第25話
「……そっか」
数日後。
俺は大学で祖野沢と話をするべく空き教室で二人きりになっていた。
そして俺は前の彼女からの告白に対する返事を言った。
──ごめん、俺にはもう好きな人ができた、と。
それに返ってきた返事はやはりショックだったのだろう、いつもより暗かった。
「わざわざありがとう。こうやって話してくれて」
「俺だって、こんな俺を好きになってくれて、ありがとう。とても、嬉しかった」
「そっか」
二人の間に何とも言えない空気が流れる。
「でも」
と、祖野沢が口を開いた。
「やっぱり、私を選んでほしかったなぁ……」
寂しそうにそう呟いた。それに対し俺は何だか申し訳なさが募る。
それが表情に出ていたのだろう、祖野沢は苦笑した。
「ははっ、勢登がそんな顔になる必要はないよ。お願いだからそんな顔をしないでおくれ」
「……あぁ。分かったよ」
そう言って俺は笑顔を作ろうとするもどこかぎこちなくなっているているに違いない。
案の定、祖野沢は俺の顔を見て笑った。
「変な顔」
辛いだろうに、そう言って笑う彼女はどこか苦しそうに見えた。
すると祖野沢は急に俺の方に近づいて、抱きしめてきた。
「っ!そ、そのざ──」
「今だけ」
「……分かった」
「……っ、ぅぅ」
俺は抱きしめ返そうか悩んだけど、その時朱火の言葉を思い出した。
「っ!?」
俺はそっと彼女を抱きしめると一瞬体をビクッとさせた。
しかしその後すぐにさっき以上に強く抱きしめてきたので、俺は大人しく彼女のしたいようにさせたのだった。
「ありがとう」
「別にいいよこれくらい。それじゃあ、また明日。サークルでな」
「うん!」
別れ際に見た彼女の顔はまるで憑き物が取れたかのようにスッキリとしていて、俺はそれを見て安心した。
この先も、彼女とは友人として仲良くしていきたいと心の底から思う。
俺は祖野沢と別れた後、近くのスーパーに寄って必要な食材を買ってから家に帰った。
「ただいま……って、そう言えばいなんだっけ」
朱火は今この家にいない。
というのも、今彼女は平風さんの元に行っているからだ。
彼女はあの後平風さんに報告したいと俺に言ってきた。
今まで育ててくれた上に俺の部屋に住み込むなんていう彼女の計画を許可してくれたお礼を兼ねての事だろう。
「ただいま~」
と、噂をすれば何とやら。丁度彼女が帰ってきた。
「おかえり」
「勢登さん、許可取ってきたよ」
「ん?許可?」
「そう、許可」
俺は一体何の許可を取ってきたのか分からず、そう聞き返した。
すると彼女はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「今後、勢登さんと一緒に暮らす許可だよ!!」
どうやら、この生活は今後も続きそうだ。ならば、この生活を続けるためにも俺は頑張っていくしかない。
まずは目先のこと──大学の単位を落とさないこと……だな。
最初の出会いは偶然だった上に俺たちの間にあった糸も細いものだったのかもしれない。
でも、それが今ではこうして彼氏彼女の関係となっていると言うのは何と言うか、運命を感じるものだ。
「勢登さん、今日の晩御飯、何にする?」
今はただ、この彼女の笑顔を守りたい。
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ここまで読んでくださりありがとうございました!!
是非『面白かった!!』と思ったら、☆と♡をやってもらえると嬉しいです!!
今後もいろんなジャンルの作品を書いていくので、その際は読んでもらえると嬉しいです!!
最後に告知です。
新作を書き始めたのでぜひ読んでください!!
初めて異世界ジャンルに挑戦してみました!!
『集団転移が起きたけど、トカ言語とか言う謎スキルのせいで僕だけ城の庭師に弟子入りすることになりました』
https://kakuyomu.jp/works/16817330662346032540
女子高生(16)が何故か大学生(21)である俺の家に住み始めたのだが 外狹内広 @Homare0000
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