4-3 刺激が必要?
俺。磯部一心。
現在俺は大学内のとある一室に連れてこらえていた。
今日の俺はちょっと午前中は電車旅をしてしまったことで講義は休んだが。午後からはちゃんと真面目に来た――のだが。15時過ぎに大学に来るや否や。杏奈や柊花。舞悠までもが俺を探しており。やはり俺ハーレムだったか!などと一瞬思った後。
大学の敷地内。一番隅っこにある部室棟の音楽室?楽器の練習をする部屋へと連れてこられ。今は何故か1人だけ部屋の真ん中に正座させられている。
――何この状況?
誰か親切な人説明求。
って、こういう時俺の隣には昔から誰かいた気がするが――って、舞悠か。あれ?舞悠なのか?でもそうだよな。舞悠は一学年下でずっと俺と同じ。小学校、中学校、高校。そして今。大学もだ。つまり――こういう時は舞悠が説明をしてくれるのがいつもの事――だと思うんだが。
なんかすっきりしない気もしなくはない。
しかし俺にゆっくりと考える時間はなかった。
「で、キモイの」
杏奈が俺を冷たい目で見てくる。だから俺の名前違うと、言いたかったのだが――何故か怒っている?
「まあまあ杏奈ちゃん。圧かけなくても。多分一心それはそれで喜ぶだろうし」
「キモイ」
「ちょ、なんか俺いろいろわからないってか。どういう状況?っか、こんな部屋俺初めて知ったんだが――」
「あー、ここは。ジャズ部とかが練習で使う防音室。まあ授業でも教育学部?の一部が使ったりしていた気がするけど――まあとりあえず防音の部屋」
俺が状況を飲み込めていないと柊花が教えてくれたが――防音の部屋になんで俺は連れてこられた?そもそも正座がおかしいが。
「キモイのに発言権なしだから」
杏奈が怖い。全く俺に発言をさせてくれる雰囲気がない。
でも――この杏奈。女王様みたいで悪くはない。
余談だが。大学生になってしばらくといえど、すべての教室を使うことはまずまずない。基本は大きな講義室のみ。小さな部屋。ゼミ棟などもあるのだが――まあとにかくまだまだ使ったことのない部屋がたくさんある。その中の1つに今俺はいるわけだが――発言権がないのでゆっくり頭の中で整理していくと――防音でそれもあまり学生の通らない場所の部屋に俺は女子3人と居る。
「やっぱりハーレムか!」
「黙れ!」
「ぎゃああああ痛っっ!」
余計なことが先に口から出てしまった。
俺の目の前に居た杏奈が勝手に俺が発言したからだろう。俺の手を踏みつけてきた。普通に靴のまま踏みつけてきたので、痛い。マジで痛い。下手したら折れてないか?大丈夫か俺?っか、ここで俺さらに下手な動きしたら。杏奈の警備人にボコボコの可能性――いやいや、なんで俺こんなことに?
「はいはい。杏奈ちゃん。落ち着いて」
「落ち着けるかーって、キモイの昨日の夜私たちに何した!?」
「――はい?」
「はい。じゃなくて!」
杏奈の顔が接近――することはなく。残念。とりあえず手を踏まれたまま聞かれる俺。が――。
「昨日――いや、普通に舞悠の家に――みんなで居ただろ?」
このことは俺今日ずっと思い出そうとしていた事だ。
でも夕方になっても何も思い出せていなかった。
というか。杏奈たちの表情を見ると。こいつら。そのことを俺に聞きたくてこんなところに連れて来たのか。
って、誰も覚えていないとかあるのかよ!
「だからそこで何があったか言いなさい!」
俺が心の中で叫んでいる中杏奈が再度聞いてくれるが。わからんものはわからん。大変残念だがマジでわからん。
「いや――それが。せっかくのハーレムが全く覚えてない」
「はい?」
「いや、睨まれてもな」
「――一心も知らない」
「先輩も覚えてないというと――」
杏奈は俺を睨み。柊花と舞悠は難しそうな表情をしている。って、手痛いっす。
「一心がなんかしたんでしょ」
「なんもしてないからな?俺が覚えているのは舞悠の家に4人で居たこと」
「――一心も同じ認識か」
「柊花。騙されちゃダメ。このキモイのが何かした可能性が一番高いんだから。それこそ睡眠薬とか」
「杏奈。ちょっと待て、そんな事しないし。そもそも俺が杏奈に手を出したら今俺は生きてないだろうが」
「……確かに。杏奈ちゃんの警備の人ら絶対24時間いるよね」
俺の言葉に柊花も『そういえば――』という感じでつぶやいた。
「そ、そうだけど――でもでも、もしかしたこのキモイのが何かしたら――」
柊花が俺の味方――まではいかなくても。疑問に思ってくれた。のだが。でもでも杏奈は何故か俺を悪人にしたいらしく。まだ粘る。じゃあこういう時は――。
「なら試してみればいい」
「へっ?」
俺は片足で踏まれていた手が痛いのを我慢しつつ。開いている。杏奈に潰されていない方の手で無防備になっていた杏奈の手首をつかみ引き寄せようとした。
が。
「――突入!確保!」
「お嬢様無事です!」
「男拘束」
「―――ぁ……ぁ……こ。これは――キツイ」
時間にして、1秒未満。
急に俺たち4人しかいなかった部屋のドアが開いた――と、そしてスーツ姿の誰かが――と、思ったら。一応俺たちの後ろに窓ガラスもあったのだが。そこがいつの間にかくり抜かれた?のかそちらからも人の気配。からの気が付いたら俺先ほど以上に身体が地面。床に近くなり。さらに関節という関節が動かせないようにしっかりホールド?されたのだった。
――杏奈の踏みがかわいらしかったレベルだ。今は激痛を超えて――もうなんか折れた。いや。動くことすらできなくされた気分だ。
「「「……」」」
ちなみに、何とか俺が目だけ動かして周りを見ると、柊花、杏奈、舞悠がそれぞれ固まっていた。
多分こいつらも何があったのか。早業過ぎてわからなかったのだろう。
俺ですら全く何があって今この床に潰されているのかわからない。
「――えっと、杏奈ちゃん。とりあえず昨日何かあったらこういうことになっていたんじゃない?」
「そうねえ。って、あなたたち。本当にどこからでも出てくるわね」
「――赤崎先輩が驚いているといいますか。先輩も正確には知らないんですね」
「うん。まかせっきりー。ってか、勝手に警備されてるだからね。って、じゃあこれじゃ昨日の夜は何もなかったじゃん。っか、じゃあなんで舞悠ちゃんの家に私たちは集まっていたの?」
「うーん」
「それがわからないんですよね」
「――あ、あの……マジで身体がバラバラになったというか。これ――長時間。いや、短時間でもヤバい……」
「うーん。柊花どう思う?」
「舞悠ちゃんの家でご飯――でもそれだと一晩居た理由が――なんか――よく考えてみると。重要な事話していた?ような木もしなくはないんだけど――うん」
「私たち寝不足だから思い出せないのかしら?ちなみに警備の人?」
「――はい」
「あなたたち。昨日の私の行動わかるかしら?」
「昨日は――大学のち。お嬢様は1人で買い物。散策をなされ――あれ?おい、この部分のデータは」
「――いや、こちらには」
「何をしている。すみませんお嬢様。一部データが飛んでしまっておりますが。その後は神明様。松山様。磯部様と合流し。その後は松山様のご自宅で一晩お過ごしとなってます」
「特に変なことは――ね」
「データがないってよくあることなんですか?」
「家――それは――」
「あの、俺多分身体もう動かない」
「一心ちょっと黙ってて」
俺はつぶされたまま何やら頭上で女性陣と杏奈の警備している人が話しているが――おかしい。杏奈と話しているはずなのに俺を抑えている人は全く手が緩まない。って、よくよく考えたら俺2人?3人で抑えられているのか?そうだよな?いろいろおかしいというか。
なんで俺こんな状況なんだよ。マジで身体がおかしくなる――ぎゃああああああ。
◆
その後俺はいろいろ身体が限界を迎え気絶したらしい。
気が付くと。俺1人が部屋に取り残されていた。
柊花はじめ女性陣が俺に対する扱いがおかしい件について誰かと語りたい。
――にしてもなんで俺と柊花たちは普通に接してくれているのか。杏奈にに関してはめっちゃ嫌がって――まあそれは柊花が居るからか。でもならその柊花は何故――あっ、まさか俺の事が好きなのか!なるほど。って――そんな素振りあるか?なんか実はもう少し言うのか。誰かが俺たちの間にクッション。つなぎ役みたいなのが居るような気がして――って、何を俺は言っているのか。今日はいろいろおかしなことを思ってしまう。って、違う違う。つなぎ役とかじゃなくて、普通に舞悠が居るからか。舞悠が居るからあの2人も居ると――つまり舞悠を大事にすればハーレム。って、そんな事よりこの状況どうすりゃいいんだよ……。
「……いや、マジで身体動かないんだが」
俺は何とか目だけ動かし周りを見る。
多分暗くなっている。というかくらい。部屋暗い。そして寒い。で、動けん。抑えられてないのに動けん。身体があらぬ方向を向いている気がしなくもない。
でもこのままだと誰も助けが来ることなく。俺放置されそうだったので、無理に身体を動かすと――。
ブチッ!
「ぎゃああああああああああああああああああ」
なんか切れた。
多分俺――縛られていた?のか。いや、縛られてないが。おかしな姿勢で固定されたまま放置。その後も俺気絶でその姿勢を維持していたから。いろいろ血管が止まっていた?いや、そんなことはもちろんないと思うが――でもでもなんか無理に身体を動かしたら。めっちゃ激痛が!何かが急に稼働した痛み――違う。無理矢理血管が結ばれていた――いやいやそんな事できるやついないから。でもなんか切れた気がする。いや切れた。めっちゃ痛い!もしかして――俺が動くと誰かが俺の身体を切り刻む――いやそれもなさそうだ。だって、今は明らかに俺しかいない。周りに誰かいる気配はない。つまり1人。こういう俺に何かあるのって――。
「普通は由悠が居るからだろうが!なんで由悠が居ないのに俺がこんな目にあうんだ!!!!!」
そうだ。
俺1人の時になんか起こるわけなぇ。由悠が居るから今までいろいろ起こって――。
「……おい。由悠?由悠――って、そうじゃん。由悠が居たじゃねぇか。なんで由悠のことをまるで俺は忘れて――あれ?由悠が出て来たらまた誰かの記憶が消えたような――って、身体痛ぇぇぇ!!!とにかく由悠が悪い!!!!」
激痛により。俺はなんか久しぶりにトラブルメーカーの名前を呼んだ気がするが。その後また俺の身体が悲鳴を上げて今は自分のことで一杯一杯になる俺だった。
「マジで痛ぇぇぇ!」
ちなみにその後俺は再度気絶した。
――杏奈の警備の人意味わからん強さ。と、いうことと、なんで由悠も柊花も杏奈もこの場に居ないんだよ――と。ここに居ない。3人のことを少しだけ思い出しつつ――3人。
◆
一心が大学の一室でまだ1回目の気絶している頃の事。
「杏奈ちゃん。一心放置で良かったの?」
「気絶したんだし良いでしょ」
「完全に意識ありませんでしたけど――」
「まああそこなら大学の警備の人が夜中には来ると思うけど――」
「そうそう、舞悠ちゃんも気にしなくていいよ」
「あ、はい。まあ心配はしてませんが」
現在の私は杏奈ちゃんと舞悠ちゃんと話しつつ大学から駅へと向かっているところ。
ちなみに少し前まで昨日の夜舞悠ちゃんの家で何があったか一心に問い詰めて――まあいろいろあったけど。特にわかったことはなかった。あっ、わかった事言えば、杏奈ちゃんの警備の人のおかげ?なのかな。まあとりあえず夜に何かあったということはないんだけど――それ以外は特に新しい情報なし。
「結局何もわかってない気がする――って、ホントなんで昨日舞悠ちゃんの家に居たんだろう?なんか無駄に時間使って遅くなっちゃった気もする」
すると、杏奈ちゃんも私と同じことを思っているみたいでつぶやいた。
ちなみに今は気が付けば20時過ぎ。いろいろあったとは言え数時間。大学の講義が終わってから私たちは大学に居たらしい。そんなに話していた感じはしないけど――時間ってあっという間と改めて実感した。まあ後半に神業?を見ていたからそれで時間が一気に過ぎたような気もするけど――なんか一心本当に苦しそうというか。悶絶してたからね。でも少し喜んで?いるようにも見えなくなかったけど――。
「ですね。とりあえず――私の家また行きますか?あれから戻ってませんから。そのままの可能性ありますし」
「あっそれだね。柊花。とりあえず舞悠ちゃんの家行こうよ」
「あ、うん。そうしようか」
少し思い出していると、杏奈ちゃんが舞悠ちゃんと話した後。私も声を再度かけてきたので、返事をした頃。私たちは珍しく空いている駅へと到着した。
いつものようにICカードを使って私たちは駅の中へと入る。
「あれ?人居ないね。電車行ったばかり?」
私たちが駅のホームへと上がると、人っ子一人いない状態だった。
そのため杏奈ちゃんがそんなことを言いながら周りをキョロキョロ見ている。
確かに、駅に人が居ないのは大学が休日とかまっ昼間とかなので、この夕方。夜の時間だと多くの講義。一部のサークルも終わっている時間なので、もっと人が居てもおかしくない。けれど駅のホームは静か。誰もいない。そういえば――駅員さんの姿もなかったような……まあ自動改札。ICカードで入れるから特に問題ないからあまり気にしてなかったけど。
「あれ?この時間って――もうすぐ電車来ませんでしたか?」
私たちがあたりを見ていると、駅の時計を見た舞悠ちゃんも不思議そうに周りを見た。
「まさか。また電車止まってるとかある?」
「あー、それもなくは――って、特に何もアナウンス。放送も流れてないよね?」
すると、つい先日最終電車で足止めを食らった杏奈がそんなことをつぶやいたので、私もそのことを思い出した。
電車が止まることはまあ時たまあって、巻き込まれたことも初めてではないが。最終電車で長時間缶詰になったのは初めてだったので、嫌な記憶というべきか。とっても暇だった記憶が私もよみがえって来た。ホントあれはすごく時間が長く感じたから。
「何かあったんですか?」
少し前のことを私たちが思い出していると。舞悠ちゃんが不思議そうに?『なんのことですか?』と、いう感じで聞いてきた。
「あー、そうか舞悠ちゃんは巻き込まれてないよね」
「うん?巻き込まれて?うん?」
そういえば話を聞けばみんな巻き込まれていたから。勝手に舞悠ちゃんも――と、思うところはあったが。確か舞悠ちゃんはあの電車にはいなかった。そんなことを思い出しつつ私は舞悠ちゃんに返事をする。もちろんちゃんとこちらが説明していないので舞悠ちゃんの頭の上には?マークがいっぱい浮かんでいる感じだ。
「いやね。この前私たち。一緒だったってことは後から知ったんだけど――」
『――私の実験に巻き込まれたんだよ』
「「「うん?」」」
私と杏奈ちゃんが話していることが分からないだろう舞悠ちゃんに説明しようとすると。急に私たちの背後から男性の声が聞こえて来て、私たち3人はとっさに後ろ。声の方を見た。すると――。
白衣を着た男性が『やれやれ』とでも言いたそうな表情で私たちの方へとゆっくり歩いてきていた。
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