第42話 アニエラの油断

 並列思考セレブロの本音を聞いた後は、普段通りの会話をしながら移動してると、エリカから『下へ』とハンドサインで合図があったので地上に降りたの。


「どうかしたの?」

「ここから先へは地上から歩いた方がいいね。岩場は少し特殊で感知の精度が落ちるんだよ」

「人が居ても感知出来ない可能性があるのね。感知の精度が落ちるとか地盤か何かの影響してるのかな?」

「そうなんだろうね。歩いても1時間は掛からないから直に着くよ」


 エリカの説明の後は、徒歩での移動を再開して1時間足らずで今回の討伐地点になる岩場に到着した。岩さえなければ見晴らしのいい丘って感じの場所で、私は前世で観光へ行った秋吉台のカルスト台地を思い出した。


「綺麗な景色で良い場所だね♪」

「確かにのんびりと景色を眺めながら、美味しいお肉を食べるには良い場所だ♪」

「ほら、あたい達は観光しに来たんじゃないよ!金を稼いでローン返済だよ(笑)」

「「は~い」」

「見ての通り岩がそこら中にあるから、岩陰から突然襲ってくる可能性もあるよ。動きが遅いからって油断してる怪我をするからね!」


 エリカの注意を受けてからは、ゴツゴツした岩場を岩蜥蜴ロックリザードを探しながら移動を開始したの。岩は軽く跨げる小さな物から、5mを超える大きな物まであって、移動するのもなかなか大変だった。


 アニエラが『ピョンピョン』と岩から岩へ飛びながら移動してると、飛び乗った岩が動いてバランスを崩して尻もちをついた。


「わぁっ、痛ててて……転んじゃった(笑)」

「アニー!危ない!岩蜥蜴ロックリザードだよ!」


 アニエラが飛び乗ったのは岩ではなく岩蜥蜴ロックリザードだったの。背中に乗られて驚いて動いた事で、アニエラはバランスを崩して尻もちをついた。岩蜥蜴ロックリザードの尻尾がアニエラを襲う。


『ブゥン!』「キャッ!」


 間一髪で直撃は避けたけど、アニエラは左腕に軽い傷を負った。その後も尻尾を振って攻撃を仕掛けてきたけど、私がアニエラの前に出て魔法を唱えて壁を作る。


「やらせない!岩壁ロックウォール!」

『ゴガーン!』

「ハルカ、ありがとう♪」

「アニー!油断し過ぎだよ!一撃で死ぬ事もあるんだからもっと注意をしなさい!」


 いくら吸血鬼ヴァンピールでも即死級の攻撃を受ければ死んでしまう。大切な人を失いたくない一心でアニエラを叱責したの。


「ごめんない……」


 私の気持を察してくれたのか、神妙な顔をして謝るアニエラを頭を軽く撫でる。


「次からは気をつけるだよ?大事な人が傷つくのは見たくないからお願いね」

「うん、判った」


 私がアニエラを守ってる間に、エリカが岩蜥蜴ロックリザードの首に鞭を巻き付けた後に、鞭を挽いて首を切断して仕留めてくれた。


 不機嫌そうな顔したエリカが近付いてきて、その後は延々とアニエラへの説教が続いたの。


➖・➖・➖小桃です➖・➖・➖


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