4‐4 腐れ縁の強さ
今の俺は、やよっちと共に講義と講義の間の空き時間で、近くのカフェに向かっているところ。
「えっとこの道をまっすぐ――」
俺の隣を歩きつつあたりをキョロキョロしているのがやよっちであるが――大丈夫だろうか?なんか同じところをふらふらしているような気もしなくはないが。まあ一応進んでいるといえば進んでいる。
――聞いていたところより。先に行っている気もするが。今はやよっちに付いていっている。
「別に時間はあるからいいけど、道間違えたから昼なしはやめてくれよ」
「大丈夫ですからーちゃんと向かってるから。もう」
やよっちは自信……あるのか。ないのか微妙な感じだが。って、さすがにあまり行き過ぎてもだよな。ということで、俺は足を止める。
「っか、やよっちよ。さっき国道沿いとか言ってなかったか?」
今の俺たちは国道から一本ズレた道を歩いている。並行してある道と言えば道なのだが――。
「えっ。えっと――あっ、そうそう。こ、こっちの方が近道なんだよねー」
「……」
俺が指摘するとやよっちはキョロキョロ慌てて周りを見た後、少し遠くを見てから――何かを見つけたらしい。というかやよっちが見た方向には小さい文字だがカフェの文字がある建物が見えた。無事にやよっちも目的地を確認できたらしい。
ちなみに先ほどから俺は触れているが。ちゃんと言っておくと、大学の方へと戻る方向に――って、わざわざ余計なことはこれ以上言わない方がいいかな。口に出してはいないとはいえ。変にやよっちのミスをばらすのも……いや、でも俺たちの仲ならこういうのはちゃんと言うべきか。そうだな。口に出して言ってやるべきだな。
「お腹空かせるために少し遠回り――」
「いやいや、やよっちよ。無理がある。絶対道一本間違えているの気が付かず歩いてただろ。通過してるし。あと今無理矢理理由を作らない」
「もう、ちょっとしたミスじゃん。ちゃんと着くから。もう、いつもよしっちにいじめ……――うん?」
すると、少し頬を膨らませながら俺の方に一歩二歩と近づいてきたやよっちが急に不思議そうな顔をして立ち止まった。
あれ?この行動は予想していなかったな?
ちなみに俺の方へと向かってきたのは、文句を言うため――または、そもそも目的地のお店がある方向が俺の居る方なので、文句を言いつつお店の方に進みだした――と、とらえることができるのだが。って、やよっちがなんかおかしい?固まってしまっている。
「おい、やよっち?どうした?」
「――なんか――うん?」
俺が声をかけてもやよっちはすごく難しい表情をして考え込んでいる。
「もしもーし?」
「ぬわっ!?ちょ、よしっちびっくりさせないでよ!」
顔を覗き込むとやっと俺が話かけていることに気が付いたのか。少しオーバー気味なリアクションをとるやよっち。本当に驚いた様子だ。俺のことを忘れていたのか――って、今の今まで話していて忘れるなよ。
「いや、急にやよっちが黙るから」
「それは――って、よしっち?」
「うん?」
すると何故か今度は急に不安?そうにやよっちが名前を呼んできた。
「いや――あー、ごめん。今の忘れて」
「はい?」
「いや、気のせいだから。よし。ご飯奢ってもらおう」
「いやいやいや、めっちゃ気になるんですけど!?」
やよっちの表情、仕草すべてが変というか。とにかくきのせいで片付けていい雰囲気ではなかったので、俺もはい、そうですか。とはならなかった。
「いや、ホントどうでもいいことというか。そうだよ。さっき大学でよしっちがおかしかったから私にうつったんだよ」
「えっと――話が分からないというか――また戻ったいうか。というか人のせいにするなよ」
「ごめんごめん。いや、だってホント変な事っていうか。ありえないこと一瞬思っちゃって――」
『うんうん。おかしい。明らかにありえないことだし――』。と、やよっちは呟き。1人で頷いている。と、いうかなんなんだよ。めっちゃ気になるというか。探ってください。見たいな雰囲気もあるんだが。
「ありえない事とは?」
「だから、その気にしないで」
無理である。
変に隠す?感じになっているからか。もう俺の頭の中やよっちの怪しい行動で一杯である。俺の方も少し変なことを思うことがあった気がするが。そんな事すべて忘れるくらいに今のやよっちなんかおかしい。
「めっちゃ気になるからん?というか。聞いたらさらに気になった」
「もう、なんか今日のよしっち――ふえっ?」
「――うん?次はどうした?」
先に行っておくが。決して今話している俺とやよっち喧嘩しているわけではないし。俺の記憶の中ではこんなやり取りはよくよくあった気がする。それのちょっとハード?騒がしいバージョンとかそんな感じだ。
なので雰囲気が悪いとかどういう場では今はないのだが――またやよっちが何か言いかけて黙ってしまった。それに関しては俺がしつこいとかではなく。言い合って?いたらまたやよっちが何か気が付いて?黙った。さらに、また今は難しい表情となった。
今日のやよっちはなんか新しい表情をたくさん見る気がする。
――というか。何故か全部が初めての事に思えなくもないんだが――って、そんなことないか。俺たちはずっと大学に入ってからこんな感じだったはずだし。記憶がそう言っている――。
俺がやよっちの様子を伺っていると、今度はすぐに俺の方を見てきた。睨むとかではなく。見てきたである。
「――あー、ないない」
そして首をブンブン横に振る。
ホントやよっちどうしたのだろうか?
見ている俺もおかしくなりそうだ。
「あのー、やよっち。病院行くか?」
「そう。よしっちが悪い」
さすがに病院送り提案は間違いだったか。完全に俺の責任にされた。
「いや、今のは言いすぎたかも――って、急に俺悪者にされた?いや、ずっとされていたか?全部俺のせいにされていたか?って、やよっちがなんかおかしいから。俺もさらにおかしくなってきたんだが」
「そうだよ。今日のよしっちがおかしいからなんか調子狂っちゃうだよ。さらにって、言っている時点でよしっち自身がおかしいって思ってるんでしょ?ってことで早くご飯食べに行こう」
俺たちの会話は――成立しているか?
他に誰かいるわけじゃないから全く確認ができないんだが――。
――っか。俺って――やよっち以外絡んでいる奴いなかったっけ?
なんかこのやよっちとのやり取りって――記憶にあるけど。相手が違う――いや、そんなことはもちろんないんだが。って、ほらー。俺の頭の中も大混乱じゃねーか。
こういう時は――あれだな。
「――訳が分からんが――まあ行くか。確かに腹は減った」
一度区切りをつけるじゃないが。座って話そうである。
「そうそう」
今の時間は何だったのか――もしかすると道を間違えたことをうやむやにするためのやよっちの行動――ということもあったが。
いや、それにしてはおかしいことが多すぎたか。本当なら確認したいことがたくさんあるが――その話に戻すとまた同じやり取りがこの場で始まり前に進まなくなる。
それに今ここで頑張って聞いてもまた誤魔化される可能性があるので、後にしておこうと思った俺はそのままやっと再度歩き出したやよっちの背中を追いかけるのだった。
ホント何していたのか俺たち――。
そして、俺たちは目的地のお店へと無事に?到着したのだが――。
おかしなことは継続するとでもいうのか――いや、これはおかしいだけで片付けていいのだろうか?
「――どういうこと!?なんで!?」
いろいろあったが目的地に着いた俺とやよっち。なのだが。着くなりまたやよっちが叫んだ。というか。驚いている。
ちなみに声には出していないが俺も驚いている状況だ。
目の前を見て――。
いろいろおかしなことを俺たちが来る途中で話していたので、少し現状の整理をすると、今はお昼時だ。
つまり普通に考えて飲食店なら混雑する時間。にぎわっている時間である。
しかし今俺とやよっちの周りは大変静か。あっ、前の通りは普通に車が走っているがね。でも何というか。お店の敷地内は昼時にしては大変静かというか静かすぎる。さらに言えば――お店の様子がおかしかった。
「なあ、やよっちよ。ここ――だとは俺も思うが。他にカフェみたいなところはないし。でも――なんというか。おかしいな」
「うん。なんで潰れてるの!?」
そう、俺たちがやって来たお店。最近潰れた――というか。そこそこ前に潰れた雰囲気――があるのはお店の外だけ。入口のドアのガラス越しに見える室内は――何故かつい最近。昨日くらいまで営業していたのでは?と思える雰囲気に見えるという。なんなら今営業していてもおかしくないというか――外と中の雰囲気がおかしい。ぐちゃぐちゃな感じがした。
「――これ潰れてるのか?なんか中は――綺麗?だが」
「確かに中は綺麗に見えるけど明らかに外観は――古いって、聞いた話だと見た目もおしゃれなお店って――なんで?どういうこと?何があったの?えっ?」
俺の隣でやよっちが混乱している。というか先ほどから混乱?しっぱなしか。
俺はお店のことを知らなかったのでそこまで混乱はしていないが。でもお店の雰囲気?がおかしいのはわかるので少しは混乱している。やよっちほどではないがね。少し頭の中がごちゃごちゃしている状況だ。
「もしかして――」
すると、やよっちが俺の方を見てつぶやいた。
「――よしっちがおかしいからお店もおかしくなった?」
「それは絶対にない!」
ない。
やよっち遂に壊れたらしい。
なんでも間でも俺の責任にしようとしてきたよ。
でも――このお店の雰囲気は明らかにおかしいんだが。
まるで誰かが描いている夢の中で――隅々まで作れなかった。または中途半端になったような――、まあそんなことはあり得ない事なのだが。でもおかしな状況が目の前にあるのは事実。
でも全部俺のせいと言うのもおかしいことだ。
「いやいや、今日のよしっちがおかしいことから全部始まってるんだよ。このおかしいのもよしっちが」
「なんで俺のせいになるんだよ。証拠。証拠は?」
「――それは――今日の雰囲気になんとなく?」
「おい、方向音痴女。他に誰もいないからと勝手なことを言うな」
「むっ。そんなことない。私は方向音痴じゃないですーってか、今日のよしっちがおかしいのは事実。大学の講義の時からおかしかったじゃん。いつもの席来ないし。変な呼び方――って。ボケた?」
「どんどんひどくなる――って、方向音痴に関してはさっき間違えたがね」
「もう。話をややこしくしないで。って、でもそこははっきり言っておくけど。違う。迷子とかならないし。うん。だから、よしっちがおかしかったから、私もおかしくなったの」
「ホントに全部俺のせいにされてるよ」
「そう!」
「そう。ってな。自信満々で言われても――ね」
「だって――よしっちが女の子だった気がするし」
潰れた?おかしなお店?の前で何やら盛り上がっている?とでもいうのか。とりあえずいろいろ言い合っている俺とやよっちだったのだが――やよっちがまたおかしなこと。爆弾落としてきたよ。
「……はい?」
「――――あっ、今のなし!」
「いやいや――マジでやよっちがやべぇかも」
やよっち。確かに今日の俺はおかしいこと。寝ぼけて?いることがあるが。それにしても性別変わるとかないからな。っか、女の子だった気がするって――それはもう完全にやよっちの記憶?が壊れたのか。やよっちの方が今脳内大混乱しかないだろ。俺の男だぞ?
「もう、なんなんだろう。どうして変な事ばかり私も言っちゃうんだろう――」
「サラッと。もを付けないでいただきたいね。俺は――そこまで……」
「めっちゃ言ってる。ってか、こうなったらさっきからのもやもやちょっというけど――」
「うん?」
「なんか私よしっちともちろん大学に入ってからずっとこんな感じだと思っているんだけど――」
「まあだな」
「――さっきからなんか引っかかるってか」
「引っかかる?」
「うん。よしっちはいるのに――別の誰かといたというか。記憶はあるんだよ?でも――変な」
「それはやよっちが変――」
「だから。私はおかしくないってか。じゃじゃ。よしっち」
「なんだよ」
「よしっちって――私以外。誰と話す?」
「はい?そんなの――」
大学に入学してから俺はぼっち――とかそんなことはない。
そもそも俺は大学に入る前。その前。ずっとというべきか――一緒――うん?
「よしっち?」
「――ちょっと待て、やよっちがいきなり変な事聞いてくるから整理中」
「いやいや、よしっちが誰と居るかなんだけど――」
「あれ?俺――誰かとずっと昔から一緒って言いたかったんだけど――なんでつっかえるってか――あれ?」
何か大切なことを忘れている――と、俺の頭の中が何か言いたそうにした時――。
『あー、もうめちゃくちゃになっているじゃねえか』
俺とやよっちの前。つぶれた?と思われていたお店の中から白衣を着た男性が頭をかきながら。めんどくさそうに現れた。
いやいや、誰?
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