第40話 ヤリテールとの取引

 ダンジョンから戻って一段落したので、ヤリテールと取引をする為にトーレス町へ訪れた。取引と同時にインビエルノ王国の動向も聞いておきたいからね。


 懐かしいトーレス町の元我が家には【ヤリテール商会】の看板が掲げられていた。私が魔導扉から商会の建物内へ入って行くと、案内係が寄ってきて話し掛けてきた。


「ようこそヤリテール商会へ、本日はどのようなご用でしょうか?」

「こんにちは、私は【スプリング】と申します。ヤリテール商会長へ取引をしに参りました。名前を伝えてもらえれば判ると思います」

「スプリング様ですね。ヤリテールに伝えますので、こちらで少々お待ち下さい」


 案内係から商談部屋へ案内されて、席に着いて待っていると、ヤリテールは直ぐに部屋へとやって来た。


「ハ、いやスプリングさん、お待たせしました」

「ヤリテールさん、お久しぶりですね。今日は麓のダンジョンで出た魔石等のドロップを持って来ましたよ」


 そう言った後に、テーブルの上にいくつかの魔石とアイテムを〘無限収納〙から取り出した。トーレス町の周辺ではお目にかかれない物ばかりなので、ヤリテールはテーブルに置かれた物を、宝物を見るかのように目を輝かせながら品定めしていた。


「どれも初めて見る物ばかりですよ!フェルナンド伯爵も喜ばれると思いますが、どの程度の数を譲って頂けるのですか?」

「魔石は100個でアイテムは30個かな?」

「全て購入させて頂きますね。私の方も野菜の種や果物の苗木に、少しですがミスリルを手に入れました」


 ヤリテールには菜園で必要になる種や苗木以外にも、珍しい鉱石類や色々書物を頼んでいた。その中でも、市場へ殆ど出回る事のないミスリルを手に入れてくれた事に驚いた。少し言いながらも10kgのミスリル塊なんだもん。


「ミスリルなんて、よく手に入りましたね!お金を積んでも手に入らない貴重な物なのに、本当にありがとうございます」

「これから珍しい物が手に入る事を伝えて、先にミスリルを融通してもらいました。この魔石等を見せれば、これからもミスリルを融通してもらえるかも知れないので、期待してくださいね」

「等価交換になる場合は見合う物を教えてください。魔石程度なら期間内に集めるので」


 取引の話を暫くしてからは、インビエルノ王国から追ってについての話をするので、声が漏れないように遮音の魔道具を作動させて話を始める。


 ロックが失踪した事で、トーレス町へ王都からの調査団が来ていて、フェルナンド伯爵邸で滞在しながら現在も調査中との事で、この姿とはいえフェルナンド伯爵への接触は控えた方がよいと言われた。私もその通りだと思ったので、取引が終わり次第ファミリアへと帰った。

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