第62話 エルフの受難

「私の種族であるエルフを救って頂けませんか?」


 私と眷属は知っていたけど、アネロの口からヒューマンではなくエルフである告白と、そしてエルフを救って欲しいと頼んできた。


「やっと、自分の口からエルフだと言ってくれたね。救って欲しいとのことだけど、詳しく説明してくれるかな?」

「えっ、はい、かしこまりました。私の種族エルフは……。」


 私の言葉に少し驚いてから、エルフの特徴と現在おかれている厳しい状況を説明してくれた。


 エルフはその美しい容姿と、吸血鬼ヴァンピールほどではないけど長命な種族で、大人に成長するとその容姿は衰えることはありません。ただ、長命種族であるが故に、その繁殖能力はかなり低く、エルフは1度出産すると50年は子ができません。獣人以上に美しい容姿と、その希少種族ということを理由に、闇ギルトを通じてエルフ狩りをして我が物とされ、ヒューマンに犯され身籠り、混血となるハーフエルフが生まれて、純粋なエルフはごく僅かとなってしまいました」


 アネロの説明を聞いて、権力を持つヒューマンに怒りを覚えた。己の欲望の為なら残忍なことを平気で行うその性質は本当に厄介だ。そんな話を聞いて見過ごすことなんてできないので、私にできることを聞いてみた。


「そんな酷いことが……、私にできることは何でもするから、遠慮なく言って欲しい」

「ありがとうございます。囚われたエルフを解放するのは、獣人と同じかそれ以上に厳しいと思いますので、先ずは隠れ里に居るエルフを保護して欲しいです」


 アネロがエルフの隠れ里があると教えてくれたので、エルフ側が望むのなら、ファミリアで住む場所を提供して保護しようと思った。


「判ったよ。私をエルフの隠れ里へ連れて行って欲しい。そこで話し合いをして望むのなら全員をファミリアに迎えるよ」

「あ、ありがとうございます……ありがとう……うっ、うわぁ〜」


 エルフであることを隠し続けながら、自分の危険を顧みずに僅かな収入で隠れ里を支援していた。その緊張感から少しだけ解放されたことで、アネロは泣き崩れた。


「辛かったんだね。もう大丈夫、私は弱者を絶対に見捨てないよ」


 アネロに言葉をかけると、そのまま抱きしめてから、その場に居る全員に向けて、エルフの隠れ里へ向かうことを告げる。


「大至急、私はエルフの隠れ里へ向かうね。パーネとアニーは残って、不測の事態があれば頼むね。隠れ里への案内役のアネロ以外には、エリカとメドサンを連れて行くね。直ぐに出発の準備をするよ」

「「OK!」」

「「かしこまりました」」


 アネロからエルフの悲劇を聞いて、私達はエルフの隠れ里へと向かうことにしたの。

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