第23話
(side 白戸朱火)
「な、なんでその事を……」
「俺が白戸のことで知らないことなんて何一つないよ。当たり前じゃないか」
私はその言葉に思わず鳥肌が立ってしまった。
気持ち悪い。怖い。
きっと目の前のこの男は、私のこの怯えた姿を見ても自分に対して怯えているだなんて一片たりとも考えていないのだろう。
前の時だって最終的に近くにいた人が警察を呼んでくれたお陰でこの男が補導されて私の目の前から消えてくれただけで、こいつは諦めていないのだ。
いや、彼の頭の中では私と付き合っているらしいからそもそも諦めると言う考えはないのだろう。
「あぁ、やはりその男に脅されてるんだね。かわいそうに。ほら、すぐにこっちに来て。助けてあげるよ」
私の怯えた顔をそう解釈したんだろう、私の心臓を更に逆なでしてきた。
やばい、吐きそう。
私は思わず両手で口を押えた。
そして震える手で勢登さんの袖をつかんだ。
「……勢登さん」
「……」
この男のせいでまた勢登さんに迷惑をかけるのが申し訳なく感じる。
すると勢登さんはさっきまで男の方を向いていた顔をこっちに向けてきた。
「……勢登さん」
「任せろ」
「……ごめんなさい、また迷惑をかけてしまって」
「大丈夫だよ。それに、前に警察が来てあの男について少し話すことがあってな──」
そう言って勢登さんは私に顔を近づける。それだけで私の心はさっきとは一転してバクバクし始めるが彼の真剣な表情を見てそれはすぐに収まった。
そして彼が続けた言葉に私は絶句した。
「……いいの?」
「……もうそろそろ、俺も答えないとって思ってたし。あいつには申し訳ないけど……」
「……大丈夫だよ」
彼が少しだけ申し訳なさそうに眉を下げる。
でもきっと私があの人の立場だったら──
「私が彼女の立場だったらきっと悔しいって思う。何で私じゃないのって。そしてたくさん泣くと思う」
「……だよな」
「だから、その時は勢登さんが泣き止むまで一緒にいてあげて……?」
「……ああ」
そう言って彼はポケットからスマホを取り出し操作しだした。
そしてそれが終わると勢登さんは私から顔を離し、あの男の方を向いた。
私も彼と同じく目の前の男と決着をつけるために、正面を向いた。
すると男の顔が物凄いことになっていた。憤怒一色だ。
「……お前、俺の彼女に何をしてるんだ……っ!」
「お前の彼女じゃないだろう。少し内緒話をしたってお前にとやかく言われる筋は無いと思うが?」
「は?白戸朱火は俺の彼女だぞっ!?内緒話如きで俺の彼女に顔を近づけられて何も言わないと思うのか!?」
「……はぁ。それじゃあ問うが、白戸朱火はお前と付き合っているのか?」
「当たり前だ」
「だそうだが……し──いや違う。……あ、朱火」
「はい」
「お、お前っ!」
「朱火は誰かと付き合ってたりするのか?」
「ううん。私、今は誰とも付き合ってないよ。まぁ、もうすぐそれも変わるかもだけどね」
私が静かにほほ笑む。それに気づいたのは勢登さんだけで、彼もつられて困ったように笑った。
一方のストーカー野郎はそんな私たちの表情なんか見る余裕がない程に怒っていた。
「……お前、俺が配慮して白戸のことを苗字で呼んでいるというのに……俺の彼女を名前で呼ぶなっ!!」
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