第18話 出し物ガチャ確定演出?

 

 意外にも文化祭への前向きな姿勢を示す生徒たちはいるようで数人の生徒が手を挙げてくれた。

 僕が実行委員として頼られていないのは明白だけど、行動でやる気は示さないとな。


「喫茶店に焼きそば、かき氷とクレープ。屋内のものから屋外での屋台諸々……。食べ物系が多いのか」


 黒木くろきさんが書記として黒板に連ねてくれた案をベースに話しが展開していく。

 文化祭での出し物については、飲食店という方向性で定まりつつあった。


「他に案がある人はいませんか?」


 僕がクラスを見渡して呼びかけてみると、手を挙げる生徒はそれ以上出てこなかった。


「なぁーなぁー。実行委員の二人は何か案はねぇの〜」


 すると、一番前に座る男子が声を上げて言った。


 なるほど、人に聞く前に自分たちも何かしらの意見を提供しろと言うことか。

 僕としては別にこれといったこだわりもないし。この後は多数決でも、と思っていたのだけれど。これも一つのコミュニケーションだ。

 それに、黒木さんもなにか案があるかもしれない。


「そうそう! 黒木さんはなにかやりたい店とかないの?」

「あっ、それ私も聞きた〜い」

「ならもう黒木さんの意見で良くない!」

「確かに黒木さんの案は人気も集めてくれそうだよな」

「アクセサリー店とか出してくれそう〜」

「それ予算的に無理じゃん?」


 ……どうやら僕の案は二の次らしい。

 クラスの女子達が指名したのは黒木さんの方だった。

 まぁ、慣れてるからいいんだけどね。


 さてと、黒木さんはどう答えるのだろう。


「……………………」


 シーン、と教室に静寂が訪れる。

 黒木さんは無表情のまま、皆の方をただただ見つめるだけだ。


「……えっ、無いのかな?」

「そんなわけないじゃん!」

「ほら、急にあんたが聞くからっ」

「なっ、俺かよ! 俺はちゃんと実行委員の二人って聞いたぞ!」


 質問をした女子も、最初に聞いてくれた男子も戸惑いをみせる。

 黒木さんは最近よく話してくれるし、今日だって一緒に登校した時は普通に話してくれていた。だから、そんな彼女の様子に僕は違和感を覚える。

 でも黒木さんの普段って、常に教室だとこんな感じだよな。なら、いつも通りといえばいつも通りなのかな?


 ただ、クラスの方からそういった案が出た以上は何かしら言葉にしてもらえると僕としても助かる。


「えっと、黒木さんは何かある?」

「……?」

「女子目線の意見は男の僕じゃ限界があるしから、黒木さんに頼る事になって申し訳ないんだけど。意見があれば聞きたいなって」


 僕が黒木さんに話しかけると、彼女の肩がピクリと反応した。

 そしてなぜか、顔を紅潮させる。


「あっ、なければ無理して答える事はないけど」

「……っ、じゃあ」


 彼女から出た小さな声を聞いて、後方で騒めいたのが聞こえた。


「やっぱり案あるんだ! 何かな?」

「いやいやそんな事よりも!」

「あたし達の質問には答えなかったのにかなめくんには答えてる⁉︎」

「あの二人本当に友達なんだな……」


 と、そんなものばかり。


 いやいや、みんな黒木さんの案聴きたがってたんだから静かに聞くべきじゃないのか。

 ……とは言えるはずもなく。僕は黒木さんの声に耳を潜めた。


「……喫茶店。いいと思う」

『喋った⁉︎』


 そりゃあこんなに注目されてたら口を開くだろ。

 それよりも、黒木さんも中々に定番の案を推したな。


「ならもう喫茶店で良くない?」

「黒木さんが言うなら間違い無いよ!」

「だな! さすが黒木さん!」


 すると、賛成の声が上がる。

 最初に他の案を挙げた人たちも黒木さんが言うならと、心変わりしているようにも思える。


「黒木さんも喫茶店か。他に意見もなさそうだし、この辺で……」

「要くんは?」

「えっ、僕?」


 黒木さんもすでに出た案に票を入れるというのなら、今出ている案の中から多数決を取ろうとした所で、黒木さんが僕に問う。

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