第45話 人龍対談(side大塚アキラ)

晶と呼ばれた少女に連れられ、クララことアキラは想像以上に苦痛を伴う生活を送ることになる。


おおよそ人間らしい生活。

調理された食事。毎日お風呂。スキンケア。

女子としてのおおよそをドラゴンで済ませてしまったアキラが、今更人間の女として扱われて最初に思った感想は『ダルい』だった。


なんにつけてもご飯がまずい。

服は動きづらくて、やっぱり今までの服の方が機能性がいい。


(そう考えるとコア様との暮らしは少し痛いけど幸せだったな。どうして私はあの場所から逃げ出したりしたんだろう?)


もう人間とは大きく異なった自分。ドラゴンの群れでの生活を懐かしく思っている自分。人間社会で暮らせば暮らすほど、自分のいる場所はここじゃないと痛感した。


「クララちゃん、お食事は済んだ?」

「これ、味しない」

「そんな筈は……やはりモンスター化した影響かしら? モンスターのお肉を食べたことは?」

「一回だけ、ある」


嘘だ。数えきれないほど食べた。

最初こそ血なまぐさく何度も吐いた。

しかし食べていくうちにこれこそが自分の餌だと思えるようになった。

母になって子に食わせる時にそう思い込むようになったのだと思ったが、普通に肉体が暮らしに適応したのだ。今からすればあの味こそ懐かしい。


故に人間社会での暮らしが窮屈で仕方がない。

ダンジョンに帰りたい。

今はコアに申し訳ないことをしたと思ってさえいた。

でも今帰ればどうなるかなんて流石にアキラだってわかってる。


「やはり人間の食事での餌付けはダメね。分かりました。モンスターの肉を分けてもらえるように掛け合ってみます」

「いいの?」

「クララちゃんが少しづつみんなに認めてもらえるようになる為よ。だから約束して、絶対に人間に手はあげないって」


飼い主に手を加えられないようになっているのに、何故そんなことを再三言い聞かせるのだろう?

もしかしてこの首輪の拘束は人類全部に適応してない?

だったらまだチャンスはあるかもしれないか。

今はまだ様子を伺おう。

他にも私と同じお仲間(モンスター化した人類)が居ると聞く。

どこかで隠れて済んでたりしたらお仲間に入れてもらえないだろうか?


コアの元に帰ると言う考えは今のアキラには無い。

もし見つかったら何度食い殺されるかわからないくらい悲しませてしまった。

特にNTRの知識を与えた後だ。


よもや自分がそこから抜け出せるチャンスが舞い込むとは思いもよらなかったからこその執着をつけたが、今になって考えたらバカなことをしたと思う。


「わかった」


今はこれで様子を見る。隙を見せたら、その時脱出する。

闘争経路を考えておかないと。

そう考えるアキラだが……晶は非常に用心深く、クララアキラを移動させる時は目隠しを徹底した。

アキラの幼稚な考えなど見透かされていたのだ!


「秋生、クララちゃんにモンスターのお肉を与えたいと思うの」

「正気?」

「お料理、お口に合わなかった?」

「ええ、味がしない。まずいとばかり。人であった頃の味覚を失ってしまったみたいなの」

「やはり殺すしか……」


早とちりする優希に秋生が待ったをかけた。


「ダメだよ優希。僕たちなりに師匠を理解する為にこの子を率いれた。師匠だってずっとこんな気持ちを抱えていたんだ。僕たちが投げ出したらますます理解は得られないよ?」

「師匠って誰?」

「聖夜リコって人。今は望月リコって名乗ってる」

「望月……うっあたまが」

「クララちゃん! 大丈夫?」


望月と言う名を聞いた時、後頭部をハンマーで殴られたような衝撃が走った。

望月、望月ヒカリ。

あの女のおかげで私の……俺の人生はめちゃくちゃになったんだ!


「うぁああああ! うがぁああああああああ!!」

「きゃ! 急に暴れ始めてどうしたの!」

「許さない! 望月ヒカリぃいいいいいいいい!」

「晶!」

「取り押さえてるけど、凄い力よ! 今までこんな力出したことなかったのに。急にどうして?」

「望月ヒカリさんと面識があるとか?」

「こんな小さい子が?」

「そもそも望月ヒカリさんて誰だ?」


秋生が話についていけずに晶達に話を振る。

その会話を続けたのは優希だった。


「たぶん、師匠の親戚のお姉さんよ」

「師匠の? だったら……モンスター化した可能性がある身内って?」

「その可能性はあるわね。あんなに慕っていたのだし」

「え、モンスター化した?」


そんな話が聞こえてきた時。

どこかでザマアミロ! とスッキリする自分がいた。

散々人生を引っ掻き回した相手がモンスターと化した。

アキラだってモンスター化してしまったが、自我は残ってる。

そう言う意味では勝ち組だ。


なんだよ、やっぱり俺は優れてるんじゃないか。

ちょっと顔が広いからってイキってた罰が当たったんだな。

そう思うと恨みがするすると抜けていった。

もう心の中の強い恨みはない。


「ちょっと取り乱した。大丈夫、もう落ち着いたから」

「クララちゃん、望月ヒカリさんとはどこで出会ったの? よかったら詳しく教えてくれる?」

「え?」


まさかここにきて過去を掘り返されるとは思いもしなかったアキラ。

そこで油断を誘う為にも自分はいい年齢を行っていて、更には既婚者であることを暴露した。世間体が悪いので家族とは別居中であることは伏せていたが、とある製薬会社に勤めていたことまでは話した。そこでハイポーションの部署を担当していたことも。


唯一それが他者に優れるところだと自負しているから、口から出まかせがするすると出てくる。


それを聞いた秋生が怪訝そうに尋ねた。


「クララ、君の名前を改めて聞いていいかな?」

「なんだよ。アキラだって言ってるじゃん」

「姓は?」

「オオツカだって」

「オオツカアキラ……大塚晃?」

「そう、それそれ! なんで知ってるんだ!」

「秋生……お知り合い?」

「ねぇ、大塚君、この子ってもしかして……」

「ああ、僕たちと別居中の父さんだ。どうしてこんな姿に……」


父。そう聞いて初めて自分の目の前にいる子供が息子だと気付く。


「アキオ!? お前アキオなのか!!」

「やっぱり父さんなんだね。いったい今までどこをほっつき歩いてたのさ」

「ぐぬぅ……言いたくない」


よりにもよって、拾われた先に身内が居た。

逃げ出した先が家族の元となってはうまく逃げ出せるかわからない。

最後に出会ったのはもう3年も前。

あの父親を尊敬していた自慢の息子は、少し見ないうちにすっかり擦り切れていた。

もう自分のイエスマンになどなってくれない気配を纏わせている。


「お互い、言いたいこともあるでしょうが。まずは今日の目標よ」

「納得いかないけど納得するしかないんだよね。わかった。父さんもここから逃げ出そうなんて考えないで。今は自分の身の安全を守ることだけ考えててよ。僕らも僕らで考えてるからさ」

「その師匠とか言う奴みたいにか?」

「うん、そうだね……師匠は本気でモンスター化した人間を元に戻そうと考えている。僕たちもその考えを理解するようにクララ父さんを引き取った。まさかここまで手がかかるとは思いもしなかったよ」


同じ名前で呼ばれているにもかかわらず、今までどこか同情的な感情は消え失せていた。突き放すような口調。それは自分の立ち位置的にも拙いものだと察するアキラ。


「晶、クララ父さんをしっかり管理してて。きっと今も逃げ出す算段を立ててる。父さんが居なくなってから僕たち家族がどれだけ辛い目に遭ってきたか味合わせる必要がある。そして師匠のことも、だからお願い」

「分かりましたわ。不肖小早川晶、許嫁の約束を守ると誓いましょう」

「お前、小早川昭孝の娘だったのか!」

「そうよ。今気づいたの? 義父さん?」


よりにもよって今一番会いたくない男の顔がチラついた。

小早川昭孝。その男は大塚晃と同様に口の軽い男であった。

そして似た性格をしているのもあって絶賛同族嫌悪中。

失脚したのを良いことに今まで結託していた悪事をまとめて暴露していたしないか急にあたまが痛くなってくる。


そして今自分の置かれてる状況が限りなく脱出不可能であることを知った。

当時あの男から聞かされていたのだ。娘がわがままで困る、と。

あの男をして辟易させるほどの唯我独尊ぶりだと聞く。

それが自分の飼い主だと聞かされて、表向きダルイと思われた感情が砂上の楼閣であることに気付かされた。


逃げなきゃ。逃げなきゃ自分の命が危うい。

アキラはそう考えるようになっていた。


「その婚約は父さんが失脚した時に白紙になっただろ?」

「秋生のお父様との口約束の件はね、今お父様は個人的にBランク探索者である大塚秋生を気に入って縁談をもし混んでいるのよ」

「聞いてない」

「今言ったもの。よかったわ、ここにきて蒸発中のお父様が見つかって」

「望んだ格好じゃなかったけどね」

「それは! 私が! 一番思ってること!」


アキラが反抗するように大声を上げる。

失脚からの転落人生は男の尊厳を奪われてからあまりにも無惨に転がり続けた。

まるで水の流れの早いウォータープールのようだ。


「どんな事情があったかは聞かないよ。どちらにせよ、大塚家はもうおしまいだ。父さんの蒸発、母さんの使い込み。僕の良かれと思った行動は全て裏目に出た」

菜緒母さんが何かしたのか? 秋生をあんなに可愛がってたじゃないか」

「可愛がる……そうだね、可愛いがられてたのは事実。僕は母さんを愛していたよ。でもそれは生活に困窮する迄だね。母さんはお金がなくなっても父さんがいた時の暮らしが忘れられないようだった。父さんの遺した貯金は一年も経たずに消えたよ。母さんは一度たりとも働かず、生活水準を下げることを嫌った。僕は母さんの生活費を稼ぐ為に当時中学生だったにもかかわらず探索者に志願した。来る日も来る日も雀の涙の稼ぎ。でも母さんは僕の苦労をよそに豪遊してたんだ」


募る、恨み節。

だからだろうか、自分に向けられる感情よりも母親に向けられる感情の方が強いと感じたのは。

今のアキラにとって、息子の言い分もわからないでもない。

一度母親をやったからこそわかる。菜緒は家事も育児も人任せだったと。

自分が楽することばかり優先して、他者に迷惑をかけてる自覚が欠如しているのだ。

少しくらい自分で料理してみたらどうだと促したこともあったが、その日から半年口を聞いてもらえなかった事からこれは言っても無駄だなと諦めた事がある。

実家が太いから、優秀な娘だとは限らないのだ。

家庭的な娘で、専業主婦になることも厭わない理想のタイプは幻想だったと思う。


だが逆に、その点でなら突破口があると勘付いたアキラ。

息子を皮切りにうまくこちら側に誘い込もうと企む。


「分かる、分かるぞ秋生。母さんは昔から家事育児が苦手と口にする人だった。自分がするよりプロに任せた方が安全だし確実だ、金ならある。が口癖でな」

「そうだね。母さんが優秀なのはお金が回ってる時だった。お金が尽きた時は、なんて不様な人だろうって……でもその原因を作ったのは他でもない、父さんだけどね?」


籠絡失敗! 多感な時期に蒸発した恨み節はアキラの単純思考を粉砕した!

もうどこを踏んでも地雷原だと確信したアキラは黙って従うことにした。

そうしなきゃ、本気で殺される。そんな殺気をヒシヒシと感じるのだ。


そして運命の日。

ダンジョン災害が起こる数時間前に、校内ダンジョンに集められた秋生達はテイムモンスターの入場も許可できないかと相談していた。


「トカゲ人間ですか?」

「はい。本人はドラゴンだと称してますが、なにぶんと虚言癖が強いもので。得意技能も『噛み付く』『壁歩き』『尻尾を切る』とトカゲの特徴しか持ち合わせ

ておらず、どこまで信用したものやらと」

「ブレスを吐く、空を飛ぶとかは?」

「持ち合わせておりませんわ」

「ならばそこまで危険性は無さそうですね、ですが安全性を最優先して他のグループとの同行はせず、アタックは最後尾に回ってもらえば大丈夫そうです」

「本当ですか! 実は彼女、人間の作る食事には一切食指が向かないようでして。なのでモンスターのいらない部分を与えようと思いまして」

「組合で最近出回ってるカードシステムのようなものですか?」

「ええ、思想こそ違いますが、ダンジョンに死体を戻さず、こちら側の戦力増強に繋げるものと思っていただければ」

「了解しました」


案内役は節穴のような観察眼で、アキラをそう判断した。

久しぶりのモンスター肉と聞いてウキウキのアキラ。

もうたべれるのならなんでも良いとさえ思っていた。


なので、今一番会いたくない存在と出会ってしまった時、身体中から脂汗が流れ出るのを感じ取っていた。


「人型の女の子?」


どろり、と嫌な気配がまとわりつく。

まるで気温差で発する空気の壁が、油気を含むような層を持っていた。

息が苦しく、意識が虚になる。

それがプレッシャーによるものだと気がついた時、アキラはモテる最大限の力で息子達を逃がそうと声を発した。


「逃げて! ドラゴンの王だ!!」

「ドラゴンの、王?」


小さくて可愛いのに王?

またクララの虚言癖だろうと取りつく島のない三人。


ああ、なんてことだ。この三人はここで死ぬ。

自分が我が身可愛さで嘘八百を並べ立てたせいだ。


『探したぞ、アキラ。随分と長いお暇だったな。子供達が随分と減った。また増やすぞ』


それは決定事項。同種族の王の決定にクイーンが決定を覆すことはできない。

万事休すか。そう思った時、張り上げる声によって我に帰る。


「はい、そうですかと渡してたまるか! ようやく見つけ出した身内なんだ!」

「ええ、そうです。お父様には式にて仲人を務めていただくのですから手渡すわけにはいきませんわ」

「拙いよ二人とも、あれガチでまずい奴だって!」


たった一人状況を察してる子がコアのヤバさを感じ取る。

だが、息子とその婚約者は自分のせいで苦労を強いられたにもかかわらず、こんな自分を助け出そうと勇気を振り絞っている。


昔の自分なら、それを無駄な努力と笑っただろうか?


「虫ケラがイキがるな。足が震えて居るぞ? お前ら人間なぞいつでもひねり潰せるのだ。アキラが人間にだけは手を出さないでくれと言うから出さないでやって居るのだぞ? それを勘違いして甚だ不愉快だ」


コアめ、余計な事を。


「父さん、本当なの?」

「そうよなぁ、アキラ!」


どうしてこんな答え辛い状況になってしまうのか。

どちらの手を取る?

人類の繁栄か、己の保身か。

どちらを選ぶなんて私には、俺にはできない!


「コア様、帰りましょう。子供を作るには私が必要でしょう?」

「そうだアキラ。お前がもし他のオスのところにいたと思うと気が気でなくて地上を殲滅してまわっていたと思う。愛しいメスよ」


そう言って上半身を食われた。ガブリと、たっぷり咀嚼されながら。


「貴様ーーー!!」


勢いよく躍り出る秋生達。

これくらいなんでもない。すぐに蘇生する事なのに、あまりにも残酷的な状況だったのか躍り出てしまった。

止めようにも再生が間に合わず声を出せずにいた。


「フン、夫婦の情事に水をさすものよ。お前はどこの誰だ?」

「父さんの息子だ!」

「何を言っておる? アキラはメスぞ?」

「父さんはもともと男、お前達風に言えばオスだ! オスとしていき、メスを選んで群れの長として我が家を支えてきた!」

「何を言っておるのだ、この虫ケラは。本当か、アキラ?」


よし、復元が間に合った。これで言い逃れできる。


「本当です、コア様。私は元来オスだったのです」

「じゃが今はメスであろう? 我との交尾にあれほど善がっていたではないか」

「それを子供達の前で言わないでください!」


羞恥から赤面する。

父親としての威厳をモンスターによって破壊された事を息子に知られたとあってはもう偉ぶることもできない。最初から偉ぶることなんてできていなかったが。


「本当なの、父さん? モンスターと、それもドラゴン族の王と契りを結んだって! いっぱい子供も産んだって事!? 人類の敵になったって事!?」

「敵だ、味方だのとスケールの小さな虫ケラよ。我に歯向かうものは全て敵だ。じゃがアキラは元人間じゃから、アキラが生きてる間は人間は生かしておいてやって居るだけのこと」


また腕が食べられる。子供達の前で興奮してるのか?

いつもより捕食速度が頻繁だ。

復元できるからってあんまりぱくつかないで欲しい。

ほらー、息子が震えてる。怒ってるというよりはグロテスクな映像を見せられてキレてる感じだな。


「冗談じゃない! そんな理由で見逃されてたなど人類を馬鹿にし過ぎて居る!」

「フン、ならば試練を与えよう。その試練を乗り越えられたなら考えてやらんでもない」

「試練?」

「今より地上に向けての進行を開始する。それを無事耐え切って見せよ。そして再び姿を表す時、地上に人類がいたら再び会話を交わす事を許そう。まぁ、無理な話だろうがな、行くぞ、アキラ」

「秋生、私のことは忘れて……せっかく生き残った命を大切にして……」


腕を引かれ、その先から食べられて。

結局それしか言い残せなかった。

前の家庭の息子と、今の家庭の息子達の全面戦争と聞いて頭がどうにかなりそうだった。


コアとのその日の交尾はいつもより激しかった。

きっとNTRの概念が彼女を激しくさせたのだろう。

バカな事をした、とつくづく思う。


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命から秋生達がダンジョンから逃げてきた先では……


「ウソ……全国的にダンジョン災害が起こってるそうよ!」


絶望的な話題で彩られていた。


「近隣では原宿での災害だったけど、これは師匠ともう一人の魔法少女によって水際で堰き止められたみたい」

「師匠が? それにもう一人?」

「手際の良さからしてちょうど遊びにきていた上位探索者ではないかと言われてるわね。捏造記事が多くて判断はできないわ」

「それにしてもあの口約束でこんなことになるなんて……大塚君のお父さんは本当にドラゴン族のクイーンだったのでしょうか?」

「分からない。でも本当は帰りたくなかった。そういう顔だったよ」

「ですがここまで事が大きくなってしまったら、組合もどう動くかわかりません」

「くそ、僕はあの時どうすれば良かったんだ!」


秋生のやり場のない怒りが、ようやく見つけた父を奪われた無念を払うようにテーブルに叩きつけられる。


「秋生……」

「大塚君」

「師匠なら、こんな時どうするだろう? 僕は……」

「一度師匠に協力を仰ってみましょうよ」

「でも僕たちのことなんて忘れたって」

「それは多分嘘だと思うわ。巻き込みたくなくて、記憶喪失のフリをして居るんじゃないかしら?」

「そうなの、優希?」

「分からないけど、やたらとこちらの連携に合わせてくれたと思うの。体が覚えてるとかじゃない、あれは私たちの動きの癖を知ってる動きだわ。次にどう動くか頭に入ってる。そんな動きだった」

「じゃあ、相談しても可能性はあると?」

「そこまでして大塚君のお父さんを取り戻し必要があれば、だけど」

「やってみよう!」


再び面を上げた秋生の瞳には、一切の迷いはなかった。

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