第12話
「…………」
「…………」
「…………」
今の状況について、簡単に説明しようと思う。
俺と白戸さん、そして祖野沢の子の三人で机を囲んで……黙り込んでいる。
何とも気まずい状態だ。誰か助けてほしい。
「あの」
と、こんな気まずい状況で白戸さんが口を開いた。
「まず最初に聞きたいんですけど、祖野沢さんって、彼氏とかいるんですか?」
「私?いるわけないじゃあないか。それは白戸さん、君が一番知っているはずでは?」
「そうですね。私も告白されても好きな人がいるって言って断ってますし」
「ははは」
「ふふふ」
俺はきっとこの会話に入ってはいけないんだろうと、この数回の会話で察した。なので、険悪な様子の二人を一旦置いて俺はさっき帰って来た時に冷やしておいた泥酔いを取りにキッチンに向かう。
そして泥酔いを開蓋し、一気に飲む。取り合えず目の前の事から現実逃避をするために。強い炭酸が俺の口の中を刺激し、爽快感を与える。
俺の体全体にその快感と19.9%のアルコールが巡る。しかし俺はアルコールに強い体質なので、これ一本だけで酔うことは無い。まぁ酔い始めるのは今までのを平均して考えると4本目からかな。
一本目が飲み終わった俺は空になった缶をごみ箱に捨てると、もう一本冷蔵庫から取りだしてそれを開けた。
一人晩酌インキッチン。
ついでにつまみも取り出してっと……これで完璧だ。塩辛うんま。キムチうんま。泥酔いが進む進む。今日の夜ごはんはもうこれでいいのではないだろうか。
「……まずいな」
しかしすんでのところで俺はハッとなって止まった。これではあの二人に怒られてしまう……!
俺は塩辛に伸びていた箸をグッと止めてから静かにラップして、冷蔵庫にしまった。ついでにキムチも。そして買ってきた三人分の冷凍パスタを温め始める。
ドンッ!!
「うおっ……」
『……!!』
『……!?……、……!!』
そうしていると、だんだんと二人の声が聞こえ始めた。言い争っている声だ。
どんどんヒートアップしていっているようで、二人とも興奮してきているようだ。
今この状況であそこに行ってしまうとそれに巻き込まれて色々とめんどくさいことになりそうだ。もう少しだけ待っておこう。
あ、塩辛食べよ。
そして二人の話し合いが一段落ついたところで俺は温めたパスタを持っていく。ついでに酒とジュースも。二人を落ち着かせるためなのだが……もう手遅れかもしれないけど、必要だろう。
「落ち着いたか?二人とも」
「誰のせいだと……」
「ほんとだよ」
「いや俺関係ないだろ」
本当に。
「私たちが何について話してたのか、聞こえてましたよね?多分あそこにまで聞こえていたはずですよね?」
「い、いや……俺イヤホンしてたから。マジで聞こえてなかった」
ちなみにこれはガチである。おつまみをつまみながらただ酒を飲むのはなんか面白くなかったので動画を適当に見ていたのだ。
ちなみに見ていた動画はスラビラのコンボ解説動画である。
「まぁ、そこは後で追及するとして」
「するなよ」
「私たちが何で言い争っていたのかはまぁ、今は別にいいの」
「え、そうなのか」
「一応今日だけだけど祖野沢さんがこの家に泊まることは私が許可を出したわ」
「……お前の家じゃないんだけどな」
「それで今日の夜限りだけど、取り決めみたいな一応のルールをさっき話してたんだけどね」
「そか。まぁいいわ。取り合えず冷める前にこれ食え」
「そうだね。これ食べよっか。あ、私が買った酒ある?」
「ほれ」
「それじゃあ私コップ持ってくるね」
そして白戸さんがコップを持ってきて、それぞれにそれぞれが飲みたいものを注いでから食べ始めた。
「最近のコンビニパスタも侮れないね」
「だろ?祖野沢ももっとこういったものを買えばいいのに」
「私は自炊した方がいいというか、実家暮らしだからね。弁当を作ってもらってるよ」
「そういやそうだったな」
こいつと飯を食う時いつもサークルの部室で食べるのだが、俺と雅人がコンビニで買ったものに対し、彼女はいつも弁当だった。
なんでだろうななんて一時期思っていたが、時間がたてばそれはもう“当たり前”となる。なのであんま気にならなくなったのだ。
「美味しい。美味しいけど……私が作った方が絶対に美味しいのに……」
そして白戸さんはこれを食べながら小さく愚痴をこぼしていた。最初まずいだろうと思っていたのが意外と美味しくて、それが悔しいのだろう。
小さな頬をぷくりと膨らませていた。
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遅れてすみません……。
ネットが繋がらないとこに行ってました。
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