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※
――本当は奈美夜様はシェフに全部作らせたんですけどね。唯一手伝ったのは、重箱に詰める作業くらいですよ。おっと、今のは彼には内緒で。
ナレーション(廿浦)
「ごめんねナミヤちゃん、疑ったりなんかして…! 余りにも豪華なお弁当だったからつい…――!」
「まあ、聖様ったらぁ!」
「じゃあ、さっそく食べようか? あっ、でも。生徒と教師がこんなところで一緒にお昼ご飯を食べてたら怪しまれないかな?」
「聖様、それは心配ご無用ですわ。さあ、周りなんか気にせずに一緒に食べましょう!」
「ああ、そうだね……?」
二人はそう言ってお弁当を仲良く食べ始めた。
*
彼の言った大丈夫とは私が出口で見張りをしているからです。誰かが近づけばお得のスタンガンで気絶させてやります。そう言う風に、体にインプットされて刷り込まれてますから。因みに二人は出会ったあと、同じ学校で生徒と教師である事を知りました。まさに奇想天外って奴ですな。(廿浦・談)
「わぁ、この卵焼きなんか美味しいな! 俺、卵焼き大好きなんだよね! ナミヤちゃんは将来きっと良いお嫁さんになるよ!?」
「せっ、聖様…――!」
その言葉に自然と顔が赤らめた。しかし、1つ不安が過る。彼は奈美夜が男の娘とは知らない。むしろ、見た目から女の子と勘違いしてる。ついでに着ている制服もベタに女子用の制服だったからさらに彼を混乱させた。未だに真実を言えないまま、奈美夜は大好きな彼のお嫁さんと言った言葉に妄想の中で喜びつつも本心では暗い気持ちになった。
「あっ、あのね。聖様、わたくし貴方に聞いて欲しい大事なことが……」
「ナミヤちゃん――」
彼は突然、じっと奈美夜の顔を見つめてくると名前を呼んだ。そして、ゆっくりと顔を近づけてくると、そのままキスをしようとしてきた。
「昼間からこんな気分になるのはいけない事かな?」
「せっ、聖様…――!?」
「ああ、ナミヤちゃん……! 俺の世界で一番可愛い
『グワアアアアアアアアアッツ!!』
「きゃああああああっ、聖様ッ!?」
その瞬間、
「まったく毎回毎回懲りずにこのケダモノは。ホント油断も隙もあったもんじゃないですね。この廿浦は、主君である奈美夜様のお側をどんな時も、一時も離れませんのでご安心下さい。やはりこのままヤツの息の根を止めてやりましょう」
「つづうらー! 貴方なんてことするのよ!? 何も気絶させなくてもいいじゃない! せっかく彼と良い感じにキスできると思ったのに邪魔しないでよ!?」
「フッ、笑止。不潔な考えはおよしなさい。それに、お坊ちゃまにはもっと相応しいお方が現れます。このような階級の低い獣に、その唇を容易く奪わすとはもってのほか! 目を覚ましなさい!」
「なっ、何よー! つづうらのバカァッ!!」
「コラお待ちなさい!」
奈美夜は泣きながら重箱の蓋を投げつけると、保健室から飛び出して走りながら出て行った。
「――ふぅ、やれやれ。まったく飛んだ跳ね返りのじゃじゃ馬ですね。こっちの身にもなって下さいよ」
廿浦は舌打ちをするとタバコを一本咥えて、それを吹かしながら気絶している聖矢をジッと見た。そして溜め息をつくと、めんど臭そうに彼をベッドの上に寝かせて立ち去った。
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