第13話 青級冒険者
薬屋に帰ってきた後、すぐに寝てしまった私はその後どうなったかは知らなかった。
おばさんに言われて領主邸に向かうと、隊長さんがその後の出来事を話してくれた。
なんでも、おばさんが魔法で刺客の位置を特定し、見事討ち取ったそうだ。
刺客は全身を串刺しにされ、体内から焼かれて死んだという。
おばさんの古い異名は『紅蓮の薬師』だそう。
あの、『
刺客は、その『火炎棘』によって焼き殺されたんだと。
そのことを、何故か隊長さんが自慢げに話していたのは凄く不思議だった。
「昨日の今日だから今は会えないが、領主様もお前のことを褒めてくださっていたぞ?それと、『もう依頼は完了だ』だそうだ」
「え?じゃあもう来なくていいの?」
「そうだな。コレを持っていけ。そうしたら、お前も晴れて青級冒険者だ」
そう言って、隊長さんはギルドの紋章が入った木の札を渡してくる。
完了札だ。
おばさんが領主邸に向かうように言ったのは、コレを受け取らせるためかな?
予想外の事件に巻き込まれたけど…コレを持ってギルドに行けば私も青級冒険者の仲間入り。
登録してから1週間で青級冒険者になるなんて……相当珍しいんじゃないの?
異例の昇級でしょ?
完了札を受け取ると、ルンルンでギルドまで向かった。
今日はとっても気分が良い。
鼻歌を歌いながらギルドへ入ると、何やら冒険者達のひそひそ話が聞こえてきた。
「おい、あいつだろ?たった一人で暗殺者による襲撃を未然に防いだってのは」
「まだガキのくせにとんでもねぇ奴だな」
「大人になったらどうなるんだ?橙級……いや、もしかしたら赤級の冒険者になるんじゃねえの?」
赤級冒険者…
おばさんと同等の実力を持つ冒険者かぁ…良いね。
でも、私はもっと強くなるつもりなんだよね〜
冒険者達のひそひそ話を聞いてホクホクしながら受付に行くと、完了札を手渡した。
「お願いします!」
「はい、ではプレートをお預かりしますね」
「はーい!」
私は胸にかけていたプレートを受付嬢に渡すと、ニコニコ笑顔で揺れながら新しいプレートが来るのを待つ。
1分ほど待っていると、奥からお金と青いプレートを持った受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました。5000シルと、青級のプレートになります」
「やったー!」
私は、早速受け取った青級プレートを首に掛ける。
手に持つと、プレートが光を反射して青く光っている。
「お似合いですよ」
「本当に?ありがとう!」
新しいプレートを首に掛け、お金を財布に入れると、ギルドを出て薬屋に向かう。
青級になった事をおばさんに見せに行く。
おばさんが喜ぶ姿が脳裏に浮かび、思わずニヤけてしまう。
しかし、そんな顔を周りの人に見られるわけには行かないので、必死に抑えながら薬屋に走った。
「おばさん!ただいまー!」
薬屋に戻ってくると、まずおばさんに飛びついて顔を擦り付ける。
こうすると、おばさんはとても喜んでくれる。
ある程度顔を擦り付けたあと、私は首に掛かっているプレートを摘んでおばさんに見せる。
「見て見て!青級のプレートだよ!」
「ふふっ、本当ね。1週間で青級になるなんて、中々無い事よ?それこそ、権力者のご子息とかでもない限り、ね?」
権力者が金にモノを言わせてやらないと、ありえないくらいの昇級。
やっぱり、私は凄いんだ!
「そうなんだ…じゃあ、私の昇級は異例なんだね!?」
「ええ。異例中の異例よ」
異例中の異例かぁ…
いい響きだなぁ。
なんというか…別にその言葉自体にそれほど褒める意味はないんだけど…凄く褒められてる気がして気分が良い。
やっぱり、褒められるっていいなぁ~。
「ようやく街の外の依頼を受けられるわね。でも、しばらくはゆっくりするのよ?」
「そうだね。実は、まだちょっとお腹が痛いんだ…」
「そうでしょうね。それじゃあ、休んでいる間にみっちりと魔法の何たるかを教えてあげる。覚悟しなさい」
「は、はい!」
どうやら、これからおばさんがみっちりと魔法を教えてくれるらしい。
おばさんの『みっちり』がどれくらいかは分からないけど、凄く嫌な予感がする。
あんまり厳しいものじゃないといいなぁ…
こうして、青級冒険者としての生活とみっちりと魔法の勉強をする生活が始まった。
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