開幕からレベル100?レベル平均5の世界で俺だけ強すぎる件について。

神崎あら

第1話 レベル差96





 レベル差とは、暴力である。


「おい、なんだお前?」


 レベリア王国首都マンスリー、ここの王政は4年前の革命により新しくなった。

 そのためまだ法整備行き届いてなく、治安が悪い。

 国がそんな状態のため街には犯罪が蔓延っていた。

 

「俺は一応この国の治安維持部隊をやっているものだ」

「けっ、なんだお役人かよ、なんのようだ?」


 俺が治安維持部隊とわかると男の顔色が変わり、何か隠し事があるのか俺から目を逸らした。


「ちょっと違うが……まぁいいか、あんた昨日商人の荷馬車を襲ったろ?」

「あ?なんだよ、それがどうしたってんだよ、この街じゃそんなの普通だろ」

「まぁ普通ではあるが、その荷馬車の主人が怒っててな、あんたの首を持ってこいって言ってるんだわ」

「なんだよそれ!そいつはどこの誰だよ」


 そう言って男は懐からナイフを出しやる気まんまんという感じになった。

 えーと、レベルは4で使える魔法は特になし、固有スキルは交渉上手か。

 一般人でこのレベルはまぁ高い方だな、ただ固有スキル交渉上手ってなんだよそれ。


「うーんと、守秘義務があるから言えないけどまぁ偉い人かな」

「そうかよ!」


 男は俺に返答するのと同時にナイフの切先を俺の腹目掛けて突き出した。

 避けてもいいんだけど、ここは心を折るためにも腹で受けていいかもな。


『ガキン』

「嘘だろ」


 男のナイフは見事に俺の腹に届いたが、傷をつけることはなく、逆にナイフが折れた。


「単純にさ、俺のレベル100なんだよね」

「は?何言ってんだお前、レベル100?」

「うん、わかるよ言いたいことは、公式で歴代最高レベルは12ってのは皆んな知ってることだ」

「……」

「でもな、上には上がいてそのまた上に俺がいるって感じかな」

「こいつやべぇ」


 男は俺の話を聞くなり、すぐさまダッシュで逃げ出した。

 まぁ普通は信じないだろうけどナイフを腹で折れば信じるわな。

 ま、逃がしはしないけど。

 固有スキル発動ー簡易誘導。


「とりあえず、あの壁の方へ行ってくれ」

「な、なんだ身体が勝手に!」


 男はそのまま壁にぶつかった。

 固有スキルー簡易誘導。

 効果範囲は俺から半径2〜4mまでだが、その範囲内での対象の行動を指定した場所に誘導できるスキルである。

 それを使って俺は男を壁へと誘導した。


「痛てぇ」

「そのまま大人しくしててくれないか」

「うるせぇ」

 

 男はそう言って俺に殴りかかってきた。

 もうヤケクソだな。


「なっ、当たらねぇ」


 男の拳は俺に届く事なく空を切るか壁へと当たっていった。

 簡易誘導はまだ使ってるので、男の拳は全部俺に当たらないように誘導している。

 さて適当にあしらってこの男が疲れたら連れて行くか。




 それから3分ほど男は俺に向かってきたが、拳が当たらないのに気付いたのか、大人しくなった。


「わかったよ、もう諦めてあんたについていくよ」

「なんだもう諦めるのか?」

「流石にレベル差96は覆せないし観念するよ」

「ああその方が傷つかなくて済むしな」


 そのまま男は両手をあげて降参だと言って大人しくなった。

 レベル差が1違うと基礎パラメータがだいたいトータルで200程違う、これはわかりやすく言えば今まで50メートルを7秒台で走っていた人が、レベルが一つ上がっただけで5秒台で走れるようになるという事になる。

 それが96も違うということはつまり、この男と俺はもはや生き物としての次元が違うということになる。


「なぁ俺は殺されるのか?」

「……とりあえず大人しく捕まってくれた礼に俺はあんたを殺さないよ」

「あ、ありがとよ」


 すっかり無抵抗になった男を連れ俺は、依頼者の待つ裏街の酒場へと向かった。

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