第20話

忘れてました。

さーせん。


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 今日の授業を一通り終え、適当にサークルの部室でゲームをした後、俺はまだ残ると言う彼らをよそに、先に帰ることにした。


「ただいまー」


「あ、おかえり。勢登さん」


「……」


 いつものように買い物をしてから家に帰ると、やはりと言うべきか、行っていた作業を中断して小走りで白戸さんがやってきた。


「あ、勝ってきてくれてありがとう!冷蔵庫にお願いね」


「おう」


「それじゃあ夜ご飯作り始めるから、風呂の掃除お願いね?」


「あぁ」


 俺は靴を脱いでから冷蔵庫に勝ってきたものを入れていく。

 それを終えると次に風呂の掃除を始める。


「……」


 こういった単純な作業をしていると、余計なことを考えなくて済む。

 

「ふぅ……」


 いつもより念入りに掃除をしたせいでかなりの時間を食ってしまった。

 

「こっちは終わったぞー」


 そう言いながら俺は風呂を入れ始めた。すると、


「こっちももうすぐで作り終わるよー!」


 と返事が返ってきた。

 どうやら風呂の掃除に余計な時間をかけて正解だったようだ。偶然だろうが。


 俺はキッチンへと向かい食器などを取り出して、白戸さんの近くに置いておく。


「あ、ありがとう」


「箸とか置いとくな」


「うん。了解。あ、そしたらついでにそこのしょうゆ取ってくれない?」


「おう」


 俺は彼女にしょうゆを渡してから俺と彼女の箸を取り出す。

 と、俺の様子を横目で見ていた彼女が突然フフッと笑い始めた。


「なんだか夫婦みたいだね」


「……」


 突然優しく笑ってから何を言い出すかと思えば……。

 そして自分が言った言葉で恥ずかしがっている彼女を見て、俺は何も言えなくなった。

 頬が赤くなっている。だったら最初から言わなくてもいいのに。


「むぅ、その顔。最初から言わなくてもいいとか思ってるでしょ」


「む」


 何故バレた。


「分かりやすいよ。顔に出てる」


「……よそ見してていいのか」


「あっ!?ヤバい!?」


 そう叫んだ彼女は慌てて視線を作り途中の料理の方へと戻る。

 何とか誤魔化せた……。



 その後すぐに料理が完成し、一緒に食べ始めた俺たちは、今日学校であったことの話に花を咲かせる。


「今日また告白されたんだよー?」


「……それを毎度俺に言われても」


「いいじゃん。それに、私が告白する前と後で反応が変わってるし」


「……」


「図星のときいつも黙るよねー」


「うっさい」


「それで、私にはもう好きな人がいるって断ったんだけど……やっぱりというべきか、なんか食い下がってきてさー」


「……なぁ、毎度思うんだがそれ俺が聞く必要あるか?」


「ある。それで少しでも心が揺らいでほしいから」


「はたから見るとお前、あれだぞ?好きな人の気を引かせるために別の男を利用してる下種女みたいな感じになってるぞ?」


「……そのつもりはないんだけどなぁ」


 ハハ、と弱く笑う彼女。どうやら彼女自身もそう思っていたらしい。


「次からは気を付けるよ……」


「おう。それに、なんか告白されたのを自慢しているようにも聞こえるしな」


「私がこんなことを話すのは勢登さんだけですぅー。それに、自慢してるわけじゃありませんー」


「ふん、どうだかねぇ……?」


「あー!その顔絶対疑ってるでしょー!私が信頼してるのは勢登さんと母さんたちだけですぅー!だからこんなのは無闇矢鱈に人に話しませーん」


 少しだけからかうと、彼女はいつもの調子に戻ったようだ。

 やはり白戸さんはこれくらいの愛嬌があったほうがいい。


「あ、そうだ!今度またどこかに遊びに行こ!遊園地とか!」


「……いいけど」


「やった!そしたらバイトのシフト組みなおそっかなー……」


 嬉しそうな笑顔でウキウキしている彼女を見ながら、俺の中で何かが確実に動いているのを感じた。


 それがなんなのか、見当をつけるのには容易かった。

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