第54話 悪魔の少女
「アッハ☆正解!」
黒幕と指摘したリリアスに、少女は楽しそうに同意する。
「いったい君はなんなんだ?」
「そうね。勇者候補のお兄さんの敵かな? もっとも敵にすらなれなさそうだけど――死んじゃえ!」
ボコリ
倒れた巨大ワイバーンの腹から真っ黒な頭が
「なにっ!?」
驚くリリアスに躱す暇は与えられず、なんとか剣を振って
「リリィィイイ!」
叫ぶミレイスターが吹き飛んだリリアスを魔法で引き寄せ、すぐに治療を始める。
だが、そんな
「アハッ☆あはははは。よっわ! もう、そんな雑魚さん達は死んじゃえば!」
少女の言葉に呼応するかのように、胴体が倒れたままになっていた巨大ワイバーン――
否、新たに生えてきた頭だけでなく、真っ二つに別れた頭も黒い瘴気に包まれると、元通りに引っ付く――
「待ちなさい!」
必死に回復しようと試みるミレイスターの前にレンナが立ち塞がった。
「おばさん――誰?」
「おばさん? 目でも悪いの?」
相手の疑問にレンナは本気で驚いた様子で聞き返す。
「はっ! 雑魚おばさんがなんのよう?」
「そうね。私は雑魚で役に立たないわ。でも、彼らを殺す前に――ガゼット!」
殺しの現場ですら、傍観を決め込もうとしているガゼットだが、全滅してから戦うといった以上、死ぬのを待つ必要はない。
ミレイスターの前に身を
もちろん見捨てられて死ぬ可能性は十二分にあるが、それでも死ぬまで放置するような人とは思いたくない――なにより殺されるところを傍観なんてことは自分にはできなかった。
「ふーん。お兄さん……でいいかな? 戦うつもり?」
「邪魔したら殺す。それは事前に伝えたつもりだったが?」
「えっ? ガゼットは知ってるの?」
初めて出会ったはずの黒幕と、普通に会話をするガゼットにレンナは驚く。
「そりゃな、パンサーが襲ってきたときからずっといたし」
「ふふ、熱い視線を送ってくれたよね?」
「あぁ、邪魔するなら殺すってのはちゃんと伝わってると思ったが?」
「ガゼットぇぇ……」
事前に伝えておけとか、視線でなんのやり取りしてるんだとか、ボケーってしていたのはもしかしてそいつとの交信中だったのか? とか色々な思いが駆け巡る。
「えっと、助けてもらえるかしら?」
「そうだな――お前は大丈夫か?」
チンタラと歩いていたガゼットは足元に
「あぁ、もう俺以外一歩も動けないだろうよ」
リリアスは瀕死――そんなリリアスをミレイスターは回復に努めており、残り戦えるメンバーはランドだけ。
「それは問題だな」
「あぁ、そうだ。なっ!? ぐはっ――」
ガゼットの蹴りがランドに突き刺さり、そのまま吹っ飛ばされるとレンナ達がいる位置へと落ちてくる。
「ちょ、いや。待ちなさい! 治療! 今は治療に専念するのよ!」
目の色を変えて怒りだすミレイスターに、レンナは抱きついて、間違っても敵に回してはいけない男への攻撃をやめせるように説得をおこなう。
「ガゼット! これでスターレインのメンバーは全滅したわよ!」
怒るミレイスターを押さえつけながら、レンナがガゼットに叫ぶ。
「アハハハ! なに? 同士討ち?」
「同士討ちに見えるか?」
「んー? キャハッ☆」
同士討ちにしか見えない行動だが、振り向きざまの表情が真顔なため、返答に困った少女は適当に誤魔化す。
ガゼットからすれば戦うための下準備であり、同士討ちではなく障害の排除でしかないのだが、それを理解できるのはレンナだけであった。
「じゃあ……死ぬか」
ガゼットが両足で空を飛ぶ――ただのジャンプなのだが、くるりと空中をひと回転して、少女の後ろを取り、バスターソードを振り下ろす。
「きゃあああああ」
背後から振り下ろされたクソデカ剣を前に飛んで躱すと、少女は馬鹿にするように舌を出して馬鹿にする。
「くっ、お兄さんこっわ~い。じゃあね~☆」
そうして少女の姿が消えた。
残された
「んぎゃあああ! なにするのよ!」
ガゼットは少女の被るフードを掴むと、腕力だけで中の服までビリビリに破り裂きながら、左側に投げ捨てる。
「ぎゃぁうん」
透明になって逃げようとしていた少女が再び姿をあらわす。
「なに……あれ!?」
上半身がひん剥かれた少女の姿にレンナがうめく。
褐色の肌に銀色の髪――そして、背中から生えた小さな羽に、お腹に描かれたピンク色の紋様。頭についた2つの角。
人間の言葉を操る魔力を持った
――かわいい!
――なんだそいつ
――もしかして悪魔か!
安全圏であるのをいいことにコメント欄では半裸にひん剥かれた少女についてコメントが飛び交う。
しかしながら、いくら見た目が
「なっ、くっそ……ふん、くふっ☆こんな屈辱は初めてよ! 死になさい!」
怒りに顔を引きつらせながらも余裕ぶった言動を取り繕いながら、ビシッ! と指を突きつけてされる命令を行う。
Guoo
どこか気怠げな声を出した
「バスターチャージ」
ガゼットはバスターソードを背後に突き刺すと、黒炎は剣の中へと吸収されていき、相手の攻撃を無力化していく。
「嘘ぉ……」
強大な魔力を込めた
とはいえ、ガゼットも剣を封じられており、攻撃される心配もなく互いに動けない。
「ねぇ。私の仲間にならない?」
チュッと音を立てて投げキッスをしながら、なぜかガゼットの誘惑を始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここまで読んでくださりありがとうございました。
これからカクヨムコンテストが始まるため
2023年12月1日〜2024年2月7日まで毎日投稿をしていきます。
そのため、応援してくださる方はいいね、感想、レビュー等をお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます