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「まあ、なんて美しいお姿。もっと近くで見れないかしら?」
そう言って塀の隙間の下の空いてる穴から顔を覗かせた。庭にいた青年は金髪の髪を風に靡びかせながらバイオリンを奏でてた。そのバイオリンの美しい音色に誘われると近くの木々にとまっていた小鳥達が自然に彼の肩にとまってきた。
まるで神秘的な光景だった。その光景に思わず、うっとりした。そして、壁に両手をついて前のめりで見とれた。するといきなり周りの壁が崩れてそのまま庭の方へと派手にずっこけて倒れた。その物音に彼は反応して振り返った。
『誰だッ!?』
その瞬間、二人は出会った。そして、お互いの美貌に見とれると我を忘れて呆然と立ち尽くした。沈黙の間見つめあうと不意に我に返った。
「わっ、ご、ごめんなさい……! 貴方の顔が見たくて、わたくしとした事が、つい庭の方を勝手に覗いてしまったの……!」
「――くすっ。とんだおオテンバ子猫ちゃんだねキミは?」
「まぁ……!」
そう言って彼は金髪の髪を風に靡かせながら優しく微笑んだ。そして、不意に差し出された手に掴まると彼の手をとって見とれた。
「お美しいお嬢さん、君の名前は?」
「えっ、えっ、えっと……! 奈美夜です! わたくしは橘奈美夜ですわ……! あっ、貴方様は……?」
「俺は西園寺聖矢。今日、引っ越してきたばかりで友達がいないのさ。でも、さっそく見つけた。君と俺は今日から友達だ――!」
――二人はこうして出会った。冷やかすつもりで見に行ったらミイラ取りがミイラになった。これはそんな二人の出逢いから始まり。恋に落ちて、恋人同士になって色々とすったもんだと苦難を乗り越える二人のラブストーリーである。まさに聞いてるこっちが砂を吐くほどのそれはそれは激甘っぷりを見せつけられ――*(ナレーション・廿浦)
翌日、聖矢の姿は学校にあった。彼は保健室で保健師の仕事をしていた。そこに奈美夜がお弁当が包んである豪華な風呂敷を手に持って現れた。
「西園寺先生!」
「あ、ナミヤちゃん!」
「お昼ごはんまだ食べてないと思ってお弁当を作って参りましたの。一緒に食べませんか?」
「わ~! ナミヤちゃんの手作り弁当なんて、今日は縁起がいいね。よし、じゃあ、二人でたべようか?」
「ええ、そうしましょ!」
奈美夜はそう言って返事をすると、彼の前で豪華なご馳走が入ってる重箱の蓋を開けてズラリとテーブルに並べて置いた。
「うわ~っ! 凄いご馳走だね、本当にキミが作ったの?」
「まあ、聖様ったらぁ。このわたくしを疑っておいでですの? わたくしが聖様を思って、愛情を込めて作ったお弁当ですわ! ほら見て! 指だってこんなになって…! それなのに貴方様ったら酷いわ…!」
そう言って奈美夜は、いかにも手料理して指を沢山切りましたと言わんばかりに手を前に翳してみせた。指先には絆創膏がぐるぐるに何ヵ所も巻かれていた。健気な瞳でか弱くウルウルと泣かれると、彼は半笑いしながらも頭を優しく撫でた。
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