2 呼道の家へ
そうして
まだ六月だってのに張り切り過ぎている太陽の下を歩いていると、まだ垢抜け切れていない一年生、
「えっと……なんか当てはついてたりするんです?この幽霊だー、とか」
「いいや?……ねえ呼道クン、そもそも霊的現象ってどんなものか知ってる?」
どんな幽霊か分かっていないらしいのにも拘らず、飄々とした態度で話す明石。やはり
「それは……幽霊が起こしている現象じゃあないんですか?僕だって元々は幽霊なんて信じていませんでした。それでも、僕の母が幽霊の仕業だと言っていて、明石先輩もこうして霊的現象解明部として活動を行っている。つまり、幽霊のような不可思議な存在がこの世界には存在していて、物理法則を軽く超えてこの世界に影響をもたらしている、ということではないでしょうか」
「そういうことも、ある」
まるで幽霊を本当に見たことがある、とでも言うような。だが、どこか言葉に含みがある。
「そういうこと”も”っていうのは?」
呼道はその言葉の含みを見逃さなかった。
「稀なんだよ、本物の幽霊がいるなんて言うケースは」
明石は続ける。
「この世界で起きる霊的現象……その多くは、俺たち人間の”勘違い”でできている。……『幽霊の 正体見たり 枯れ尾花』って、聞いたことくらいあるだろ?そう、つまり、俺たちが幽霊が居たって感じるのは、幽霊だと強く考えすぎているからなんだよ」
「……はぁ」
「まあ、じきに分かるよ」
まだ良く分かっていない、という風な呼道をなだめ、フライパンくらい熱そうなアスファルトの上を早足で歩いていく。
「ここ、です」
呼道が止まったのは、古風な一軒家の前だった。いわゆる昭和の家、というか。それこそ幽霊とかが出てもおかしくなさそうな古い平屋だった。贅沢なことに広い庭付きである。岩で囲まれた池には、鯉が二匹ほど気持ちよさそうに泳いでいた。
呼道が鍵を開けている間、暑さで頭のネジが外れてきた明石は、鯉と共に池で泳ぎたい欲求に駆られたが、ここまで歩いてきた理由を思い出して踏みとどまった。
「それじゃ、失礼」
申し訳程度にそう言って、無神経な明石はずかずかと家の中に踏み込んでいく。
中を見ても、やはり昔の家、というイメージそのままの家であった。ちゃぶ台であったり、畳であったり、電灯であったり。そういった様々なものから、歴史を感じることができた。
しばらくは二人とも無言だったのだが、不安なのか気まずいのか後輩男子が口を開く。
「どうですかね、この家。本物の幽霊だったりします?」
「うーん、今のところそういうのは感じないかなあ。あ、そういえば、君の家の写真アルバムとか思い出DVDとかってあったりする?」
「え、どうしてです」
じとー、と呼道は目線を送る。
「やめてやめて!そんな犯罪者を見るみたいな目でこっちを見ないで!」
「いやそんなつもりはないですけど」
「別に趣味なんかじゃなくて、何か情報がつかめそうかなって。あとさ、一つ質問。お父さんって一緒に住んでる?」
「いえ、僕と母だけです。父親は僕らを置いて出ていきました。中学生になった時くらいですかね」
「ふうん」
「あ、別に気は使わなくていいですよ、僕はもう慣れてるので」
「ごめん元から使ってない」
「うーわ」
そんな風に会話を続けながらも明石はガサゴソと色々漁っていたが、特に何も見つからなかったらしく。
「次お母さんが早めに家に帰ってくる日はいつ?」
玄関で靴を履きながら後輩に尋ねる。
「
「六月十七日、土曜日かな?分かった、じゃあその日に行くね」
呼道の家にあったお菓子と、写真アルバムを握りしめ、明石は自分の家へと帰った。
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