第82話 リクルト商会にて

 5人でグローニャにあるファミリア商会に移動すると、アネロが出迎えてくれた。どうやら並列思考セレブロが〚以心伝心〛で連絡を取っていたみたい。


「ハルカ様、おはようございます。並列思考セレブロから連絡を受けたので、リクルト商会には伝えておきました。リリアという者をお呼びください」

「ありがとう。商会の方はどんな感じ?」

「グローニャから王都務めに向かった貴族が、アンティーク家具の自慢をすることで、売り込まなくても噂になってるようで、そろそろ王都から注文が来るかも知れません。そうなると忙しくなるでしょうね」


 貴族というのは、人を蔑むことしか能がないと思ってたけど、意外な宣伝効果をもたらしてくれたんだね。王都から注文が来るとどうなるか、一連の流れをアネロに確認をする。


「王都から注文が来た場合は、納品まではどんな流れになるのかな?」

「グローニャから王都へ納品することになると、運搬する必要があるので運輸商会に頼むことになりますが、かなり高額な運搬料がかかるのと、盗賊の襲撃により奪われるリスクがあります」

「直営店を出すのが1番良いってこと?」

「それが、なかなかそういう訳にもいかないです。店を構えるにも莫大な資金が必要ですから」


 販売網を拡大すると得られるお金と同時に、先行投資が必要になるんだね。これは国造りにもいえることなので、事業拡大をすることで勉強するのも良いね。


「良い人材を迎えられたら、王都へ直営店を出してみよう。本店を国と考えて、直営店を大使館に見立てて国造りの勉強をするよ」

「流石はハルカ様、それなら交渉に長けた者も探すと良さそうですね」

「うん、そうするよ。じゃあ、行ってくるね」

「行ってらっしゃいませ」


 アネロに見送られながら商会を後にして、馬車は使わずに徒歩でリクルト商会を目指した。すれ違う人達を片っ端から鑑定して、面白そうなスキルを探してたけど、なかなか見つかる訳もなくリクルト商会に到着した。


 ドアを開けて建物内へ入ると、トラパーネが受付に声をかけてリリアを呼ぶように伝えると、直ぐにリリアがやってきた。


「ハルカ様、お越しいただきありがとうございます。アネロの後任で従属契約課を任されているリリアと申します」

「ハルカ.ファミリアです。アネロの後任なら優秀なんでしょうね?あなたの引き抜きも可能なら嬉しいな」


 私が軽く微笑みながら軽い冗談を言うと、リリアは頬を少し赤くしながら返事をした。


「ハルカ様が望まれるのなら、喜んで仕えさせていただきます。アネロから素晴らしい方だと聞いてたので、お会いするのを楽しみにしたました」

「そうなんだね。じゃあ、その辺りも含めて色々と話をしましょうか」

「はい、お部屋へ案内しますのでこちらへ」


 意外な返事に少し驚いたけど、多分リップサービスだろうね。別室へ移動する間にリリアを鑑定しておくことにした。


(アネロ後任ってどんな娘なのかな?)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る