第68話 トラパーネの怒り

 私達がエルフの隠れ里に着くと、少数と多数のグループに分かれて到着を待っていたようだったので、私はエルフ達に返答を求めたの。


「みんな集まってるんだね。この3日間で答えは出たのかな?」

「「私達は移住を望んでいます。仕事を与えられれば従事します」」


 多数のグループが先に希望すると返事をした。そのグループは比較的若いエルフが多いようで、新たな環境での生活に期待をしてるようだ。そして、残る少数のグループの方へ目をやると、4人の長老で1番下と思われる者が、仕方ないといった表情で返事をする。


「我々も希望します」


 明らかにヤル気がない返事に、トラパーネが『ピクリ』と反応する。そして少数のグループに対して、ファミリアに不要だと切り捨てた。


「ハルカ様のファミリアには、そのようなヤル気のない者は不要です。この場に残って苦しい生活を送ればいい」


 希望すれば、無条件で迎えられると思っていたのか、リオルドは切り捨てられたことに怒りを露わにして、多数のグループに向かって訴えかけるが、誰も口を開かずに静まり返る。


「なっ、我々が居なければ、誰がエルフをまとめるんだ?おい、お前達!私が居なければ不遇な扱いを受けるかも知れないんだぞ?」

「……」

「おい、私の指導があったから生き長らえたんだぞ?その恩を忘れたのか!」


 なにも答えないことに、リオルドはさらに声を荒げたけど、誰もなにも答えない。自分の意志を伝えようとしない状況に、アネロは業を煮やして多数の同胞達へ声をかけた。


「そのように自分達の意志を伝えないと、新たな環境ではやっていけないわよ?これからは自分の意志を伝えるようにしなさい」


 アネロの言葉を聞いて、1人の女性が前に出て話し始めた。


「……、嫌だった。長老や兵士だけ食べ物の苦労もせず、私達の想いを無視して夫婦を決められ、奴隷ほど酷いとは言わないけど、自由のない生活を虐げられて嫌だったわ!」


 話す途中からは声が震えだし、涙を流しながら話す姿を見て、周りの女性エルフ達も同じように涙を流した。今の話を聞くと長老達のしてることは、力で支配するという酷いものだった。


「よく言ったね。私はそんなことはしないと誓うから安心して欲しい。そして、あなた達はここに残ってもらうね」


 長老達のグループを受け入れないと伝えて、残りのエルフ達を連れて帰る為に、私が転移魔法陣を設置しようとすると、リオルドが声をあげる。


「くそっ、アネロ以外を殺せ!そして奴等の暮らす場所を我らのものとするのだっ……」


『バシュ、バシュンッ!』

『ボト、ボトボトッ』


 リオルドが命令すると、トラパーネの〚射撃ショット〛によって、リオルドを含めた全ての男達の首を刎ねていた。


「ハルカ様、生きる価値のないゴミどもを処分致しました」

「あっ、そう……ありがとう。転移魔法陣もできたからファミリアへ戻ろうか」

「かしこまりました」


 この時エルフ達は、決してトラパーネを怒らせてはならないと理解しながらファミリアへと向かったのだった。


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