第5話 失敗勇者と勇者の従者

 シクラ様は国王様達が会食をされた後、王子王女様方とご歓談されました。  

 その後お風呂に入られたのですが、何故か私どもが居ることに驚かれていたようですが――お体を洗わせていただきました。


 途中少し嫌がられご自分でされましたが――一緒に入ることを拒否されなかったので慣れていなかっただけなのかと思います。

 そう思いましたがカトレア様とアイリス様が側に寄られた後、顔を真っ赤にされてのぼせてしまわれました。

 執事のセバスチャンに事情を説明し、部屋まで運んで貰い大変でした。

 後の事はアイリス様がが見るとの事で皆は部屋に戻りましたが、なぜシクラ様が倒れられたかわかりません。

 体調でも悪かったのでしょうか?


byアネモニ



 気が付いたらベットの上に寝かされていた。

 あれからどの位時間がたったかわからないが、まだ夜明けは迎えていないみたいだ。

 服も浴衣を着ており、気絶している間に着替えさせられたのだろう。


 風呂場での状況を思い出しながら、一人呻く十誠。

 自分が女慣れしてないない事も原因でもあるので、彼女達を責めるつもりはない。

 ただ、今後召喚される勇者の事もあるので、誰か上の方の人には伝えた方がいい気がする。

 ハーレム物の女ったらし主人タイプなら喜びそうだし、妄想する人は居るだろうけど――実際にそうなったら俺みたいに困る人多そうだと思うからだ。


「一生懸命動いているのはわかるんだけど、一般人にはあんな状態じゃ困るって。こっちの世界ではあれが普通、ってことはないだろうしな」


「――お目覚めになられましたか、お加減はいかがですか」


 突然近くから声がしてそちらへ視線を向ける。

 アイリスがベット横にある椅子に腰を掛けていたのだ。

 そして椅子から立ち上がりこちらを覗き込む。

 窓から入る月明かりに照らされて、神秘的な雰囲気を醸し出していた。


 声が出せなかった。

 昼間に見た可愛く明るいアイリスが、月明かりの中神秘的な美しさを醸し出しており、アイリスの顔から視線が動かせない。

 昼間に見たアイリスと今のアイリスは別人のように見えてしまう。

 体を起こそうとする俺を、アイリスが介助しようとするが手で制止させる。


「いつから、そこに居たんだ。」


「シクラ様がお風呂でのぼせられて、この部屋に運ばれてからずっと居ります。他の者達は部屋に戻らせております」


「それからずっとアイリス一人で、俺の様子を見てたわけ」


「そうなりますね、それに私が一番適任でしょうから」


「なんでアイリスが適任なんだ? カトレアやアネモニと交代しながらでも良かったんじゃないか? 」


「私は前の勇者様の従者ですよ。旅の途中野営する事もありますし、それに私は勇者様については色々詳しいですから。前の勇者様曰く、男性の勇者様達は奥手でビビりが多いからこっちの世界での歓迎をすると――下手したら逃げ出す人もいるかもしれないって笑いながら仰って居ました」


 おおい! 的確に指示してる人が居るのに普通に無視して接待してんじゃねぇよ――と思っていたが、一応指示には従っていたそうだ。


「もしかして――風呂とかもあれで加減してたの」


「そうです。普段であれば湯着など着ませんし、タオル等で洗ったりも致しません」


 まあまあ良くあるファンタジー王族系の話だ事。

 そんなことになっていたら、風呂場から速攻で逃げ出していた自信がある。

 いや、どちらかと言うと逃げられなくてもっと早くぶっ倒れてただろうな。


「ですが――流石にシクラ様にお付きの者がいないのは、色々と問題がございますので」


「誰もついて行かないのが問題なら、風呂とかはせめて一人にしてほしいんだけど……」


「……わかりました。そのように取り計らってみます。ただ――私では権限がございませんので実際にどうなるかは分かりかねます」


「無理なら無理でもいいんだけど、流石に湯着を着て来るのはせめて一人にして。何かあったらいけないと言うのであれば、入口で服を着て待機してもらえばいいんじゃ無いかって説得してみて」


「そのようにお伝えさせていただきます」


 ふぅ、とりあえず納得してくれたようで何よりだ。

 これでゆっくりは入られそうだ……まあ一人は確実について来るけどね。

 最悪ダメだと言われたら、1日くらい風呂に入らなくても濡れたタオルで体を拭けばいいし、翌日には元の世界に帰るのだから問題無いな。

 一安心と思い、俺は再び横になろうとする。


「そうだアイリス、俺はもう大丈夫だから部屋で休んで来てよ」


「いえ、そういう訳にも行きません。朝までお側に控えさせて頂きます」


「え、何で?俺の体調確認の為に居たんじゃないの?」


 普通に考えたら、俺がのぼせて倒れたから起きるまで誰かが付いている――というのはわからなくも無いが、それ以降も居るのは疑問に思う。


「私は前の勇者様に新しく来る勇者様の事を頼まれておりますので、これは私個人的としての行動ですから」


 どう言うことだ? 何故アイリス個人なのだ。


「前の勇者が、新しい勇者を頼むってどう言う事」


「前勇者様がお帰りになる際にそう告げられましたので、私はできる限りのことをしたいと思っております」


 できる限りやるのはわかるけど、それは歓待する側が行うことであってアイリス個人で行うことでは無い。


「どうして俺に対してそこまでやるんだ? 前の勇者と違って、俺は世界を守ったりしないでそのまま帰るだけなんだけど」


 俺の問いにアイリスは悲しそうな、そして寂しそうな顔をして話始める。


「私は前の勇者様の従者として旅をしました。その際に必然的に話す機会が多かったのですが――勇者様はこの世界を守ろうとしてこちらに来るのではなく、気がついたらこちらへ呼び出されたと言っておりました。急に呼び出されていきなり世界を救ってくれと言われて、かなり戸惑ったと言われていました。ですが神に拝謁し、この世界の状況を聞いた勇者様は私にしかできない事だと自分に言い聞かせながら、必死に魔王討伐の旅を続けられていました。魔王を倒された際に、勇者様はこれでようやく帰れると言いながら、涙を流されていました。そして――それまでの間かなり無理をされていたようで、数日間寝込んでしまわれました。その後、体長が

戻られた勇者様は戦勝祝賀会に出られ、数日後には元の世界に帰られました」


 アイリスの言葉を聞いた限りだと、前の勇者は俺みたいな能天気じゃなくて、元の世界にしっかりとした繋がりがあったんだろうと伺える。

 ここが異世界かすげー楽しそうとかではなく、急に呼び出されて懇願されると言う理不尽な状況でも、何とかしようと頑張ったんだろうな……。


 元の世界に帰れないかもしれない、もしかしたら死んでしまうかもしれない。

 しかも、自分だけではなくこの世界の人々全て生死をを背負って戦い抜いたのだから。

 それを最初から最後まで見ていたアイリスとしては、協力を惜しまないはずだ。


「最後に勇者様とお話しした際に、私は勇者様から、もう一人の勇者が数年後に召喚されることを聞かされました。そして、戦わなくても良い勇者でも急に異世界に呼び出され困惑するだろうと。だから、あなただけでも支えてあげてほしいと。数日だったとしても心が荒むには十分な時間だから……と願われました。でも、私は……シクラ様にご迷惑をおかけし、湯殿で倒れられてしまわれました。勇者様に……シクラ様の事を頼まれていたのに……勇者様の願いを叶えてあげられなかった」


 足の上に置いていた手を、きつく握りしめ声を絞り出している。


「私は……私は……勇者様願いを叶えることもできず、支えて差し上げる事も出来なかった!」


 アイリスの声が、部屋に響き渡る。

 しばらくの間、二人の間には沈黙が流れる。

 アイリスは俯き、頬から涙が流れ握り締めた手に滴り落ちる。

 いつも笑顔のアイリスが、こんなことを思っていたとは全く思ってなかった。

 先代の勇者尊敬していた者として、勇者の従者として一番身近な者として、支えられなかったことを後悔しているのか。

 だからこそ先代の願いを何としてでも叶えようと、先代の代わりに支えようとしたのだろう。


勇者様の願いだからと……。


 結果として俺は何の不自由なく数日の旅行気分で楽しめていたわけか。

 多少やりすぎ感はあったが、それでも俺のことを何とかしようと頑張っていたんだな。

 だから俺は、素直な気持ちを言おうと思う。


「優しいね、アイリスは。先代の勇者の事を、アイリスは支えられなかってと言うけど俺は違うと思う。先代勇者は、アイリス支えられたからこそ次の勇者を支えられるのはアイリスしかいないと思って頼ったんだと思うよ」


 アイリスが、顔を上げて俺を見つめてくる。

 その顔は、涙に濡れているがとても美しい。

 いつもの可愛らしい少女のようなアイリスとは違い、一人の女性としてとても強く――そして美しい。


「俺はアイリス達のおかげで、今この世界をこの状況を楽しいと思えているよ。だからアイリス、ありがとう」


 いつの間にか、アイリスの頭を撫でていた。

 昔泣いていた妹を、撫でるように優しく。

 アイリスがなぜここまで責任を感じているのかわからない。

 ただのちょっとした、世界の違いや文化の違いはあるが歓迎してくれていることはわかる。


 歓迎……なぜ俺を歓迎するんだ。

 俺を歓迎したいのは誰だったんだ……もしかして……アイリスがやってくれたのか。

 だとしたらアイリスが前勇者の願いを叶えようと、動いていたのは確実だ。

 かんがえてみたら、色々な疑問が出てくる。

 なぜ――いつやって来るかわからない勇者の為に――日本人の様な容姿をした者達が集められていたのか。

 なぜ――世界を救うでもない俺を――国王達が歓待してくれたのか。

 なぜ――俺を王宮の来賓用の豪華な部屋に宿泊させ――メイドを五名も付け歓待したのか。

 世界を救った勇者の願いで、後で召喚される勇者をお願いされたのはあるだろう。

 ただ、それだけであればわざわざ容姿を限定してメイド集める必要はない。

 わざわざ王家の者直々に会食などをせず、大臣や司祭等に任せてればいい。

 会食の後、わざわざ王子や王女が数年前にも勇者が居たにもかかわらず、異世界の事を聞きたがる必要もない。

 宿泊場所も、ここは王都だしこの街並みなら当然高級な宿もあるだろう。

 神に拝謁が出来るほどの神殿ならば、来客用の部屋などもあるだろうしわざわざ王宮の来賓用の部屋を使用する必要すらない。

 勇者の願いとはいえ、誰かが指示し協力を得なければ今の俺の待遇はあり得ない。

 国王が幾ら救世の勇者の願いだとしても、本人が既に居ないのにそこまでする必要はない。

 しかし、アイリスがそれを行ったとしたら。

 勇者と共に世界を救った、勇者の従者。

 この世界に居る、英雄の一人がそれを望んだとしたら……。

 国家も他国の目があり、勇者を召喚した負い目もある。

 簡単に突っぱねることはできない。

 教会も神の手違いが原因の為、協力せざるを得ないだろう。

 アイリスの実家も、両親ともに優秀な人のようなのでそのあたりの伝手も色々使ったのだろう。

 それに、歓迎をする者が俺の近くに居ないのは不自然だ。

 そして、アイリス自体が関与していないのであれば、この取り乱し方はおかしいと思う。


「なあアイリス、もしかして今の俺の待遇はアイリスがいろいろしてくれているのか」


「……はい」


 やはりそうか……俺は先代勇者にそしてアイリスに、守られていたんだな。 


「前勇者との約束があるとは言え、流石にここまでの待遇は凄すぎるんだけど」


「私が出来ること全てをやらないと、勇者様に頂いた恩をお返しすることなどできません」


「どんな恩があったのかわからないが、アイリスの全てはやりすぎじゃないか」


「そんなことはございません。私がしたことなど、勇者様と魔王を倒した際に頂いた、過分な金銭と地位を返上しただけですから」


「そ、それってかなりの事じゃないのか!?」


「私では過分な金銭があっても、その金銭に群がってくる人々の対処は出来ません。爵位にしても勇者の従者に与えられる特殊な一代限りの子爵が、元の立場に戻っただけですから」


 人が群がる程の金銭って――かなりの金額じゃないのか?

 一代限りとは言え子爵って結構な立場なんじゃないのか……かなり無茶をしてる気がするんですが……。

 無茶を通す為の材料として、勇者から貰ったもの全て差し出すとは何とも凄い子だな。

 こんなことを聞いたら色々考えてしまうが、今の俺は勇者ではなくただの人だしな。

 もしこの世界に残ったとしても、アイリスが俺に対してくれた物を返すのは不可能だろう。

 ……困ったな、何かしてあげられることがあればいいんだけど……。


「ですから、シクラ様が気にする必要はないです」


 俺の考えを読んだかのように、アイリスは必要ないと言われてしまった。

 だけど……言わずにいられない。


「俺に何かできることはないかな」


「シクラ様が何事もなく元の世界にお戻りいただければ……それで十分です」


 なんか微妙な間があったが――まあそう言うよね。

 予想はしていたけどかなり芯が強いと言うか、頑固と言うか。

 まあ、俺にできる事がない事も確かだしな。


「わかったよ、元の世界に帰れるようになるまで、よろしくね」


「はい、お任せください」


 アイリスの返事はさっきまで涙が溢れ出していた時とは違い、しっかりした返事をした。

 この不器用な子に、何かしてあげられることはないのかな。

 俺の持ち物は、シャツ、ジーンズ、財布、スマホ。

 シャツとジーンズは論外、財布は金銭がこの世界と違うだろうから無理だろうし、スマホはカメラぐらいしか使い道がないな……バッテリーもないし。

 明日起きたらいろいろ考えよう。

 オタクとして――色々な漫画や小説で得た知識が、何か役に立つかもしれないしな。


「じゃあ俺はそろそろ寝るから、アイリスも部屋に戻って休みなよ」


「いえ、私はこのままで大丈夫ですので」


 そう言えば、このまま朝までいる気だったんだよな。


「体調はもうだいじょうぶだから、部屋に戻って休みなよ」


「ですから、私は大丈夫です。元々、一晩中付いているつもりでしたので。私の事などお気になさらずに、お休みください」


「でもね、ずっとそこで見られてると寝れないんだけど。それに、アイリスが寝ないと気になって寝られないって」


「ですが、私はシクラ様をお守りする義務がありますので」


「そもそも俺を狙う人なんかいないでしょ? それにここは王宮だよね、王宮でそんな事しでかす人なんて居ないでしょ。それに、アイリスが寝ないでいるのに俺が寝れるわけないでしょうが。アイリスが寝ないなら、俺も寝ないで起きている」


 俺には寝て欲しいだろうから、流石にこれで引いてくれるだろう。

 アイリスは、呆れた様な困った様な顔をする。

 そして、少し考えてからまためんどくさいことを言う。


「わかりました、ではそちらのソファーで横にならせて頂きます」


「いやだから、自分の部屋で寝ようよ。ソファーなんかで寝ると体痛めるって」


「それですと護衛が出来ません。旅の最中は地面に雑魚寝とかありましたから問題ありません」


 ああもう、ああ言えばこう言う!

 どうにかして頑固娘を納得させないと、俺が安眠できないよ!

 

「同じ部屋なら問題ないなら、アイリスがベットで寝て俺がソファーで寝る」


 こういえばアイリスが引き下がると思い言ってみて、ベットから起き上がろうとする。

 まあ、当然の如くアイリスに押さえられる――よしこれでアイリスは自室で寝てくれるかな――などと考えて居た時が俺にもありましたよ。


「いけません、シクラ様がベットでお休みください。私如きに、そのような気を回さなくて大丈夫ですから」


「アイリスみたいな可愛い子がソファーで寝てるのに、俺が悠々とベットでは寝られないって。それ以上言うなら、俺は床で寝るからね」


 俺がイライラしながらそう言うと(そう見せているだけで本気ではない)、アイリスは本気で困ってしまったようだ。

 ぶっちゃけて言えば女の子と同じ部屋で寝れるのは嬉しいけど、俺がベットで女の子がソファーなんて流石に無理。

 アイリスは何か考えていたようだが、しばらくして嘆息しながら予想の斜め上の事を言ってきた。


「はあ、シクラ様は私にベットで寝て欲しいと。そして私がソファーで寝るのはダメと仰るのですね。でしたら、私もベットで寝させていただきます」


「わかってくれて、嬉しいよ」


 俺の説得にようやく納得してくれたみたいで何よりだ。


「ではシクラ様は、そのままお休みください」


 そう言いながら、アイリスはお辞儀をして部屋を出ていく。

 アイリスが部屋を出るのを見送って、ちょっと悪いことしたかなと思いながらも俺はこの大きなベットの真ん中で眠りについた。


 シクラ様は、なぜあそこまで頑なに拒まれるのだろうか。

 十誠の部屋を出た後、アイリスは部屋に戻りつつ考える。

 侍女が側に居たくらいで、寝られない様な人は居ない。

 侍女の事など、気にせずそのまま寝てしまえばいい。

 それでも私は妥協して、ソファーで横になると言ったのにそれすらも却下されてしまった。

 あまつさえシクラ様が床で寝るとまで言われる始末。

 私は勇者様からの指示に従って、シクラ様の側に使えているだけだというのに。

 アイリスが十誠の考えていることがわかるには、住んでいる世界が違いすぎたのだ。

 騎士爵の家に生まれ、身の回りを世話するものがいつも居たアイリスと違い、現代社会で暮らす十誠とは立場や暮らしぶりが大きく違い理解が出来なかった。

 考え事をしながら部屋に戻り寝間着に着替え、ベットに入ろうとしてアイリスはふと気が付く――いや気が付いてしまった。


 シクラ様は私をベットで寝させたかった――そして私はシクラ様にベットで寝て頂きたかった。

 それならば、私がシクラ様の横で同じベットで寝れば護衛もできてシクラ様のご理解も頂けるのでは?

 その事を閃いたアイリスの行動は早かった。

 寝間着のままで廊下を歩くのは問題があるので、寝間着からメイド服に着替え寝間着を持って足早に十誠の部屋に向かう。


 十誠の部屋に付いたアイリスは、十誠を起こさないよう気配を消し音もたてず部屋に入る。

 十誠はアイリスが入ってきたことに気付かず、普通に寝入っているようだった。

 アイリスは着替えスペースでメイド服から寝間着に着替え、十誠が寝るベットの脇まで静かに向かう。

 そして、全く起きる気配のない十誠のベットに潜り込む。


「……う~ん」


 起こしてしまったかと焦ったが、十誠はアイリスが潜り込んだ際に一緒に入った冷えた空気を嫌がり、アイリスに背を向けた状態に寝返りを打っただけだった。

 アイリスは何故かほっとして居た。

 護衛をする為に近くに居ないといけないし、十誠の要望を違えたわけでもないので問題ないはずなのだが――何故だかほんの少し罪悪感が沸く。

 だが護衛をするにはこれしかないのだと思うと、少し感じていた罪悪感もなくなった。


(シクラ様は本当に世話のかかる方ですね)


 アイリスはそう思いながら、十誠と同じベットの中で十誠が起きるまで護衛するのだった。

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