第25話 獣人との出会い
私が絡んで来た輩を一掃した後は、再びスラム街を進んで行く。
(これで無駄に絡んで来なければ良いけどね)
居住区域を目指していると、不思議な感覚が脳裏をよぎったので、その感覚がした方向へ顔を向けると、『頼む!』と聞こえた気がした。
理由は判らないけど、私の身体は『頼む!』の言葉に反応して誘導されるように動いたの。
「行かなきゃ!」
「お、おい、ハルカ!どこへ行くんだよ!」
私が突然声をあげた後に、反転して居住区域とは違う場所へと移動すると、同行していたエリカが声をかけて止めようとしたけど、トラパーネがエリカの腕を掴んで静止した。
「エリカ!ハルカ様は何かしらの理由があって、動かれているのです。眷属である私達は後に続けば良いのよ。止めるとすれば、ハルカ様が間違った行動をした時のみよ」
「目的地と違った所へ行くんだそ?止めるべきじゃないのかい」
「違うわね。目的地はハルカ様が決めるんだよ」
トラパーネはエリカにそう言った後は、会話を打ち切って私の後を追いかけた。アネロも私の後を追い始めると、エリカは愚痴を言ってから後を追ったのだった。
「チッ、パーネはハルカに甘すぎるんだよ!」
私は感覚を信じてスラム街を進むと、泣き叫ぶ声が聞こえてきたので、周りの目を気にせずに全速力で声の下へ移動して、その光景を見た瞬間に全身の血が沸騰するような怒りを感じた……
目の前には、血まみれの獣が身を挺して必死に何かを守っているのに対して、数人の男達は容赦ない攻撃をしていた。私は獣を守る為に空間魔法で転移して間に入った。
「お前達、何をしてるの!」
言葉をかけたけど、1人の男が振った鞭が私の頬をかすめる。
『バチッ!』
「っ……何をしてるの聞いてのよ!」
「あん?そこのクズ獣人が、俺達の商品を盗んだから回収してるんだよ。どかねえとお前も同じように血祭りだぞ」
血まみれになっていたのは獣人で、男達の商品を盗んだと言っていた。私はその事が本当かを確認する為に獣人に話しかけた。
「アイツの言う事は本当なの?」
「ち、違う……私の子供を攫ったから取り戻しただけ……子供は商品じゃない」
「劣等種が言うじゃねえか!獣人なんざ愛玩になる為の種族だ。生まれた時から商品なんだよ!」
男の言葉を聞いた瞬間、私はソイツの首を刎ねていた。仲間が殺された事で、残りの男達は身構えたけど、私の後を追いかけていたトラパーネが、私の頬に傷が付いてるのを見た瞬間、手にした大剣を振り抜いて真っ二つに切断した。
「ハルカ様、お怪我を?」
「こんなの直ぐに消えるよ。それよりこの人を治療したいんだけど、ポーションは持ってない?」
「持ってません。私達には不要な物なので……」
「アネロと一緒にポーションを買ってきて欲しいんだけど」
「かしこまりました」
トラパーネにポーションを頼んで、待ってる間に大怪我を負った獣人の話を聞こうとすると、獣人は大きな身体の懐から、小さな子供が現れて私に対して身を挺して守ろうとしたのだった。
「ママを虐めないで!」
私はその姿を見て涙が溢れた。そして微笑みながら近寄ってある名前を伝えると、私は悪者ではないと安心してくれたのだった。
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