第4話 ツヴァーイの街と冒険者登録
休憩を終えてから走ること20分。
ようやく私はツヴァーイの街に着いた。
すると、門番の衛兵が声をかけてくる。
「おや?お嬢ちゃん、一人かい?」
「そうだよ。これから冒険者登録をして、私も冒険者になるんだ!」
胸を張ってそう言うと、門番は私が持っている槍と、その槍に突き刺さっているゴゴクを見て感心したような声を出す。
「ほ〜ん?確かに、ゴゴクを仕留められるなら冒険者をやれるだけの力はありそうだな。別に怪しい雰囲気もないし、通ってよし!」
「ありがとう!」
通る事を許可された私は、堂々と胸を張りながら街の中へ入る。
久しぶりに来た街は特に変わった様子がなく、とても活気に溢れていた。
「やっぱり露店が多いなぁ。でも、こういう店の食べ物は大体高いから、買わないほうが良いんだよね」
道の両側には沢山の露店が立ち並び、美味しそうな匂いを漂わせている。
露店で売られている食べ物は、簡単に買えてすぐに食べられる分少し高い。
普通の店に行けばお腹いっぱいになる量を安く食べられる。
だから、冒険者になりたてのお金に余裕がない時期は露店を使うなって、お父さんが言ってた。
だから、その言いつけを守って今は露店には行かない。
それより冒険者登録だ。
さっさと登録して、このゴゴクを売らないと。
私は記憶を頼りに行ったり来たりして、なんとか目的地である冒険者ギルドに辿り着いた。
「さて…行くか」
意を決してギルドの扉を開けると、堂々と中へ入る。
お父さんもお母さんも言っていた話。
『アリーはまだ子供だから、ギルドに入るとガラの悪い荒くれ者に難癖つけられる』って。
正直、それが一番の難関だと私は思っている。
だって、道は覚えてるし、街までの道のりに強力な魔物や盗賊が出ることはない。
それに、子供だから街の中にも比較的簡単に入れるし、冒険者ギルドの場所も知ってる。
冒険者登録をした後も、砦方面の森で出来る依頼を受ければ危険は少ない。
なら、他にどんな危険があるか?
それが、荒くれ者に難癖つけられるかどうか。
特にたちの悪いヤツだと、身ぐるみ剥がされるかも知れない。
それが、ある程度実力があるヤツなら尚更だ。
そんなヤツが居ないか警戒しながら受付までやって来ると。
「ようこそ、冒険者ギルドへ!本日はどのようなご要件でしょうか?」
受付嬢が定番の挨拶をしてくる。
お父さんとここに来た時も、こんな挨拶をしてた覚えがある。
「冒険者登録がしたいの」
「新規登録ですね。少々お待ち下さい」
そう言って、受付嬢は奥へ入るといくつかの欄がある紙を持ってきた。
「読み書きは出来ますか?」
「出来るよ?」
「でしたら、ご自分でご記入なさいますか?」
「うん」
私は、紙とペンを受け取ると、背伸びをしながら紙に必要な事を記入する。
そして、それを受付嬢に渡した。
「拝見します」
受付嬢は私の書いた内容を読むと、それを持ってまた奥へ行ってしまった。
そして、待つこと5分。
ようやく戻ってきた受付嬢は、白色のタグを持ってきた。
「お待たせしました。こちら、アリーナ様の冒険者タグになります。新規登録ということなので、一番下の等級、『白』になります」
「白…冒険者の等級ってどんなのだっけ?」
前にお父さんが何か行ってんだけど…思い出せないなぁ。
確か、黒が一番高いんだっけ?
「冒険者の等級は下から順番に『白』『青』『緑』『黄』『橙』『赤』『紫』『黒』の、8つになります」
「ああ!そう言えばそんな感じだった」
そうだそうだ。
冒険者の等級は8つだったね。
『白』新規登録した人がなる一番下の等級。要は見習いって事。
『青』ある程度経験を積んだ半人前の冒険者。まだまだ弱いよ。
『緑』充分経験を積んだ一人前の冒険者。この等級になってからが始まり。
『黄』いくつかの修羅場をくぐり抜けてきた冒険者。冒険者として周囲から頼りにされるレベル。
『橙』いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた一流な冒険者。お父さんとお母さんがこの等級で、一騎当千の実力者揃いらしい。
『赤』一部の天才のみ到達出来る一流の中の一流。小国であれば国を代表する冒険者として扱われることもあるらしい。
『紫』一部の天才のみ到達出来る超一流の冒険者。人間の限界とも言われる程の領域で、単騎で国軍と肩を並べると噂される猛者なんだとか?
『黒』人の常識を逸脱した化け物。そこにいるだけで絶大な影響力を誇り、少し移動するだけで国際情勢に影響を及ぼす事もあるんだとか?世界に数えるほどしかおらず、中には国を滅ぼしたと、まことしやかに噂されるほどの化け物も居るらしい。
これが、冒険者の等級。
そう考えるとお父さんとお母さんって凄いんだね。
上から4番目だよ?
めっちゃ強くない?
私も、お父さんやお母さんに負けないくらい強くならないと!
「白級の冒険者の依頼ってどんなのがあるの?」
「主に、都市内での雑用ですね。稀に外に出る依頼もございますが、今はありませんね」
「雑用かぁ…私が出来そうな依頼を見繕ってくれない?」
私がそう頼むと、受付嬢はカウンターの下から3枚の紙を取り出した。
「こちらの依頼はどうでしょうか?」
「『下水道の掃除』に『ゴミの回収』、『店の戸棚の整理』?……ホントに雑用だね」
「白級ですから」
世知辛いなぁ…
下水道なんて行きたくないし、ゴミの回収も嫌だ。
店の整理は簡単かもだけど、その分報酬が少ない。
……それでも、『店の戸棚の整理』が良いかな。
「じゃあ、『店の戸棚の整理』にします」
「かしこまりました。では、この依頼書を持って『薬楽屋』という店へお向かい下さい」
『薬楽屋』…名前からして薬屋かな?
なら、大して重たいモノもないだろうし、私でも簡単に出来るはず。
依頼書に描かれている地図を頼りに、私は『薬楽屋』という薬屋に向かった。
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