した所で、誰も文句は言わないでしょ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます