鬼籍睡蓮 4


 上層部に爆撃機でライチ基地をぶっ壊そうと提案したが案は切り捨てられた。

 たかが散華の1人を失くしただけで大騒ぎがすぎると宥められた、ご尤もだ。

 スイレンは菖蒲の戦闘機を待った。

 今なら落とせるだろうか、自分は歯がたつだろうか。

 時折、ライチ基地には恐ろしいほど強い搭乗員がいる。

 ほんの数分で4機も落とすような化け物が。


 シミュレータでの訓練を終え、部屋に戻るとサクラはまだいない。

 大方レンゲのもとにいるのだろう。


 いろいろ考えることが多すぎて混乱する頭。

 耳を塞いで音をシャットアウトする。

 出撃命令の喧騒も、離陸時のジェット音も。

 自分では気付いていないが、精神は擦り切れていたのだろう。

 ベッドに入るといつの間にかどろどろと寝落ちる。


 夢を見た。

 睡蓮の夢、睡蓮の花言葉は滅亡。



 2日して出撃命令が出た。

 ライチ基地のエースを落とせ。

 エースは誰かと問うと、菖蒲の戦闘機乗りだそう。

 ―――来たか、遂に。

 スイレンは了解した。

 作戦決行は夜、天候の安定した時間帯を選んでの出撃だ。

 上官と別れて、愛機のもとへ向かっていると呼び止められた。


「スイレン姐さん、夜に出撃するの」

「モクレンの弔い合戦だよ。向こうのエースを落とすの」

「菖蒲の戦闘機?」

「そう」


 サクラの顔が曇る。

 菖蒲の戦闘機がすごい、それは周知の事実。


「勝てる?」

「勝つよ」

「スイレン姐さんなら、きっと勝てるよね…。直掩機は誰がつくの」

「わたしにはつかないわ。第一部隊と敵機が交戦して、消耗したころにエースを叩くから。少し遅れて飛んでいくわ」

「そっか…。絶対帰ってきてね、姐さん」




 作戦決行、飛行場に並んだ戦闘機と搭乗員は敬礼の後に機体へ乗り込む。

 風防を閉じる。

 管制官とのやりとりをして、スイレンは離陸の時間を待った。


 時間がくると、スイレンは離陸許可をとって空へ。

 戦地では乱戦状態、何機かは海の藻屑。

 こっちも何機か落ちたな、そう見ながらスイレンは菖蒲の機体を探す。


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