1-2 アルバイト先

 11月28日夕方。

 先に報告しておきます。

 午後に受けた講義の内容を覚えてません。 

 てへっ。

 ……じゃないか。でも短時間だったけど良き睡眠がとれました。以上!

 まあまだ寝たいけどな。睡眠は大切だわ。


「――後で柊花にノート見せてもらおう」


 さすがに睡眠不足だったためだろう。午後は気持ちいいお昼寝時間になった俺。

 今は講義が終わったところ。この後は帰る――じゃなくて、今日はバイトの日だ。休みたいがバイトも大事。というかバイトはバイトで楽しいから眠気とか全く関係ないな。

 ちなみに多くの生徒がこの時間のあとは帰ることになるので、今はにぎやか。この後どうするかなどの声があちらこちらで聞こえて来ている。


「ちょちょ、そこの栗色の髪の子。これから俺と遊びに行かない?俺さ――」


 ……なんかナンパ?みたいな会話が聞こえたのは気のせいか。でも聞こえたな――などと俺が思いつつ声の方。講義室の出入り口の方を見ると。多分アイツだろうと思われる男子生徒の後ろ姿が見えた。金髪で長髪?――背はそこそこ高く。なんだろう。英国貴族?ではないと思うが。ホスト――?まあいいか、っか、あんな生徒居たのか。学生数が多い大学だからか。まあ知らない生徒の方が多いと思うがあれだけ目立つ生徒に今学期も数か月以上過ぎているこの11月に気が付くとか――などと思いつつ。まあ俺には関係ないので、視線を切ると――ちょうどそのタイミングで一心の怪訝そうな声が聞こえて来た。


「あいつ。次から次へと。何者だ?」

「うん?なんだ一心どうした?」

「あの金髪野郎。手当たり次第に女の子に声かけてやがる。あの行動力――羨ましい」

「……何言ってんだこいつも――」


 関わらない方がいいな。と、思った俺は呆れつつ帰る準備――と思っていると。


「ちなみにさっき柊花も絡まれてたぞ」


 一心が柊花の名前を出してきたので、まあ一応反応しておいた。


「うん?まあ柊花が男子生徒に声をかけられるのはよくあることだろ?いつもみんな断わりまくってるけど」

「それがアイツ。いきなり求婚してやがった」

「……はい?」


 俺の聞き間違いかな?求婚?何故?普通遊びに――とかの声かけられたならまあ柊花はよくあることと知っているが――求婚?はい?である。


「珍しく柊花が困っていたな」

「そりゃ柊花もそれは困るだろうな」

「ホント、しつこかったよ」


 すると、何故かちょっと疲れた表情の柊花が荷物を持って俺たちの前にやって来た。


「お疲れ。って、講義以外で疲れてる?聞くまでもなく疲れているな」

「そう、さっきの講義の前の休み時間にいきなり絡まれて。あっ、一心さっきは身代わりありがと」

「――身代わり?」


 雰囲気的に一心が柊花を助けたのか?などと俺が一瞬だけ一心を見直――。


「あまりにしつこかったから、ちょうど声かけてきた一心を彼の前に突き出したの」

 

 いや、一心が何かしたというより柊花がちょうどいいところに一心を見つけて利用したらしい。

 でもまあ、どうやら一心の話が本当らしく。普段なら上手にかわしている柊花ですら苦労――って、マジでアイツ俺は初めて見たというか。ああいう目立つ人なら絶対もっと早い段階で見そうだけどな――などと思っていると。


本郷ほんごう北斗ほくとだって」

「うん?誰が?」

「あの金髪男子」


 柊花が呆れつつと言った表情で金髪男子の名前を教えてくれた。っか、何故知っている?と、俺が思うと同時くらいに柊花が再度口を開いた。


「いきなり自己紹介始めて、俺の国で一緒に暮そうとか言ってきたの」

「……大丈夫か?あの男」


 俺の国ってなんだよ。何様だよ。殿さまって?そんな事はないだろ。


「さあ。かなり強引――ってか、あんな人この大学に居たのね」

「あっ、柊花も初めて見た?」

「ええ」


 どうやら俺だけではなかった様子だ。柊花も知らないということは――休学していたとか。この時期から来るとかはないだろうし。海外の人というのも名前からしてなさそうだし。もしかして大学関係なく不審者?でもそれなら名乗るのは――いや偽名もあるか。とかとか俺が考えていると。


「よし。博士に確認してみるか。あの人ならずっといるし知ってるかも」


 一心がそんなことを言った。

 ちなみに博士とは高田たかだ太一たいち先輩の事である。俺たちより1学年上――年は――もっと上の人だ。

 丸メガネが特徴で、あとはまあどこにでもいそうな学生――というと失礼かもだが。でも実際雰囲気がそれなんだよな。でもどこにでもいそうというのは――ちょっと違うかな?説明が難しいが。まあ変わった先輩で、俺もたまたま一心か繋がりで少し知っているだけだが。

 ちなみに一心は何故知り合いかは――知らん。まあとにかくその高田先輩。何度も大学3年をしているとか――単位が‥‥‥なのか詳細は知らないが。でも一心曰く。毎日大学の自習室に籠り勉強しているらしい。何の勉強かは俺は知らないが――ちなみに籠っている時はいつも白衣を着ているらしいので――何か実験?をしているとか。一応俺の通っている大学そういう学科もあるみたいだからな。

 って、先輩の話じゃなくて、多分一心は長く大学に居るから聞いてみようと言い出したのだろう。

 ならご自由にというか。俺はこの後予定がある。


「行ってら。俺はバイトだから」

「なんでだよ。由悠も博士のところ行くぞ。あんなポンと出てきやがった金髪に俺の彼女候補たちを取られてたまるか」

「……」


 俺の彼女候補たちってなんだ。と言いたかったが。俺は何も言わずに駅の方へと歩き出すことにした。関わると明らかに面倒だからな。


「あっ、おい、由悠!」

「由悠。バイトなんだよね?なら今日は私も付いてく。夜ご飯何んか欲しいし」

「まあそれはご自由に」


 すると後ろで一心の叫び声――からのトコトコと駆け寄って来る足音と共に俺の隣に来た柊花はそんなことを言い。俺と一緒に歩きだした。

 ちなみにこの後一心は追いかけてこなかったので、先輩のところへと行ったらしい。よほどあの金髪男子が気になったのだろう。っか、一心の行動も怪しいと言えば怪しい気も――だが。いろいろヤバい生徒がこの大学居るのかね。


 一心と別れた後の俺と柊花は駅から電車に乗り。普段使っている駅の1つ手前の駅まで移動した。

 ちなみに柊花の最寄り駅だったりする。


「今日は何食べようかなー」


 駅に着き歩き出すと柊花がそんなことを言い出した。なお、柊花の言っていることから俺が向かっているバイト先というのが飲食店というのはわかるだろう。

 今俺がバイトをしているのは、おじいちゃんおばあちゃんが経営しているお弁当屋さんだ。というか。柊花が良く使っているお店で、その際に人手が――と、聞いたらしく。俺に話が来た。というか、もう決定しているレベルで柊花が話を持ってきたという過去があるのだが――だな。そんな過去もあった気がする。って、気がするはおかしいか。事実なんだし――なんか疲れているのかね。俺。いや、多分これは昨日の寝不足から来ているな。頭がまだシャキッとしていないのかもしれない。お店に着くまでにシャキッとせねば。


「あっ、魚もいいな」


 俺が自分の脳内の整理をしている間も柊花はお腹が空いているのか。1人ぶつぶつつぶやいていた。

 ちなみに俺も魚いいな。とかちょっと思った。

 っか、今はもう夕方。お腹が空く時間である。まあ俺はこの後お店が閉まるまで手伝ってからの夕食になるので、先はちょっと長いな。


 それから俺と柊花は今日のおすすめはなんだろうなどなど話しつつ。俺のバイト先。おじいちゃんおばあちゃんが経営するお弁当屋さんへと到着した。


「こんばんは」

「こんばんはー」

「あっ、由悠ちゃん。待ってたわよ。今日も頼むわね。おじいさん。由悠ちゃん来てくれたわよ」


 俺と柊花がお弁当屋さんに到着し。昔ながらのガラガラ音のする引き戸を開けながら店内へと挨拶をしつつ入ると。すぐにいつもの優しいおばあちゃんの声がまず聞こえてくる。


「じゃ、俺は着替えてきます」

「おっ、柊花ちゃんもいるんか。何食べるや?なんでも作るぞ?」

 

 そして俺がおばあちゃんに返事をしていると、声で反応したのだろう。厨房の方からひょっと顔を出したニコニコのお爺ちゃんが柊花に声をかけている。

 俺のバイト先のお店は厨房と店内に数席だけ席があるこじんまりとしたお店。

 だがこのお店、おじいちゃんおばあちゃんのお弁当が美味しいと近くで評判らしく。営業日の夕方から夜はかなり混雑することもある。

 以前はそれでも問題なくやっていたらしいが。今はおじいちゃんおばあちゃんともに高齢。昔はおばあちゃんも厨房で――だったらしいが。最近は動くのが大変らしく。レジ当番に専念したこともあり。厨房のお手伝いが欲しい――と、いうことからそれが柊花に、そして俺が手伝うことに――なったはずだ。いや、これは柊花が勝手に決めてから俺にだからな。でもまあ、こういうのも嫌いじゃない俺。結構楽しくやっている。それにここならバイトの日は美味しい晩御飯にありつける特典付き。素晴らしいじゃないか。

 ちなみに柊花がバイトを引き受けなかったのは――柊花目当ての客が来るとか来ないとか――本人が言っていたような――?て、あいつ自分のことよくわかっているというか。まあ柊花がお店に居たら人は集まるだろうな。無駄に。

 まあとにもかくも俺は今。やさしくほんわかな雰囲気の中でバイト中である。

 あっ、そうそうちなみにここのおじいちゃんおばあちゃん。ラブラブである。と、先に言っておこう。

 

「ばあさんや。ちょっと味見てくれや」

「はいよ」

「ほれ、あーん」

「あーん」


 ――言っているそばからだったが――これもこのお店では有名。おじいちゃんおばあちゃん常にこんな様子である。

 人前だろうが関係なし。おはようとお休みのキスは欠かしたことがないと常連客にいつも自慢しているくらいだ。

 ホントこれは見本というのか。とっても良き夫婦である。

 まあでもこのおじいちゃんおばあちゃん別の顔も――って、いけないいけない。準備しないと。


 あわてて荷物を置いて、裏で着替えた俺はそのまままずは厨房の手伝いを開始する。小さなお店といえどやることはたくさんある。

 おじいちゃんは慣れているかゆっくり動いているように見えても無駄がない。俺がするより早いことも多々ある。現在の俺はまだまだ勉強中――って、洗い物が溜まっとる!

 俺が手伝いに入ってからすぐにお弁当を買いに来る人が増えだしたので、俺はわちゃわちゃ働いた。

 ちなみに一緒に来た柊花はどうやら今日はこの後特に予定がないのか。今はおばあちゃんの話し相手兼客呼び――というか。少し前にも話した気がするが。店内に柊花が居るだけで、マジで人が寄ってきているんだよな。そしてお客さんがいないとおばあちゃんと雑談しつつ。おじいちゃんが完成させていくおべんとうに蓋をし。輪ゴム。そしてお箸をつけたりということをしていた。

 っか、いつの間にかおばあちゃんちゃっかりお店のドアを開けて営業している。

 そろそろ寒くなって来たので、ドアは閉めていることが多いが。閉めると柊花が居ることが見えない。多分おばあちゃん今日はわざと開けて人呼びをしている気がする――多分。

 ってか、柊花も実質来ればこうやって手伝っているというね。

 多分この流れだと、そこそこ閉店まで居て――一緒に晩御飯をごちそうになるという雰囲気かもしれない。

 って、ちょっとよそ見していたらまた洗い物が!あっ、お米が減ってる!って、おじいちゃんがこっち手伝って欲しそうにしてる!急げ俺。でも丁寧に!

 厨房の方は男2人大忙しです。でもこうやって忙しく働いている間はまあトラブルは起こらないというか。いや、油断すると大きなトラブルがあるかもだからな。厨房はいろいろとあるし。危険だし。でもまあ今のところバイト中は大きなトラブルないんだよな。

 などと思っていると――なんだよ。


 ちょっとピークも過ぎて一段落という時だった。


「――っ、付いてこないでっ」


 お店の外から悲鳴?に近い声が聞こえて来たのだった。

 初めてだぞ。このお店でトラブル――あっ、いや、全く過去になかったわけでもないか。でも今回のこれは、俺と――柊花も全くの無関係ということではなかったんだよな。何があったかというと。


「なんで俺から逃げるんだよ。俺が誘ってるんだぞ?」


 お店の外には悲鳴のあとに男の声――ってこの声少し前に大学で聞いた気がするんだが――ちなみに俺が厨房から様子を見ると。柊花も声に反応したところだった。俺と同じように声の聞こえる表の方を見ていた。

 そしておばちゃんにより空いていたお店のドアのところ2つの人影が通過してい――かず。ちょうどお店の前。俺たちから見えるところでちょうど、男が女。いや、女の子と言った方がいいか。小柄な女の子の手首を捕まえたところだった。

 多分だが。というか。間違いなくと思うが。この声。そしてこの男の見ため。長めの金髪はなかなかいなかったので、間違いない気がする。そして、横顔だが。顔もって、顔だけは良いというか。あと身長も高い。何も発しなければイケメンだな。でもすでに俺の中では評価低いぞ?大学でもなんかしてたし。今は現行犯というか。明らかに、捕まった小柄な女の子怯えている。ちなみに小柄な女の子の方は栗色?というのだろうか。やわらかい感じの色で、ふわっとしたボブカット。高校生?くらいだろうか?でも服装的には――もしかして大人?いやでも、今のパッと見の俺の直感的に学生かな?って、ふとリスに雰囲気が見えた。それは髪色からか。って、そんな事思っている場合ではないか。

 お店の前でもしかしたら――いや、確実にないと思うがカップルの痴話げんか。ないな。これはない。でもお店の前でなんかされているのはお店的に迷惑。あと、おじいちゃんばあちゃんが動きだす前に俺が動かねば――。

 

 食器を置いた俺はトコトコと足早に入り口の方へと向かう。すると、俺の後ろを柊花も付いてきた。


「――すみません。その子明らかに嫌がってますけど。あと、お店の前で騒がないでください」

「はっ?一国民が俺に指図するのか?」


 なるべく穏やかに解決。と、思ったが。この顔だけいい男。ダメだわ。なんか俺見るなり睨んでくるし。明らかに自分より下って扱いで話してくるし。むかつくわ。

 ちなみに小柄な女の子めっちゃ怯えてるんだが。


「騒ぐなら警察呼びますよ。あと、再度ですが。その子を離せ」

「ふっ。俺の事を知らないのは仕方ないが。目上――」

「いや、までお前なんか知らんけど。とりあえず、その子嫌がってるから」

「お前に関係ないだ――あっ、ちょ」

「た、助けてください」


 なんかむかつく金髪イケメン?っか、身長まじで高いな。俺175くらいだが。190あるんじゃねえか?あー、怖い怖い。って、このままやっていると俺知らねえぞ。などと思った時。多分男の手が緩んだんだろう。捕まっていた女の子がその手を振り払い俺の方へ――ではなく。俺の後ろに付いてきていた柊花のところへと逃げてきた。

 まあですよねー。柊花来てくれてよかった。

 と、どうなるこの後は。とかとか俺が思った時。


「――おい。人の店の前で何がやがやしてやがるんだよ」

「ほんとね。かわいい子いじめて。どこの坊ちゃんか知らないけどね。邪魔よ」

「「「……」」」


 ラスボスに遭遇したようなBGMが急に脳内に再生されたよ。じゃなくて、声の方を俺が見ると、本来は大変穏やかで優しくラブラブのおじいちゃんおばあちゃんが。超怖い。おじいちゃん包丁持っているし。ばあちゃんは小銭を巾着袋に入れて振り回してる――って、こっちの方が警察呼ばれると危ないな。って、道を開けよう。

 ちなみに柊花と小柄な女の子はすでに道を開けている。というか、柊花が怯えている小柄な女の子手を引いて避難している。俺も道を開けよう。


 それからのことを言うと、どうやらすでに誰が通報していたらしく。まあ悲鳴が聞こえたら通報する人も居るだろうからな。少しして自転車に乗ったお巡りさんが到着――だったのだが。

 その時には金髪の男はいなかった。何故ならマジでおじいちゃんおばあちゃんが追い返したから。

 完璧なコンビネーションで金髪男を撃退した。

 いや、俺は初めて見るんじゃないが。いつもニコニコの2人だが。お店の妨害――的なことがあると。人が変わるんだよな。はじめての時はマジで驚いたが。うん。昔――2人もやんちゃ?だったのかな?などと思ったが。詳しくは知らない。というか、男が消えたらいつも通りのお店にもう戻っているし。2人もいつも通りだし。

 まあ良しとしておこう。


 それから何があったかは柊花が小柄な女の子と共に店内でお巡りさんに話していた。そのため何も知らずにそのあとお店に来た人はいきなりのお巡りさんでちょっと驚く人がちょこちょこいたりしたのだった。

 ちなみに、金髪男に絡まれていた小柄な女の子は松山まつやま舞悠まゆ大学1年生とか。そしてどうやら、大学も同じで大学からあの男にちょっかいをかけられていたらしい。ちなみに男の情報は柊花が話していた。 

 なので、俺は特に出番なく。バイトを継続したのだった。


 それからさらに少し時間が過ぎて――。


「いやーいろいろあったけど、由悠ちゃん今日もありがとうね」

「2人もなんか食ってけ」


 無事に本日のバイトも終了――いや、無事に?と言っていいのか?現におばあちゃんがいろいろって言っているし――微妙か。

 なんで俺の周りなんか起こることホント多いんかね。今回はたまたまお店の前というのだが。

 ちなみにまだ松山さんと柊花は残っている。というか。この2人意気投合?なのか。少し前から雑談に花を咲かせている。まあ怖いことがあっても切り替えが早いのは良いことか。松山さんも落ち着いたからか。結構明るい感じ。人懐っこい?感じになっているし。柊花に結構質問?あと、あの男の愚痴言っているし。まあ強い?子なのかもしれない。

 

 とにかく、お店が終わってもにぎやかな店内。

 そのあとはいつもの事というか。バイト終わりにはみんなで夕食となるのだが。今日は5人でとなかなかにぎやかになったのだった。

 いつも基本あまり物などをお爺ちゃんが料理してくれる。まかない?みたいなものかな?そしてこれがまた美味しんだよな。お弁当もおいしいが。あるものでなんでも作れるおじいちゃん。っか、暖かいごはん。出来立てのご飯って旨いんだよ。

 ちなみにすっかり松山さんもおじいちゃんおばあちゃんに気に入られていた。はじめは遠慮していたが。食べたら――まあ虜になっていた。

 そして何故か食事のあと、俺とも話して――。


「あっ、横山先輩も連絡先押しえてください」

「えっ?」

「赤外線で良いですか?」

「あ、うん。えっと、赤外線――」


 気が付いたら流れで連絡先交換。俺の携帯に1人友人が増えたのだった。

 あと、連絡先を交換している時。なんか違和感ではないが。いや、違和感?なんと言えばいいのか。なんか引っかかる事――えっと。わからん。なんだろうな。一瞬何かを感じた気がするが。そのあとまた少しみんなで雑談となったため。俺はそれ以上気にすることはなかった。

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