第53話 パインは最高の鍛冶職人だよ

 冒険者協会を出てから少し移動する。


「はぁ~、エリカのおかげでスッキリした♪」


 気に食わないゴーランをぶっ飛ばしてくれたエリカにお礼を言うと、エリカは『ドヤ顔』で私の肩に手を回して耳元で囁いた。


「おぅ、今日はあたいにだけ抱かせてくれよ」

「うんうん♪私で良ければどうぞ(笑)」

「おっ、約束だぜ!そうと決まれば、すぐに帰っておっ始めようかい♪」

「直ぐは無理だよ?ヤリテールが来て鍛冶場の話をするんだからね」

「チッ、パインの鍛冶場は早く作りたいから仕方ないね。我慢するしかないねぇ」


 3人で話しながら家に帰ると、ヤリテールは既に到着していて待っていてくれた。机の上にはヤリテールが設計した鍛冶場の図面が広げられていた。


「ハルカさん、お邪魔してます」

「遅くなってごめんね。その様子だと打ち合わせは直ぐに始めれそうだね」

「私も図面を見たとこなんですけど、ちょっと立派過ぎて驚いてます!」


 パインは鍛冶場の図面を見て興奮気味だった。ヤリテールの設計した図面はそれ程に素晴らしい物だったんだね♪


「では、私が設計した鍛冶工房を図面で説明させて頂きます」


 ヤリテールから説明を受けたけど、専門職ではないので『ピン』と来ない(笑)

 でも、パインの顔を見れば一目瞭然で、目が『キラキラ』と輝いてたので、私は迷う事なく図面通りの鍛冶工房を作ろうと決めたの。


「ヤリテールさん、素晴らしい設計に感謝するね。図面通りの鍛冶工房を作りたいから、契約したいんだけど、私は素材があれば作れるんだよね(汗)」

「承知してます。設計費と素材代のみで結構ですのでご安心下さい」

「ありがとう♪いつ頃に素材が手に入るんで しょうか?」

「設計費と素材代を合わせて金貨200枚なのですが、お得意様なので10%の割引を適用させて頂いて金貨180枚になります。お支払いを確認できた翌日に全てご用意致します」

「それじゃあ、ここで支払うので契約手続きをお願いします」

「かしこまりました」

「ちょっと、ハルカさん!こんな高額なのにもっと削ってお金を抑えないとです」


 私とヤリテールの間で契約を交わそうとすると、パインが慌てて割り込んできた。

 金貨180枚の高額出費を気にして、少しでも出費を抑えようとしてるんだね。

 私はパインの事を最高の鍛冶職人だと思ってる。だから最高の環境を用意して、最高の仕事をして欲しいので、お金を出し惜しみするつもりはない。


「私がパインを誘ったのは、最高の鍛冶職人だと思ったからなんだよ。最高の環境を用意するのが勧誘した者の責務なんだよ」

「ハルカさん……最高の鍛冶職人、嬉しいです。期待に応えてみせます♪」


 私はパインの言葉を聞いた後に、ヤリテールに向かって頷いてから契約書を交わしたの。

 明日には素材が届くので、引き続き討伐を休んで鍛冶工房を作り上げる事にしたの。

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