第42話 夢の金属と究極の金属

 ファミリアへ戻ると、10kgのミスリル塊を持ってパインの工房へと向かう。


「パイン!良い物を持って帰ったよ〜」

「おかえりなさい!良い物ってなんですか?」


 パインは、ハイテンションな私の様子に、『キラキラ』と目を輝かせながらなにが出るのか待っていた。


「じゃーん、ミスリルだよ!」

「えっ……そんな貴重な物を?」

 

 パインの予想を遥かに越える貴重な物に、驚きすぎて固まってしまっていた。私はパインに近寄って頬を『ツンツン』して現実へ連れ戻す。想像以上の反応に、心の中でヤリテールの頑張りに思い切り感謝した。


「はっ、鍛冶師ならば誰もが1度は扱いたいと思う万能金属、それがミスリルなんですよ!ヤリテールさんはよく手に入れる事が出来ましたね」

「麓のダンジョンで珍しい物が手に入る事を伝えて、融通してもらえたみたいだよ」

「流石はヤリテールさんですね。ダンジョンで頑張ってくれるハルカさんにも感謝です」


 その後に抱き着いてきたので、受け止めてから頭を『ポンポン』してあげた。


「万能金属って言ってたけど、それってどういう意味なの?」


 万能金属と言われる理由に興味が湧いたので、パインにその事を聞いてみた。


「超高温でないと熔解が出来ない扱い難さの反面、ミスリル単体だけじゃなく他の金属との相性が良いので、鍛冶師の数だけ様々なオリジナル配合の金属を作って、究極の逸品を作れるのがミスリルなんです」

「そうなんだ。パインの最も欲しい金属が手に入って良かったね!」


 こんなにも早く、パインの欲しがる金属が手に入るとは思ってもいなかったので、その事を伝えるとパインからは違う答えが返ってきた。


「鍛冶師の求める夢の金属の1つですが、アルテマとウルガムの2つの金属が究極だと思います」

「ミスリルよりも貴重なの金属なの?」


 ミスリルが夢の金属なのに対して、アルテマとウルガムは究極の金属だと言うんだから、当然どんな物か知りたくなったので聞いてみた。


「アルテマはこの世に存在する3つの聖器【聖剣アルテマ】【聖盾アルテマ】【聖鎧アルテマ】に使われてる金属です。現在、それ以外には確認されてません」

「聖器とは壮大な話だね。勇者でも居て使ってた感じなのかな?」

「勇者アーサー.アルテマの名前から取られた物ですね。次にウルガムですが、3つの暗器【魔槍ウルガム】【魔盾ウルガム】【魔装ウルガム】に使われてる金属です。こちらもそれ以外には確認されてません」

「暗器って事は魔王ウルガムなの?」

「そう思いますよね。魔王ではなく英雄エリアス.ウルガムの名前から取られたんですよ」


 聖器が勇者だったから、暗器は魔王だろうと思ったけど英雄だったのね。心の中で英雄さんに謝っておこう。


(エリアス.ウルガムさん、魔王とか思ってごめんね……)

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