第22話

「ふぅ……結構回ったなぁ」


「遊園地ってこんなに楽しかったんだ!あ、でもジェットコースターはまず許すまじ」


「……だったら乗らなきゃよかったのに」


「いや、友達に乗った方がいいって言われたんだもの。乗らなきゃ」


「……優しいね」


「えへへ」


 あの後ジェットコースターに散々文句を言った白戸さんは、その恐怖を忘れるために彼女は俺をいろんな乗り物に連れまわした。


 正直疲れた。


「今日は楽しかった?」


「うん!そりゃあもう!初めての遊園地だもん、当たり前じゃん!」


 今日一日がとても充実したようでさっきからずっとニコニコだ。


「今度は施設のみんなと一緒に来たいな……」


 すると彼女は少しだけ声のトーンを落としてそう言った。

 それは絶対に無理だと分かっているから。


「……白戸さんが頑張れば、きっと来れるよ」


 俺にはこんな薄い言葉しか言えなかった。


 でも、彼女ならきっと──





「──あ、白戸!」

 

「っ!?」


 その時だった。

 俺たちの目の前に一人の男が立ちはだかった。


「あ、あなたは……!」


「やっと見つけたよ!どうして俺のところに来ないのさ!」


「何であなたがここにいるんですかっ!?」


「そりゃあ、白戸、君を探していたに決まってるだろう?」


 そこにいたのは、一度俺たちの前に来て、何かよく分からない言葉を残して逃げて行った男──名前は忘れたけど、とにかく、前のストーカー男がいた。


「まだ私に執着してるんですか……?もういい加減にしてくださいよ」


「そっちこそ、俺の家に早く来いよ。ずっと待ってたんだぞ?」


「……は?なんでお前の家に行かないといけないんですか?」


 白戸さんは自分を抱きしめるように自分の両腕を掴み、ストーカー男から離れるように俺の後ろに隠れた。


 そして俺の腕を引っ張り始めた。


「は、早く帰ろ?」


「あ、ああ。だが……」


「俺が素直に帰すと思う?」


 そう言って目の前の男は大きく手を広げた。

 今すぐ出口に行きたいのだが、それがあるのはこいつがいる先にある。


 それに通路がまぁまぁ狭い為にこいつの横を通っていくと言うことができない。


「……うざい」


「ははっ、そうやって照れ隠ししなくてもいいんだよ?」


「……気持ち悪い」


 白戸さんが嫌悪感を包み隠さずそう言うが、目の前の男には通じないようだ。


「前にも言ったと思いますが私はあなたのことが好きではありませんし、あなたの彼女になった覚えはありません。それに──」


「でもそこの彼も君の彼氏じゃないんだろう?」


「っ!?」


「前のあれは嘘だってことは、調べればすぐに分かったよ。全く……。少しだけ距離を置きたいと言ってくれればそうしたのに、どうしてそんな嘘をついたんだい?」


「私は前からもうストーカーをするな、私に関わるなと散々言ってきたと思いますが?何度も言ってもそうしなかったあなたのどこを信じればいいのですか?」


「ストーカー?一体何を言ってるんだい?俺は君の彼氏なんだ、君と一緒にいるのは当たり前だろう?それに……」


 そう言ってこいつは一拍置いて、





「俺に黙ってそこの男の家に、なんで住んでいる……?





 その言葉に、ついに白戸さんの目が大きく開かれたのだった。



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