第13話
「さてと。本題に入りましょう」
と、三人食べ終わってから片付けをし、そしてテーブルで向かい合う形で座った俺たちは本題とも呼べる、祖野沢の暴挙とその関連する出来事など、諸々のことについて話し合うことにした。
「まずさ。遠峰と白戸さんの関係について話してもらうよ?どうして二人は同棲しているの?」
「それは……」
「私たちが付き合ってるからですよ!」
と、俺が事情について話そうとした時、白戸さんから横槍が入った。それも盛大な嘘で。
「それは嘘だって分かるから、本当の理由を教えて」
「でも、それを教えて何になるんですか?関係ない話ですよね?」
「まぁそうだね。だからね─────遠峰」
そう言って祖野沢一旦言葉を止めて、俺の方を向いた。
「私は、遠峰……ううん。勢登のことが好き」
「…………はい?」
突拍子のない祖野沢の言葉に俺は固まった。しかし、祖野沢は俺の様子を知っていてなのか知らないけれど、更に畳みかけてきた。
「だからね?私と付き合ってほしいんだ」
「…………」
当然だが、俺はそれに対して何も言うことはできなかった。まだ頭の中が整理できていないからだ。
薄々そうなのかなという気はしていた。だが、俺としては今後も友達として彼女と関わっていたかったという気持ちが大きい。
彼女との出会いはそれそこ入学直後にまで遡る。
「ねえねえ」
「ん?」
それはまだ授業選択期間と言って、仮授業を体験してから前期に取る授業を決めるという、準備期間の時だった。
俺は既に雅人と知り合っていて一緒に様々な仮授業を回っていたのだが、とある授業にて、突然祖野沢が話しかけてきたのだ。
「君たちってさ、どのサークルに入るか決めてる?」
「えっと……一応は」
「そうなんだ!私にもそのサークルを紹介してほしいんだけど……駄目かな?」
どうやらまだ彼女はどのサークルに入ろうか決めかねていたようで、一番話しやすそうな俺たちに話しかけたのだとか。しかもその時はまだ話せる友達が出来ておらず、どころかどこか疎まれている感じだったらしい。俺には女子の社会というものはよく分からないので何とも言えないのだが。
ともかく、これが彼女との出会いだった。
それから俺たちはゲームサークルを紹介し、彼女もそれに入ることになった。
とまぁこんな感じで彼女とは色々関わり始めたのだが……どうして俺のことが好きになったのか、思い当たるところが全くと言っていい程無いのだ。
告白する人を間違えてんじゃね。
「なんで俺なんだよ。マジで理由が分かんないんだが」
「それは……まぁ今度話すよ」
祖野沢はそう言って少し恥ずかしそうに俺から顔を逸らした。そして改めて俺の方を向いてから、姿勢を正した。
「と言う訳で、私と付き合ってください」
「…………」
いつも飄々としているこいつがこんな真剣になっている……何だか珍しい光景を見ている気がする。だが、その分だけ本気だと言うことなのだろう。そう考えるとますます俺に惚れた理由というのが分からない。
先ほども言ったのだが、俺は彼女とは友達でいたかった。だがそれは勇気を出して告白した彼女に対して失礼極まりないから俺は口に出すことは無かった。
しかし、正直俺の頭の中で誰かと付き合うと言うイメージが湧かない。
それが何でなのかまだ分からないのだが……どうしても女性と付き合うと考えると、明確なイメージができないのだ。それは一度も付き合った経験がないからというのもあると思うのだが。
「むむむ……」
俺が一人考えていると、横でなにやら獣のような、喉を鳴らしたような音が。ちらりとその元を見ると、俺の隣で白戸さんが唸っていた。それはまるで悔しがっているような─────だがそんな表情もすぐに消え、それから俺の方を向いた。
「勢登さん……!」
「……なんだ?」
今度は白戸さんが俺の名前を呼んだ。まだ祖野沢の気持ちに答えてないのに。
─────────────────────────────────────
面白かったら是非この作品のフォロー、♡、☆をお願いしますっ!
モチベーションが上がるのでっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます