第96話 顔合わせ②

 馬車の移動中に、チルとピコリを奴隷から解放して暫くすると、馬車がペイトン侯爵邸へと到着した。奴隷市場の目玉商品だったデボラを迎えれば、奴隷市場で欲しかった人材が揃う。


 玄関前に馬車を停めると、使用人でなくマリベルが私達をことを待っていた。


「マリベル様、大変お待たせしました」

「いいえ、私が出迎えたいと思っただけです。さぁ、部屋へ参りましょう」


 マリベルの案内で部屋へ向かうと、ペイトン侯爵夫妻とデボラが席に着いていた。私に気づくとデボラは立とうとしたので、手で制止してから挨拶をする。


「遅くなり申し訳ありませんでした」

「気にすることはない、手続きは階級の順だから仕方ないことだからね。デボラ、先程説明をしたけど、彼女がハルカ.ファミリアさんで君の購入した方だよ」

「デ、デボラです。ご存知の通り私はヴァンパイアですが、隷属の契約があるので御主人様を傷つけることはございません。どうかよろしくお願いします」

「ハルカだよ。私は奴隷として扱うつもりはないから安心してね」


 挨拶を交わすと、ガリーがデボラに私のことを紹介すると、席を立ち緊張した面持ちで挨拶をしてから深く頭を下げた。チルとピコリの時とは違う緊張に見えるのは、ヴァンパイアとしての本能なのかも知れないね。この場で同族だとは言い出せないので、ファミリアへ戻る時にでも説明しようと思った。


「では、奴隷印を更新するから術者を呼ぶよ」

「よろしくお願いします」


 自分でもできるけど、この場ではペイトン侯爵側に全て任せておく。ガリーが机を『コン、ココン』と叩くと、ドアが開くと術者が入室してデボラに近づいた。


「新たな契約者様はこちらへ」

「はい」

「私が奴隷印を発現させますので、魔力を流してください」

「判りました。お願いします」

「〚契約コントラクト〛!」


 術者が契約と唱えると、デボラの胸元に奴隷印が現れたので魔力を流すと、奴隷市場の時と同じように『スゥー』と消えていった。


「これで、契約者の更新が終了しました。私はこれで失礼します」

「うむ、ご苦労だった」


 術者はガリーに更新が終わったことを伝えると、夫妻に一礼してから部屋を後にした。


「私の代わりにデボラの購入だけではなく、奴隷印の更新までしていただき、誠にありがとうございました」

「ハルカさんと繋がりが持てて嬉しい限りなのよ?少しだけアンティーク家具の納期で優遇していただけるでしょ?」


 今日の礼を伝えると、パトラが口を扇で隠しながら『サラリ』と要望を伝えてきた。そのくらいはお安い御用なので即答する。


「お任せください。パトラ様からのご注文は最優先でお受け致します。今日はありがとうございました」


 その後は、ペイトン侯爵家に見送られながらファミリアへと帰宅したのだった。

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