第13話 フリーダムファミリー
間違いなく、
僕は由花が部屋を出たのと同時にすぐに着替え、追いかける。
しかし、どうして彼女が僕の家に⁉︎
そもそもどうやって住所まで突き止めたのだろう。
そしてなぜ……。
「うちで朝ごはんを食べているんだ……」
リビングの扉を開けると、普段見慣れているはずの四人掛けの食卓に先客がいた。
「……!」
彼女は僕の姿に気づき、箸を持つ反対の手で口元を隠す。
それから少し口をもぐもぐとさせてから飲み込んだ。
「……
いつも通りの黒いパーカーを羽織り、中には制服を着用している。そのボーイッシュな雰囲気と声のトーン。
そんな黒木さんは丁寧にお辞儀をする。
「これはご丁寧にどうも……じゃなくて!」
僕もお辞儀を返そうと頭を下げたところで、我へと帰る。
「どうして黒木さんが僕の家に⁉︎ それに朝食を食べているこの状況は一体!」
「もう、お兄ちゃん朝からうるさいよ。早くご飯食べちゃいなよ」
「いやいやこれが落ち着いていられるとでも!」
由花は何事もないように平然と黒木さんの隣に腰をかけて朝食にありつく。
ただでさえ黒木さんが僕の家に足を運んでいるだけでもビックリのに、それどころかご飯を食べているなんて驚かないわけがない。
「要くん、ごめんね。迷惑……だよね」
「あっ、いや、別に黒木さんを責めているわけじゃ」
僕の言葉に肩を落とす黒木さんにすかさずフォローを入れる。
色々聞きたい事はあるけれど、黒木さんが強引に人の家にあがる人じゃないって事くらいは僕にだって分かる。
「でもどうして黒木さんがリビングに……」
迎えに来たとは聞いていたけど、まさか家の中で待っているとは思わなかったな。
「家に上がるつもりはなかったんだけど、その、誘われて」
「お母さんが誘ったのよ〜。まだ朝ごはん食べてないって言うから上がってもらっちゃった!」
「か、母さん!」
僕がリビングで騒いでいるとキッチンから何やら楽しげな表情を浮かべる母さんが顔を覗かせた。
「せめて僕にも声かけてよ!」
「だって
「うぐっ……」
確かに母さんの言う通り、僕は夜遅くまでゲームをするサイクルのせいで朝にはめっぽう弱い。
でもそれは、自分の趣味だし後悔はないけれど。まさかこんな形で仇となってしまうとは。
「自業自得だよ。お兄ちゃん」
僕を起こしに来てくれた由花は味噌汁を啜りながらまたもや溜息をつく。
ていうか、何故由花は平然と黒木さんの横に座ってご飯を食べ進めているんだ。
「そうだ! 黒木さん黒木さん! 聞きたい事があるんですけど」
「な、なに……かな?」
由花は身を乗り出し、隣で一緒にご飯を食べる黒木さんに迫る。
黒木さんも少し由花のテンションには戸惑っているようだ。
同世代の女の子同士だけど、二人とも性格は真逆そうだからな。
「うちはいつもご飯はお米派なんですけど! 黒木さんはパンとお米どっち派ですか!」
「いきなり究極の選択だな……」
「お兄ちゃんには聞いてないよ!」
ボヤいたのを聞き逃さずに由花はプイッとそっぽを向く。
別に僕も会話に混ざろうとしたわけではないのに。実の妹に拒否られるとちょっと傷つく。
「……わ、私も。お米……かな。おにぎりとかよく食べるんだ」
「へー! でも、おにぎりって珍しいですね!」
何やら盛り上がっているな。
いつも教室では無口な黒木さんが由花の質問に答えている。
「朝早いからお母さんが持たせてくれるとかですか?」
「……ううん。お母さんは、いないから」
『えっ……』
黒木さんからの返答に、僕と由花は口を揃えて同じ事を口にした。
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