第65話 出入国審査
出入国審査と言っても、インビエルノ王国からの出国審査は簡単なもので、出国申請書を提出するだけでほぼ素通り出来るみたい。
一方、レアルコンプレト王国への入国審査はかなり厳しい。不法な移民を防ぐ為に、疑わしい者は入国を拒否するからだ。豊かなレアルコンプレト王国へ、安定した生活を求める者が非常に多い事が、大きな問題になってるようなの。
私達の荷馬車も出国審査は簡単に通れたけど、厳しい入国審査を待つ列が進まない為に、ずっと待つ事しか出来なかった。進まない事が心配になってきたのでエリカへ〚以心伝心〛で確認をしてみた。
『これって今日中に入国審査を受けれるの?』
『厳しいね……審査が終了したら、列に並んだまま一晩を明かす事になるかも知れないね』
『馬車で一晩なの?転移で帰っても良い?』
馬車に乗ったままで一晩明かすとか言われたので、ファミリアへ帰っても良いかを確認する。だって、『フカフカ』したベットでゆっくりと寝たいんだもん。するとエリカからため息交じりの返事が帰ってきた。
『はぁ~、あのねぇ……あたいとルカを置いて、ハルカだけがファミリアへ戻ってゆっくり寝るのかい?ハルカはそんな薄情な主なのかい?』
『うっ……一緒に帰る?』
『御者がいない荷馬車なんて、誰かに持って行かれちまうよ?』
全員で帰ると荷馬車を失う事になる。だからといってエリカだけを残すなんて、薄情な事は絶対に出来ないので残る事にした。
『ごめんなさい……荷馬車に残るね』
『判ってくれればいいんだよ』
結局、レアルコンプレト王国の入国審査は、日が沈む頃に審査が終了したので、私達は荷馬車で一晩を明かす事となった。流石に荷馬車の中でお楽しみタイムをする事は出来ないので、静かに眠って翌朝を迎えたの。
日が昇ると審査が再開されると、昼頃になってようやく私達の順番が回ってきた。
ここからは『できる女』ルカの出番だ。
「こちらが入国申請書です」
「ふむ、ファミリア商会、新しく商会を立ち上げて調度品を販売しにきたんだね?」
「はい、自前で工場を建てて調度品の製造販売を始めました。こちらが調度品になります」
ルカは荷台に回って、私が作ったアンティーク風の調度品を審査官に確認してもらう。
「ほぅ、これは素晴らしい!これは我が国でも売れそうな逸品だね。商会長が居るのなら挨拶をしたいのだがいいかな?」
「はい、紹介致します」
(えっ、紹介って……ヤバイじゃない!)
私は〚万能感知〛で外の会話を聞いていたので、ルカが審査官を連れてくる事を聞いてテンパってしまう。
『コンコン』
「商会長、審査官が挨拶をと言われてます」
(ええい、当たって砕けろだ!)
「構わないわよ」
『ガチャ』
「ご機嫌よう、私がハルカ.ファミリア、ファミリア商会の代表を務めています」
私が審査官に挨拶をすると、女の代表だと思わなかったのか?かなり驚いてるわねように感じで、少し間をおいてから返事がきたの。
「あっ、貴女のような麗しい女性が代表でしたか。素晴らしい逸品の取引先を感謝します」
(なんだ?この絶世の美女は……しかも醸し出す色気は気を抜いたら骨抜きにされそうだぞ……)
「お褒め頂き感謝します。レアルコンプレト王国の皆様に気に入って頂けると嬉しいです」
「必ず喜ばれるでしょう。お会いできて良かったです。どうか良き商いを」
「ありがとうございます」
審査官との挨拶を無難に済ませて、私達の入国審査は無事に終了し入国する事ができたの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます