第72話 ハルカ、地竜に挑む

 その場に居た全員の背筋に悪寒が走った……


『ハルカ!ヤツが現れた。直ぐに退避だっ!』


 慌てて撤退を告げる並列思考セレブロ、アニエラ達と戦っていた飛竜フライドレイクは、気配を感じた時点でこの場から逃げ始めていた。


「3人は直ぐに退避してくれる?私は空間魔法があるから、少しアレと戦ってみるよ」

「かしこまりました」

「やる気なの?」

「ばっ、馬鹿野郎、あんなのに勝てるわけ無いだろう!」


 私が眷属3人に退避するように指示すると、トラパーネは素直に従ってくれたけど、アニエラとエリカは否定的だった。


「勝てるとは思ってないけど、どこまで戦えるか試すだけだよ。退避は命令だから従ってね」

「くっ……」

「判ったけど……、絶対に無理をしちゃダメだからね?ダメだと思ったら逃げる判った?」

「うん」


 エリカは無言で下を向き、アニエラは念を押してから渋々退避を始めた。


『さぁ、やってみようか!並列思考セレブロは防御を任せるよ』

『はぁ~、判ったよ』

『ふふっ、ありがとう』


 私は過去になにもできずに逃げ出した地竜アースドレイクへ戦いを挑んだ。


 先ずは、〚空間魔法〛で背後に回って、波動の標的にならないように正面を避ける。そして〚翼刃ウイングブレード〛を展開してから背中へ攻撃をしかけてみた。


「少しはダメージ入ってよ〚射出ショット〛!」


 無数の刃が地竜アースドレイクの背中を襲う。


『シュバババッ!』

『カッ、カツ、カツン』


 今の私なら多少のダメージを与えると思っていたのに、傷一つ付けることができなかった。


「ははっ、硬すぎだよ……」


 堅固過ぎる地竜アースドレイクに驚いてると、『ブン』という音と同時に尻尾が目の前に迫ってきたので、並列思考セレブロが躱してくれたと思った瞬間、大きく開いた口が襲いかかってきた。この巨体からは考えられない素早い動きに、焦りながらも転移で距離をとった。


「なんてスピードなのよ!あの巨体なら遅いと思うじゃない!」


 想像した以上の動きに文句を言ってると、左足に激痛が走ったので確認すると、左足首が食いちぎられていたのだった……


「っ……、躱しきれなかったのね。次の攻撃が通らなければ逃げるしかないかな?」


 そう言った後に、〚翼刃ウイングブレード〛に炎を纏わせて白光するまでの高温状態にしてから、もう1度背後に回って射出してみた。


『シュバババッ!』

『ガッ、ガガガガガガッ、ズブッ!』


「グルァアアアアッ!」


 堅固な鱗を貫通したような音が聞こえると、遂にダメージが通ったようで、周囲に『ビリビリ』と感じるような雄叫びあげた。


(やった、私の攻撃が通じたよ!)


 地竜アースドレイクにダメージを通したことで、ほんの少し勝てるかも知れないと思ったのだった。

 

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