第15話
「…………」
朝。
起きるとそこには既に白戸さんの姿が。足元を見るとそこにはまだ寝ている祖野沢が。
対照的な姿だった。
「あ、白戸さ─────」
「朝食はそこに作っておきました。では」
「お、おう……」
彼女は俺に有無を言わさせず、俺を一目見ただけですぐに目を逸らした。
それは最初にあった時の彼女と同じ感じだった。
そんな彼女は朝食が置いてあるところを指さした後、さっさと家を出てしまった。学校に行ったのだろう。
「…………」
しかし、俺はすれ違った時に見た彼女の悲しそうな顔が何故か脳裏にこびり付いて離れなかった。
「ん?あ、おぁよう」
すると後ろから声がした。
「……祖野沢。起きたか」
「あれ、白戸さんは……?」
「彼女ならついさっき高校に行ったよ。お前も行かないといけないんじゃないのか?」
「あ、今何時?」
「7時半。まだ大丈夫だ」
「そ、そっか……よかったよ」
「朝食は白戸さんが作ってくれた。今持ってくるからちょっと待ってろ」
俺はその場から離れて朝食が置いてあるところまで行った。そして二人分のを取ってから祖野沢がいるリビングにある机に置く。
「「いただきます」」
そして二人で食べ始めた。
やっぱり白戸さんが作ってくれたご飯は美味しい。それは間違いないのだが、どこか薄いような、いつもより味を感じなかった。
これは俺の味覚の問題なのか……?
「白戸さん、料理上手だったんだね。美味しい」
「そうだな」
「いつも遠峰はこれを食べてるんだろう?いいなぁ……」
「お前なぁ……」
「ま、いいや。取り合えず食べよっか」
食べ終わった俺たちは食器を食洗器に入れ、祖野沢と俺は大学へ行く準備をする。
「あ、そうだ遠峰」
「ん?」
「今度から名前で呼ぶから」
「……は?」
「それじゃあいこっか、勢登」
「…………」
俺は何とも言えない気持ちを抱えたまま、祖野沢と一緒に家を出た。
「白戸さん」
「……勢登さん、なんですか?」
「ちょっと話をしよっか」
「…………はい」
夜。
俺が大学から帰ると、既に白戸さんは家に帰っていた。しかし彼女の表情は朝と変わらずどこか影が見えていた。
やはりここは話をすべきだろう。
そう考えた俺は彼女の作業が終わったあたりを見越して話しかけた。
俺は彼女を俺の部屋に招き入れる。リビングで話すよりはこっちで話した方がいいと思ったからだ。
その前に彼女は何か用意すると言って何かをポケットに入れたが……。
「白戸さん」
「……勢登さん。分かってるんです。なんで話をしようって、私に言ったのか。この、急変した態度、ですよね」
「…………」
「私だって、今すぐにでも元に戻したい。でも無理なんです。これ以上、いつもみたいにできない……」
そう言って彼女は俯いた。まるで何かから逃げているかのように、彼女にしか見えない目の前の何かから目を逸らした。
彼女がここで暮らし始める前から、俺は彼女はいつも明るく振舞う少女だと思っていた。
しかしそれは違った。
忘れていた。前に一度か二度、彼女は苦しんでいたじゃないか。
その時の彼女の表情と、今の彼女の表情は一見すると違うように思うが、俺にはそうは思えなかった。
しかし、彼女が一体何に苦しんでいるのか、それは分からなかった。
「…………」
と、突然彼女は深呼吸し始めた。
どうやら覚悟を決めたようだ。
「勢登さん」
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ここまで読んでくれてありがとうございます!
是非この作品の☆と♡を……何卒お願いしますっ!!
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