第2話 買収
「なぁ、俺殺されるのかな?」
「多分な」
酒場まではそんなに遠くない、だいたい歩いて10分ほどで着く。
おそらくこの男は殺される。
酒場には依頼人の雇ったレベル8くらいの冒険者がゴロゴロいる。
この男では太刀打ちできないだろう。
「一つ提案があるんだがいいかな?」
「なんだ?」
男を連れ酒場へ向かっていると、何か閃いたの前を歩く俺の前へひょいっと飛び出して男はそう言った。
「俺があんたを雇った依頼人よりも高い金額とか出したら守ってくれたりとかしないか?」
「……」
「やっぱりダメか」
「いくらだ?」
「え?」
「具体的にいくら出すのかって?」
「やってくれるのか!」
「額次第だな」
俺は街の治安維持部隊に所属はしているが、ぶっちゃけこの街の治安なんてあんましどうでもいい。
職がなく路頭に迷っていたところ、たまたま貴族の娘を助けたことでその強さが認められ、治安維持部隊に誘われて今に至る。
そんなわけで俺がこの街を守る理由なんて金以外なにもないわけだ。
「100万出す!」
「乗った!」
この依頼により俺の懐に入ってくる金はだいたい15万ほど、それの約10倍出すとは。
この男なかなか羽振りがいいな。
「あ、ありがとよ」
「ああ、気にするなこの街は結局金だからな」
「話が早くて助かるぜ」
さてと無事買収されたわけだが、この先どうするか?
俺がこのまま逃しても依頼人のこの男への恨みがなくならない限り追われることになる。
まぁ別にそこは俺にはどうでもいいんだけど、100万もくれるしせっかくだからなんとかしてあげたい。
買収されたからにはその仕事をきっちりやり遂げたいしな。
「少し状況を整理しよう」
「おう」
「例えばこのまま俺があんたを逃したとしても明日には違う誰かがあんたを殺しにきてしまう」
「お、おう」
「それだと俺的に100万の仕事って感じがしなくてな」
「まぁ確かにな」
「それでだ、いっそのこと今回の依頼人ごと倒すとかどうだろうか?」
「お前、結構大胆だな」
今回の依頼人は闇取引を主に行なっている。
言ってしまえば今目の前にいるこの男よりもよっぽど悪党だ。
そんな悪党なら倒したって問題ないだろう。
「それで作戦なんだが、まずは普通に捕まえたことにして油断したところを一網打尽にしよう」
「おいそれほんとにちゃんと考えたか?」
「ああ、さっき5秒ほど考えた」
「その作戦大丈夫か?」
男はそう言うと不安そうな目で俺の方を見てきた。
まぁ気持ちはわかるけど、ぶっちゃけ俺がいれば大抵のことはどうにでもなると思う。
酒場にはレベル8くらいの冒険者がゴロゴロいるとは思うが、例えるならアリがゾウに挑むようなものなわけで、俺が負けるわけがないのだ。
「ここか?」
「ああそうだ」
依頼人と落ち合う酒場まで来た。
辺りにはこの店以外に酒場のようなお店はなく閑散としている。
まぁいかにも悪党が選びそうなお店って感じだな。
「お、俺はどうすればいい?」
「うーん、色々考えたんだがやはりあんたはここで待っててくれ」
「え、行かなくていいのか?」
「ああ、俺1人の方が楽だからな」
「それもそうだな、わかったここで待ってるよ」
「報酬の100万の準備のことだけ考えててくれ」
「りょ、了解だ」
そう言うと男は近くにあった小屋の裏へ隠れに行った。
「よしはじめるか」
この世界には、剣士、聖職者、弓兵、双剣士、魔法師と五つのジョブがある。
俺はこの中の魔法師というジョブを習得しいることになっている。
普通は1人一つのジョブまでなのだが、俺はレベルが高すぎるためか五つ全部のジョブをおそらく最高レベルで最初から習得していた。
そんな芸当できるの多分俺だけなので、基本誰かにジョブを聞かれたら魔法師と答えるようにはしてるので、肩書きは一応魔法師ということになっているのだ。
「こんちはー」
「お、タクマさん!お待ちしてましたよ」
酒場へ入ると依頼人である、この街の大商人アルトが入り口で待ち構えていた。
おいおいこのおっさん俺が来るまで入り口で待ってたのかよ、凄いな。
「ささ、私の荷馬車を襲った愚かな盗人を引き渡してくださいな」
「そのことなんですけど、すいません今回俺買収されちゃって」
「え?」
「なんで俺今からあんたら倒しますね」
「は?」
「重力魔法発動ー重力操作」
「うっ」
重力操作により俺の周囲まぁだいたいこの店内全体の重力を通常の4倍にした。
「い、いきなりどうして」
「やっぱり金なんで」
さぁてゾウとアリの戦いを始めますか。
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