第48話 錬金先輩、縦横無尽②

「まったく、こんな暇本当はないのにさ。お母さん、世界情勢はどんな感じ?」

『今はまだ現存装備で大丈夫なようよー』


<コメント>

:どういうこと?

:まさか全世界同時生配信?

:《うさぎ博士》それについては私から説明しよう

:ローディック師!?

:《アヒル工場長》俺もいるぞ

:!?

:誰だっけ?

:コーディやん!

:《ドリィ》俺も犬耳工場長の方が良かった!

:あの炎上配信の戦犯が勢揃いなの草

:《猫耳錬金術師》おいおい僕を忘れてもらっちゃ困るな

:先輩きちゃー

:センパイやん!

:あれ、リコちゃんがセンパイなんじゃ、あれ?

:《猫耳錬金術師》僕が子供の晴れ舞台を見逃すわけないだろ?

:やっぱり後輩ちゃんとの子だったんか

:隠し子疑惑!

:誰との子供だよ!

:最低! 私とは遊びだったのね!


「ちょ、恥ずいからやめてくれない?」

「パッパ!」


<コメント>

:ん?

:あれ? メリアちゃんてアメリアちゃんの娘って話じゃ?

:誰がパパだって?

:候補①コーディ 候補②ガンドルフ 候補③ローディック師

:でもパパは日本で暮らしてるって

:じゃあガンドルフか?

:でも先輩の登場タイミングで呼んだような?

:おいおいおい

:あいつ死んだわ

:修羅場? 修羅場?


「マッマはセンパイがパッパだったら良いなっていつも言ってた!」


<コメント>

:草

:ただの願望じゃねーか!

:いや、実際稼ぎ頭として十分なスペックだし

:《猫耳錬金術師》後輩が何か企んでると思ったらホムンクルスでも仕込んだか

:ホムンクルスwww

:いや、出会って三年であんなでかい子居るわけねーし

:あの見た目で三歳児かー せや

:↑通報しました

:↑↑通報しました

:ホムンクルスだから逆にすぐ暴走すんのか

:言われて納得メリアちゃんの秘密


「僕は普通に両親の子供だから」


<コメント>

:疑いようがないくらいクリソツなんよ

:太々しさが逆に先輩かと思ったくらいだしな!

:本人がご登場した時点で本物の線は消えたが

:《猫耳錬金術師》そんなわけで今回は趣向を変えて娘主体で僕たちの実験物を全世界に向けてNNPで供給していく作戦だ

:カードは?

:《猫耳錬金術師》需要に対して供給が圧倒的に足りてないので追々な

:《猫耳錬金術師》ただしそれ以外を武具で揃えていくから期待しててくれ

:集められたメンツが曲者しかいない時点で

:《ガイウス》ミックスドリンカー、俺にもくれ!

:あれって誰でも扱えんの?


「え? あー、アタシの肉体スペックはマッマと一緒だから」


<コメント>

:そりゃブン回せるわけだ

:実質アメリア二人なんよ

:壊れるなぁ

:この技術、他のSランクも出来るん?


出来るわけねーだろ!

ちなみに猫耳錬金術師の方は思考入力デバイスでの打ち込みだ。

喋りながらも考えてれば打ち込める優れもの。

後輩がスライムになったことで実現した技術である。


ちなみにクイーンになる前から使えた。今まで使い道がなかったけど、これはいいやとここで使ってる。

どうせ他の職人も巻き込むのに、僕だけ不参加は怪しいもんな。

なお、アイテムは全て後出しだ。

じゃんけんでも最強と言える手法、使わないわけもない。


「バカ言ってないで次行くよ。三匹目からは僕が受け持つ」

「大丈夫?」

「ドーピング必須だけどやれなくはないよ。というわけで僕も動くからよろしく」

「わかった!」


<コメント>

:※ドーピングしても普通は無理です

:実際道中の、他のSランク倒せるん?

:《キング》前回の封印指定装備があれば余裕

:あれは無しで

:《トール》あれ無しだと無理っすね

:《カシム》俺たちにもあれ回してくれよー


『そう言うのは払うもん払ってから言ってくださいねー^^』


<コメント>

:貸し出しなのにアホみたいに高いの草

:《カシム》あれ払ったのに自分のものにならないからクソ

:アホみたいに高いもんな

:普通はその100倍する件

:《セヴィオ》お前が貧乏性なだけ

:そもそもアレ、アイテムを買ったおまけで作れる武器だからな

:おまけの威力じゃねーのよ

:普通はポイントって集めて自社製品5%引きとかそういうのなのよ

:なんで自社製品以上のもんをポンと渡すのかね

:まずその金属の取り扱いが国際法に触れるから貸し出しになる

:利用権システムは実際理に適ってるんだよな

:《ロギン》俺はアレ、ありがたく使ってるけど?

:強いから欲しくなるけど維持費はクソ高いから貸し出しは残当

:貧乏人でも使えるからありがたいよ


何やらコメントがどうでもいい内容で流れていく。


--ENCOUNT:赤目三首黒ドラゴン×3--


言ってる側から3匹到来。バックステップで態勢を横に崩しながら射撃。

態勢立て直し時間を稼ぐようにメリアに呼びかける。


「メリア!」

「任された!」


<コメント>

:細切れアタックつよ!

:あの瞬間に目玉に銃撃全ヒットさせてるリコちゃんも相当やるぞ

:もちろん?

:防御貫通入れてますよねーwww

:知ってた

:ってリコちゃん消えた?

:現れた! ドラゴンの真上!

:アレって転送バレットやん!

:トールしか扱えないんじゃ?

:《トール》これは俺っちの後継者が出てきたっすか?

:そして真上から〜?

:カード5枚差してのバーストアタック!

:うおっまぶし!

:うおっまぶし!

:うおっまぶし!

:うおっまぶし!

:うおっまぶし!


灼熱ブレス【威力200】+防御貫通【-200】+防御貫通【-300】+呪い付与【威力200】+プレス【物理+300】+カチカチスライム君の連携アタックだ!


:アレってブレス?

:ドラゴンに効くわけ……

:いや、その場に磔にされてる!

:どんな効果乗ったんだ?ブレスはブラフで受けさせるために紛れ込ませたんか

:そこに出るメリアちゃんが〜!

:ドラゴンは出荷よー×3

:(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)そんなー

:(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)そんなー

:(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)そんなー

:まさかの秒殺は草

:メリアちゃんの突撃に合わせた速度で転移か、確かに銃弾の速度で動ければ

:メリアちゃんの細切れアタック、強いけど隙デカいもんな

:それをリコちゃんが時間を稼ぐわけか

:今まで同一ドラゴンが出てこない件

:全部カウントしてるのに、一匹から増えないもんな


「お、スキル化成功。なになに〜?」

『〝呪い付与ですね。威力400です〟』

(物理? 魔法?)

『〝呪いはエレメンタルアタックなので精神ですね〟』

(うわ、それ回避できないやつじゃん)

『〝上位龍は耐性を持ってますよ〟』

(それと合わせて使うか、バレットにして打ち込むかだな)

『〝装備品に耐性つけますよ?〟』

(じゃあそのまま情報出すか)

『〝はい〟』


<コメント>

:スキル効果何?

:今まで特に秘匿せずに出してたのに急に言い淀んだな

:やばいやつが来たんだろ

:今までのも十分やばい件


「あー、もう大体わかったと思うけど、防御不可の呪いを受けます。威力400の精神攻撃っぽいですね。睡眠、筋萎縮、視界不良が同時にかかって弱体化させられます。あと貫通効果で防御-400ですね。これを吐かれる前に仕留められて良かったです」


<コメント>

:はい、クソー

:は?

:回避不可とかどうすんのよ

:攻撃される前に倒せとか無理ゲーやんけ

:実際に倒してるからな


「ちなみに呪い無効は三つ首青目白龍から入手できる耐性で防げます。相手がチャージ不要で連射してきた場合は祈るしかないですね」


<コメント>

:対抗策はあるのか

:ならまだ対抗できる……って見つけても倒せねーよ!


ここで企画していた案件の発表をする。

顧客が今最も求めるサービスとは?

そして一番懸念しているものとは?

言わずもがなNNP製品の利用料だろう。

その制限を一部だが解放する宣言をした。

リコが知ってるのはおかしいので《猫耳錬金術師》が宣言する事で、リコには被害がおっ被らない完璧な計画だ!


<コメント>

:《猫耳錬金術師》と、いうわけでダンジョン災害勃発中の地域限定でNNP商品の貸し出し制限を一部解除します。もちろん、犯罪者は利用不可ですが貸出の際にかかる請求額を取り払いますので各々に合った武器を持って地元を守ろうキャンペーンを開催しまぁす!

:軽い

:軽いなぁ

:言ってることは相当やべーけど


そう、相当ヤバい。なんなら会社の経営が傾くまであるが、武器を手に取る人類が生き延びるかどうかの瀬戸際で金のことばかり考えてる場合じゃないのも確かである。


<コメント>

:《猫耳錬金術師》僕だって重い雰囲気を壊すつもりで言ってるよ。それに、ハワイの二の舞になって欲しくない。ダンジョン災害で故郷を失った人達だっているだろう。そのタイミングに僕は間に合わなかった。だが今なら間に合う。僕の発明が世界を救う鍵となるなら、それを惜しむつもりはない! ただカード関連はスキル化を成功させなきゃダメなので倒せるようになってね!

:《カシム》神イベント来た! ちょっと祖国救ってくる!

:《キング》それって封印指定武器の解除もされるのか?

:《猫耳錬金術師》今現在、必要としてるなら使ってくれても構わない

:《アヒル工場長》そのための俺らか

:《うさぎ博士》ほっほ、老骨に鞭を打つとは

:《ドリィ》だが、世界のためとなれば後ろ指は刺されんよなぁ?

:《猫耳錬金術師》責任は僕が取る、戦える者は武器を取れ!


『あと、モンスター化した人類向けのフードも一部開放してまーす。獣人になったからと落ち込まずに生きていきましょうね!』


<コメント>

:獣人メーカー作った会社がよく言うぜ

:だが、飯が合わずに身内を害する犠牲は減るんだぜ?

:俺、恋人がトカゲ人間になっちゃったんだ。彼女も食べてくれるかな?

:その恋人、撮れ高狙ってた?

:別に恋人がマスコミ関係者とかそう言うのは今どうでもいいだろ?

:最終的にこれを売り込むためのパフォーマンスな気さえしてくるぜ

:それな、用意周到にも程がある

:《猫耳錬金術師》僕だって後輩が身重にならなきゃそこまで考えなかったさ

:ん?

:あれ? 後輩ちゃんの身重ってどう言う状態のこと指すんだ?


『私、スライムに転生したって言いましたよね? スライム人間ですよ!』


画面上で後輩がぴょこぴょこ跳ねる。ゲーミング猫耳となって僕の皮の上で踊る。


<コメント>

:は?

:は?

:は?

:は?

:はぁあああああああああ!?

:アレって壁キャラからスライムキャラに変わったって意味じゃなく……

:そっちの意味の転生だったんか!

:うわ、そりゃセンパイ復帰諦める訳だ

:つーか、よく理性保てるね

:前よりイキイキしてるのに重体ってどう言うことかと思ったわ

:自我強いもんなぁ

:後輩ちゃんが強いのは性癖です。本当にありがとうございました

:ここ、娘ちゃんのチャンネルです

:記念すべき第一回で同接えぐいことになってるんですけど……?

:これ日本からの中継なのに全国配信かつ、参加メンバーがヤバいからな


言われてみたらそうだ。リコの番組第一回目で、同接600万人は相変わらず頭おかしい。ただ自社製品でドラゴンをブッコロしてるだけなのにおかしいなぁ?

海外で出てきたやつの参考になればと思ったのに、思ったより拡散が早いな。

アーカイブ化してからが本番だと思ったのに。


『そんな訳でぇ、ゴミ回収システムは、私の餌回収システムでもあったんです。わーパチパチ』

「お母さん、今その情報言う必要ある?」

『あらリコちゃん、お母さんにだっていい顔させてくれたっていいでしょ?』

「ここ、僕のチャンネルなのに……」

「リコ、鬱憤はあいつらで晴そ?」

「そだね。うらーー!」

「ウラーーー!」


<コメント>

:かわいい

:かわいい

:かわいいけどやってることえげつない

:お母さんが娘のチャンネル乗っとるから娘さん拗ねちゃったでしょ!

:責任とって!

:ほらー、お子さん拗ねてドラゴン細切れにしちゃった

:※普通は拗ねてできることじゃありません

:※彼女は特殊な訓練を受けてます

:そういやさ、だんだん出てくるドラゴンの首の数多くなってきてね?


画面上に現れる討伐数は1から2に伸びない代わりに首の本数だけが増えていくことで総数を伸ばしていることに誰か気付いたな?

そうなのだ。ヤケクソになって倒してるのもあるけど、ひとつとして同個体が出てこないのが気になった。

大塚君を攫った理由と何か関係あるんじゃないかと僕は勘繰っている。

ただの勘で終わるかもしれないけど、まぁそれはそれでヨシ!


<コメント>

:ワシントンのSSランクダンジョンのボスの首って何本だっけ?

:9本だな

:俗に言う八岐大蛇

:で、今は5……6、7本とか余裕で出てきたな

:あれ、ここ普通にSSランクダンジョンじゃね?

:そりゃそうよ

:三つ首ドラゴン出てきたあたりから普通にS上位なんよ

:なんでタッグで攻略できてるんですかね?

:トイレ休憩あり

:シャワー休憩あり

:戦闘シーン以外くっそほのぼのしてるの何?

:悲壮感まるでないぞ?

:武器以上にこの二人のメンタルがヤバい

:ドラゴンが強くなってもまるで物おじしないもんな


いや、やばくなったら逃げればいいしね。


とかなんとか言ってる間に大広間についた。

全ての死体を回収して、そして感動のご対面! って、どっちが大塚君?


広間ではロリドラゴンが抱っこしてスヤスヤ眠ってる。

近くには卵が何個か転がっており、それが孵化直前である事を後輩のサーチで確認する。


『〝先輩、あっちの尻尾がピンク色の方が大塚さんです〟』

(え、どれ?)


赤とピンク。正直部屋が赤く彩られてるのでどっちがどっちかわからん。


『〝仕方ないですねぇ。私を投げてください。捕食します〟』


後輩がそう言うので分体を卵に向かって投げると音もなく卵に吸い付き、瞬く間に消化した。


<コメント>

:ふぁーーwww

:後輩ちゃん!?

:ドラゴンの卵捕食しやがった!

:そして寝てるドラゴンの尻尾まで包んで消化してる!

:やることがせこい!

:と言うかよく起きないな

:尻尾を切り慣れてるのかもな?

:どんなトカゲ生送ってれば、そんな負け犬トカゲ生送れるんだ?


『〝お、私キングに昇進しました!〟』

(どう言うこと?)

『〝どうやら大塚さんを捕食したことで人化の術を獲得できたみたいです。ちょっと変身してみますね?〟』


そう言って、後輩は大塚君と思しきロリドラゴンにそっくりの子供を作った。

そして寝てる大塚君に転送玉をくっつけ、登録させた偽物と交換、僕のカードに入った。


僕はメリアと顔を見合わせ、その場を後にした。

居合わせたドラゴンは全部回収した。もう増えないとは思うが、あとは若い二人の時間を作ってあげた。


よぉし! ミッションコンプリート!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『ん、んぅ……なんじゃ、随分と静かじゃな。なんぞあったのか?』


コアは起き出し、いつもなら子供達の騒がしい『お腹すいた』の声を聞くものだが、その声すら上がらずに不思議に思っていた。


『ふふふ、人間共を迎え撃っているのだな? だからって我の近くから一匹もいなくなるとは珍しいの。相手がそこまでの力を秘めてるとは思わなんだ。じゃからこそお主が必要じゃ、アキラ』


ガブリ、と赤魔から肩口まで丸齧りする。

本人にとっては甘噛みのつもりでも、軽いスプラッタ映像だ。

しかしいつものような味がしない。

まるで水にでも口をつけたかのような無味無臭。


そこで内側から呼びかける声。


『初めまして、赤のコア』

『なんじゃ貴様! 何処にいる!?』

『私は青のコア、強欲の青とだけ覚えてくだされば結構です。暴食の赤』

『魔王!? 七大魔王がどうして我の新居に!? 見張りは何をしておった!』

『全て私のお腹の中です。暴食のお株を取ってしまって申し訳ありませんが、日本は私のテリトリーにするつもりなのであなたは出ていってください』

『嫌じゃ! せっかく番を見つけたのじゃぞ! どうして拠点を移す必要がある!?』

『何故移すか? そんなものは私の番があなたの子を全て駆逐したからに決まってるでしょう?』

『は?』


言われてる意味がわからず、赤のコアは聞き返す。

言葉の意味を理解したくないように自問自答した。


『倒した? 誰が?』

『私の番が、あなたの子供を全部倒して私に献上してくれましたよ。そしてあなたの番も大変美味でした』

『貴様! 我の番にまで手をかけたか!』

『あまりにも無防備でしたので、つい』


ふざけているのか、青のコアと名乗る物体は人型を取るなり頭に拳をコツンとぶつけて舌を出す。そのポーズがやけに精神をかき乱す。

本能的に馬鹿にされているのだと直感した。


『しね』


殺意もプレッシャーもなく放たれた貫手は容易くその人形の心臓を刺し貫く。

だがスライムはコアを破壊されない限り死亡しない。

その上でここにあるのは分体だ。


『ぶっぶー、ハズレでぇす』


まるで黒ひげ危機一髪のような当たりが出るまで死にませんと言い出す青のコア。本題はそこじゃないのに赤のコア赤龍王はどうすれば殺せるかだけを念頭に置いた。

それが青のコア、水霊王の企みとも知らずに。


『ほらほら、どうしました? 私を殺さないとあなたの番はどんどん溶かされちゃいますよ?』


見せつけるように溶けていくピンク色の尻尾。

それは赤龍王の番の証。非常食としての役目も担っていたアキラの残したものだった。

本来なら溶かされてもすぐに再生する筈だ。しかしそうならないのは再生よりも溶かす力が強いからではないか?

赤龍王はそう思い至る。


これは殿を務めた後輩、望月ヒカリが、地下に赤龍王を封じ込める作戦だった。

そして時間を精一杯稼いだあと、その肉体の代わりに数百個の炸裂玉と入れ替わり、それに殴りかかった赤龍王が致命傷を負うほどの怪我をした。


爆心地になった場所にヒカリは再びやってきて、瀕死の赤龍王を回収、取り込んだ。こうしてドラゴンカーニバルは人知れず収束した。


そして赤龍王が再び目を覚ました風景は……


「起きたか、コア?」


懐かしき番の姿。しかしその顔に食いつこうにも体が動かず、伸ばした手のあまりの貧弱さに目眩を覚えた。


「あぇ? こりぇ、にゃに?」


言葉もおぼつかない。それはまるで生まれた時と同様に全てが朧げだった。

しかし記憶はしっかりとある。あの憎き青のコアをぶん殴って番を奪い取る。

赤のコアはそれだけを行動指針として生きるつもりだった。


「あら、ようやくお目覚め? サンディちゃん」


次に目にしたのは憎き存在。

よくも顔を見せたものだ。積年の恨み、今ここで晴らしてみせると手を伸ばすが、ひょいと躱されて持ち上げられてしまった。


「いやぁ、はなしぇ!」

「もう、お母さんに手をあげようなんて悪い子ね? 貴女はもうダンジョンに縛られなくても良くなったの。これからはうちの子として育てますからね! 覚悟しておきなさい!」

「ちなみに私も一緒だそうだ。私が姉で、コアが妹だって」

「コアなんてダサい名前……カサンドラにシルビアって名付けたんだからそっちで名乗ってくれる?」


!?!?!?!?!?

思考が理解を拒む。意味がわからない。

自分は負けたのか? では何故存在が消滅していない。

何故だ、何故だ。何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だなz……


思考の迷宮に閉じ込められた赤のコアことカサンドラはじっとりと見つめる視線を感じ取って真上を向く。

そこでは青のコアがなんとも言えない笑みを浮かべていた。

思わず背筋がゾッとしてしまう。


「観念しよう、サンディ」

「私達は彼女の胎から産まれ直し、肉体はスライムにされてしまってる。魂以外が全て消滅してしまったんだ」

「なんでそんな面倒なことを!?」

「何故って……(ニチャァア)」

「ヒッ」


未来の姿を想像して、ヒカリは微笑んだ。

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