第32話 エピローグ―助けられた少女

「姫様~」


 馬をかけ、大声で叫ぶ男――ぴっちりとした服装に、しっかりと整えられたひげをした中年の執事が叫びながら馬車に近づく。


「これは一体?」


 執事の近くにいる青年――姫の救助に一緒に来た騎士は悲惨な惨状に目を見開いた。


「馬車が――壊された!?」


 執事は現場の様子に驚くと、慌てふためいてしまう。

 最初襲われた時、全力でスピードを出して馬車を引いて逃げていたのだが、いつのまにか馬車は切り離され、気づいた頃にはある程度距離があった。


 もちろん戻る選択肢もあったが、馬車は堅牢にできており、自分一人が戻るより、先に街に着いてから、騎士団を引き連れる方が正しいと考えたのである。


「そんな、姫様」


 煌々こうこうと燃える破壊された馬車に、間に合わなかったと執事は膝をつく。


「姫様、ご無事でいらっしゃいましたか?」

「なに!?」


 馬車の中をのぞいた若き騎士の声を聞き、執事は馬車に向かって走り出す。


「姫様、ご無事で――無事で?」


 馬車の中で小さく丸まった姫様だが、様子がどこかおかしい。


「うへ、うへへ~王子様ぁ」


 真っ赤に熱った両頬に手を添えて身をよじらせる姫様に、執事は近くの騎士と顔を見合わせる。


「えっと、ご無事そうで何よりです」

「これは、無事か?」


 明らかに脳がやられた様子に執事は困った表情を浮かべるが、若き騎士は作り笑いで流すと、撤収の準備を始めていく。


「とりあえず、ここから出ますぞ」


 なんとか姫様を連れ出すと、とりあえず次の街での休憩を試みるのであった。


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 ここまで読んでくださりありがとうございました。



 これにて、レンナとガゼットの出会い編は終了となります。

 MFブックス10周年記念小説コンテストに登録しているので、とりあえず10万字までは毎日投稿を頑張っていきたいと思います(10万字以降はまた毎週投稿)




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