第4話 失敗勇者と文化ハザード
前回までのあらすじ
スマホぴかって異世界に飛んじゃった。
メイドさんに接待されて、王様とお話し。
異世界はいろんな人が居るよ、魔法もあるよ。
トウマハ、オカシナカオヲシナガラ、カタマッテイル……っておかしくないか!?
えっと、アイリスは今十七歳で、前の勇者が召喚されたのが三年前で、十四歳の時に魔王討伐に行ったってことか?
この可愛いメイドさんは魔王殺しのパーティーって事は、もしかしてかなり強い……とか。
でも、勇者のパーティーなのになぜメイドをしているんだ。
十誠の頭の上には、はてなマークが三つほど浮かんでいる。
「うふふ、シクラ様が混乱されるのも無理はないかと思います。私は今も侍女をしておりますが、前の勇者様の時も今回と同じように、身の回りをお世話させていただく侍女をしておりましたが、勇者様は女性のかたでしたので、お世話をさせていただく為に、従者として一緒に旅をさせて頂きました」
「そ、そうなんだ!びっくりした。アイリスさんも、一緒に魔王戦ったのかと思ったよ。」
そうだよね、女の人ならこの世界の事がわかる女の人を連れて行くのもわからなくもない。
そう思っていたのだが……想定外の言葉がアイリスから告げられる。
「いえ、魔王との戦いには参加させていただきました。流石に、一緒に旅をする者が魔物達と戦えないと足手まといになってしまいますし。勇者様のご要望は、戦闘が出来る侍女との事で私が選ばれました」
「も、もしかして、カトレアさん達も魔王討伐に参加したのですか」
ギギギギと音がしそうな感じで首を回しながら問いかけるが、カトレアはにこやかな笑顔で首を振って否定した。
「いえ、私共は参加しておりません。アイリスは応用魔法が使用できますし、剣術も私共よりも遥かに強いですよ。普通の騎士の方々と戦っても負けないかと」
「えーーー!」
俺の絶叫が、周りに響き渡る。
この、ニコニコ笑顔を振りまく可愛いアイリスさん。
実は、剣術も魔法も使えるハイスペックなメイドだったのだ。
この後でわかったのだが、アイリスの家が凄かった。
父親は騎士団所属の騎士で、母親も騎士団所属の魔法使いだったとの事。
(厳密には騎士団と魔導騎士団らしい)
そして、母親は勇者を先祖に持つ家系で、代々優秀な魔法使いを輩出する家系だったのだ。
他の子は先祖に勇者が居るようだけど、普通の一般家庭で護身術位しか出来ないそうだ……どこぞの戦闘メイド部隊とかではなかったようだ。
話をしているうちに日が傾いてきて、体が冷えるまえに部屋内に戻った。
アイリスの事は、かなり驚いたが色々と話が聞けて面白かった。
部屋に戻ってからは、メイド達に色々話を聞かせてもらった。
そして過去の勇者が、色々と文明ハザードをしていることがわかった。
まずは、コーヒーやケーキ、蒸留酒類などのこの世界になかった嗜好品を色々と普及させたそうだ。
流石に自動車や蒸気機関車はなかったが、馬車に衝撃を抑える機構や鉄の精練方法など多岐にわたる文明ハザードを起こしていた。
ただ、文化ハザードのおかげで衛生面はかなり向上しているらしく、大きな都市では下水道が整備されているそうだ。
メイド達と色々話しているうちに、いつの間にか会食の時間になっていたようで扉をノックしてから入ってきた執事が準備が出来たと報告にやってきた。
なぜこんな状況になったんだ……
会食の時間との事で、俺は呼びに来た執事ともに移動した。
会食用の部屋に行くと二十名ほど座れそうな長机が多々あり、既に国王は到着して居た。
王の両サイドに、豪奢に着飾った女性がおりその横には俺と同年代か少し下の男女が数名居た。
あれ? 普通上位の者が後から入室してくるのが常識なんじゃないかと思いつつも、迎えが来たタイムミングでそのまま来たのだから俺の常識がおかしいのかもしれない――まあ、異世界だしね。
「こちらへどうぞ」
執事に案内され国王の目の前の席へ着席する。
国王たちも俺が着席した後に席に着いた。
――どう考えても先に席に着くのが俺がと言う事は、主賓ポジションに居るのは間違いない様だ。
「此度は、シクラ殿にご不便おかけし申し訳ございません。本来なら、盛大に歓迎の式典などさせて頂くところですが、今回の件ではそれが難しい為このような形になりましたが、シクラ殿にご満足いただけるよう最高の料理をご用意いたしましたので、お楽しみいただければ幸いです」
この国王は、相変わらず腰が低い。
そしてその状況を他の人達も何も言わないことから、勇者が尊敬なのか畏怖なのかわからないが敬われていることは確かなようだ。
国王達との会食は、終始穏やかに進んだ。
料理は、コース料理で非常に美味しかった――と言う事は、俺は意外と図太い神経をしているみたいだ。
小説とかでは普通ここは味が分からなかった――って、思う所だろうからね。
それはさておき、現在の席は国王の右隣が第一王妃で左隣が第二王妃との事。
王妃の横に座るのは各王妃の子供達が座っている。
第一王妃側は、王子一人に王女二人。
第二王妃側は、王子と王女一人ずつ。
国王家族は仲が良いらしく、後継者争いなど起きては居ないとの事――平和なのは良いことだよね。
ドロドログログロな家督争いとかマジで怖いから勘弁してほしい。
特に何事もなく、会食は終わりかと思ったのだが――そうは問屋が卸さなかった。
子供たち――王子と王女達に乞われて応接用の部屋で話すことになってしまった。
国王と王妃は困ったような顔をしていたが、俺が承諾すると引き下がり迷惑をかけない様にと言いつけていた。
まあ、衣食住全て見てもらってるんだからこれくらいはね。
応接室移動してソファーに腰を掛けると、王子と王女達も腰を掛けるのだが……俺の両サイドに第一王妃と第二王妃の王女が座り、反対側のソファーには真ん中にもう一人の王女で両サイドが王子という状況になっていた。
三人で座っても問題ない大きさのソファーなのに、王女達がぴったり横にくっ付いて座り非常に……嬉しいのだけど、かなり恥ずかしい。
反対側に座るもう一人の王女は羨ましそうにこちらを見ている。
第一王子が苦笑しながら俺に対して謝罪する。
「シクラ様申し訳ありません。お前たちもう少し王族として節度を持って対応しろ」
流石は、第一王子だなと感心しながら色々と話をした。
主に元の世界の事を色々聞かれたが――女性のファッションとか聞かれ、よくわからなかった……適当に妹が着ていた服とか説明したら喜んでいたからいいのかな。
王子たちはあまり話してこなかった、妹たちが暴走しない様にお目付け役として来ていたようだ。
珍しい動物を見に来てはしゃぐ姉妹を抑える兄――みたいな感じに見えてしまった。
話をしていてふと思い出した。
応接室に物珍しいんだか珍しくないんだかよくわからない物がある事を思い出したのだ。
それは、この部屋にあるガラスケース。
確認すると普通に許可をくれたので覗いてみるが――中身は俺の予想通り物が並べられていた。
この世界でいえばオーパーツに該当する元の世界の物品だった。
過去の勇者の持ち物だったらしく、この世界にはなさそうなものばかりだった――でもまあ、だいたいがゴミのようなものばかりだ。
ビニール袋やポケットティッシュの袋や、中身のない化粧品の容器など……元の世界ではありがたみのないものばかりだった。
ただ一つ使えそうなものがあった、それは――災害用手動ライトだ。
ハンドルを回しライトを付けたりラジオを聴いたりできるものだが、これにはUSB端子が付いており横にはケーブルもあった。
王子に言って取り出して見ていいか確認したら、即座に了承してくれた。
ケーブルを手に取り、端子を確認すると……俺のスマホに合致するタイプの端子だった。
内心なんで合致するんだと思いながらもポケットからスマホを取り出し、ハンドルを回すと充電状態になった。
王子達はこれが一体何なのか聞いてきたので簡単に機能を説明し、遠距離で会話が出来て世界中の情報を見ることが出来ると説明したら王子達は驚いていたが――この世界では使えないとわかると落胆していた。
電波がなければ使えないからね……だけど、カメラで撮ってあげたら喜んでいた……妹に入れられた美肌に修正させるアプリのおかげだけどね。
これを貸してもらえないかと王子に言ったが、流石に持ち出すのはまずいとの事でこの部屋内で使用するのは許可をもらった。
明日はこの部屋で充電して明後日の街へ備えようと思う。
王子達から解放された俺は、執事とともに部屋に戻るとメイド達が出迎えてくれる。
案内を終えた執事は、そそくさと出て行ってしまう。
「シクラ様、本日はこの後どうされますか」
「いや、今日はもうやることはないかな?」
「でしたら、王宮内の来賓用浴場がありますのでお入りになられますか?」
「風呂もあるのか、それじゃあ風呂に入ってから寝ようかな」
「わかりました。それでは準備をして参りますのでお待ちください」
カトレアはそう言うと、アイリス以外のメイドを集め出て行った。
アイリスは、俺の着替えを手伝ってくれる。
何故か着替えたのは旅館とかにある浴衣だったんだけどね。
どんだけ日本文化が侵略してるんだ――とは思いながらも、浴衣が楽なのも確かなので無理やり納得しておいた。
着替え終えた俺にアイリスが出してくれた緑茶を飲んでいると、カトレアが来て準備が出来たと言われたので、カトレアとアイリスと共に風呂へ向かう。
風呂は――ツッコミどころが満載の状態に頭を抱えた。
入り口には温泉マークが書いてある暖簾が掛かっていた。
まじかと思いながら中に入ると……ああ……うん……予想どおりの温泉とかにある脱衣所だった。
壁際には棚があり、そこにはカゴとタオルが置いてある。
日本先頭にある普通の脱衣所。
そしてなぜか体重計まで置いてある。
いつのどの時代の勇者がこの状態にしたのかわからないけど……流石にやりすぎだと思ってしまった。
「はあ、とりあえず風呂に入るか……もしかして、中も和風とかじゃないよね……」
そう思いながら服を脱いで腰にタオルを巻いた所で、湯舟があると思われる曇りガラスの向こう側に人影のようなものが見えた。
もしかして、国王とか王子が入っているのかな?
流石にないよなたぶん見間違いだな――そう思いながら扉を開けるとそこには想定外の人達が居たのだ。
白く薄い服を着た、アネモニ、ダイアン、リリーの三人のメイド達が立っていた……まじかよ。
「シクラ様どうぞこちらへ、お背中を流させていただきます。」
アネモニがそう言いながら、俺の手を引いていく。
生まれたままの状態じゃないのでまだいいけのだけれど、お湯を掛けると透けそうなほど薄く、体の線が丸見えである。
そして、丈が異常に短いので非常に目の行き場に困る状況で、どう対応していいいのかわからず、流されるまま――されるがまま洗われてしまう。
流石に異常事態すぎて、息子が反応していないのがまだ良かった。
アネモニが俺を洗い、ダイアンが桶で風呂からお湯を持ってきて、リリーが体が冷えない様にお湯を掛けてくれているようだ。
不意に腰に付けていたタオルを、誰かが引っ張り取ろうとしてくる。
「ちょ、ちょっとまって、それはだめだって! 」
「ですが、それですとお体が洗えないのですが」
タオルを死守しようと、両手でがっちりと抑えて誰がやってるか振り向くと、さっきまで居なかったカトレアとアイリスが居た。
タオルを引っ張っていたのは、不思議そうな顔をしたカトレアだったのだが……屈んだ状態でタオルを引っ張っているものだから、見えてはいけないものが見えてしまった。
何とか視線がそっちに固定しない様に頑張り、体を縮こめるようにして下を向く。
とりあえずこの状況を何とかしなくては、色々と危ない。
「流石にそこは自分で洗うから!というか、カトレアとアイリスはいつの間に入ってきたんだよ」
「シクラ様が入られた後に、私共も服は着替えるのに時間が掛かってしまいますので、先に三人に待機させておりました」
「シクラ様が足早に湯殿に入られたため、急いで着替えたんですよ」
「そもそもなぜ、一緒に入ってきてるんだよ」
そう、そもそも普通なら男女別々の風呂が常識だ。
銭湯とか温泉でも基本は別々だ――例外的に混浴温泉とかはあるけどさ。
「シクラ様のお世話をするのが、私共の務めですから。ご命令であれば出ていきますが……」
「い、いやそこまでは言わないけど、流石に体位は自分で洗うから。みんなも、体が冷えるから早く湯にはいって体を温めて」
不承不承といった感じで、メイド達は下がっていく。
アネモニが俺を洗ってくれていた、タオルと石鹸は置いてある。
な、何とかなった……。
引き下がってくれて良かった、いろんな意味でぎりぎりだった……。
息子が起き上がり、タオルを押し上げ始めていたのだ。
さっさと洗って、湯に使ってしまおう。
ちゃっちゃと体を洗い湯を流して振り返ると、メイド達が隅の方で各々体を洗っている。
着ているものをはだけさせながら洗っているため、下を見ながら湯船につかる。
もちろん、メイド達の方が見えない様に背を向けてである――興味はあるけど流石にそんな覗き見たいなことは出来ないyo!
しばらく浸かっていると、皆湯船に入って来るのはいいんだけど。
「なんでこんな広い風呂なのに、く、くっ付いてくるわけ」
「先ほども言いましたが、私共の務めはシクラ様のお世話をすることですので……ダメでしょうか……」
「だ、ダメじゃないけど」
カトレアは上目遣いをしながら聞いてくる――それは卑怯ですよと思いながら許してしまった。
良いんだけど――美人や可愛い子に囲まれて嬉しいんだけど!
でも流石にこの状況はどこのハーレムかよって感じで現実感ないし……あ、そういえば異世界だった。
そもそも元の世界では全くモテない俺は女性への免疫が全然ないから、こんな状況ではどうしていいかわからない。
流石にダイアンやリリーはそもそも範囲外だからまだいいけど、カトレアやアネモニ、それにアイリスとかは色々とやばい。
「それなら、良かったですわ」
俺がダメじゃないと言ったせいで、ただ恥ずかしがってるだけと思ったのか、カトレアはそう言いながら俺の腕を抱き寄せる。
そして反対側から、アイリスも俺の腕を抱き寄せニコニコ笑顔を向ける。
腕に柔らかな感触と、女性のすべすべした肌の感触がした。
本当に女性特有かは分からないが、俺の妄想力がそれを肯定しているので良いのだ!
まあそれはさておき、今の俺がそんな状況になれば当然の結果が待っている。
先ほどから感じている恥ずかしさ――彼女たちが体を洗っている間ずっとお湯に使っていて温まっている体。
そして、女性にそんなことされたことがない俺は、一気に顔が熱くなっていき結果……頭をくらくらさせながら、のぼせてしまうのであった。
「し、シクラ様! 」
「大丈夫ですか! シクラ様! 」
カトレアとアイリスの声が、遠くに聞こえ俺は意識を失った。
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